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スコップ無双 「スコップ波動砲!」( `・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д゜ ;;) .:∴ドゴォォ  作者: ZAP
第2章 草原の国のスコップ(フィオ&アリスすこ)
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第10話 フィオちゃんのしあわせスコップ

 月明かりの中、フィオをとりあえずベッドに腰掛けさせた。

 

「はうぅ……」

 

 暗い中でも輝く肩までの金髪。ぷるるんと揺れる胸の上にはまだスコップが乗る。歩いても座っても乗ったままのスコップ安定。アランは『いや取れよ』と言いたかったがフィオの鬼気迫る様子がそうさせてくれなかった。

 

「すみません……とつぜんこんな夜に……」

「失礼なのはあのスコップ姫の存在だ。気にするな」

 

 フィオはぽつぽつと事情を話し始める。

 

「あの後リティシアさんと二人で、たくさんお話しをしたんです」

「あれとフィオを二人きりにさせたのは俺の今世紀最大の過ちだ」

「それで、とあることに……今さら、気付かされまして」

 

 フィオがつんつんと指を突いてアランから視線をそむける。

 

「エルフの里を復興させるには……あの……エルフが必要です」

「まあ、そうだな」

「でもこの大陸には、エルフはわたししか生き残っていません」

「ふむ」

「だ……だからその……唯一のエルフのわたしが……その……っ」

 

 アランに振り向く。瞳は潤んでいる。意を決したように声を発する。

 

 

「『スコップ』しなければ、い、いけないんですっ」

 

 

 すこー。

 間の抜けたスコップ的なすきま風が吹いた。

 

「…………………」

 

 アランは頭を抱えたくなった。

 

 やはりフィオは脳がリティシアに汚染されてしまった。あるいは感染。もともと感染源はアランだが、王女を媒介にすることでパンデミックが起きつつある。世界平和のため早急な隔離が必要ではないか?

 

 が、今はリティシアよりもフィオのことだ。

 

「(里の復興に、協力するとは約束したからな……)」

 

 言動に気を取られはしたがフィオの決意はどうやら本物のようである。

 アランの助力が必要だというなら、助けてあげたかった。

 フィオは身内だ。

 それがなぜたわわスコップに繋がるのかは理解不能だったが。

 

「フィオ。おまえの言う『スコップ』とは、どういう行為だ?」

「えっ!?」

 

 とりあえず直球で確認してみた。

 リティシアのときと同じ意味とは思えない。リティシアは『スコップ』の意味を加速度的に増やしている(そのうち全単語をスコップに置き換えかねない)ので、具体的に何がどうなる行為か、都度、確認が必要なのだ。

 どんな行為なら《たわわスコップ》の発想に繋がるかは理解不能だが。

 

「ひゃうっ!? せせせ、せちゅめいがいるのですかっ!?」

 

 問いかけるとフィオはわかりやすくバタバタ慌てだした。

 それでも胸からスコップは落ちない。

 

「その……なんといいますか、生命の営みといいますかっ!」

「もっと具体的に」

 

 フィオはいっそうあわわわ(ぷるるん)と慌て揺れはじめる。

 

「り、リティシアさんは『スコップ』と言えば伝わると!」

「無茶言うな。あとリティシアは今後一切信用するな」

「はうううぅぅぅ……せ、説明……具体的に……っ!?」


 もじもじもじぷるんぷるんむにゅん。

 悩ましげにほっぺたに手を当て羞恥にまみれた様子のフィオ。

 やがて、おずおずと。

 

「その……こ、こ、こう、さわったりして……」

 

 フィオの白く美しい手がなまめかしく動いた。

 

「や、優しく……撫でて……その……さ……最後には……して……っ!」

「フィオ、声が小さくて聞こえない」

「だから……その……あ、あっ……あい……」

「あ?」

 

 フィオは少しためて、最後に一言。

 

「愛を! は、は、は、裸になって、カタチにするんですっ!」

 

 フィオが真っ赤に染まった泣き顔で叫んだ。ほとんどやけくそだった。

 

「愛を、裸になって、カタチにする……?」

「あああぁ……こ、これ以上はどうか……どうか、お許しを……っ」

 

 アランは困惑していた。いまいち抽象的だ。

 エルフ復興に必要なものは、愛を裸で形にすること。

 そこでアランはようやくピンときた。

 彼女の言う『スコップ』とはこの行為のことに示す

 

 

 

「(銅像制作――だな)」

 

 

 

 400年前に訪問したとき、エルフの里の中央広場には英雄の銅像が並んでいた。復興に向け、そういった芸術品は確かにいる。『生命の営み』を表現した芸術だし『優しく撫でる』のは粘土加工だし『裸』は裸婦像だ。愛は言うまでもない。

 すべての証拠が合致する。

 たわわスコップもフィオなりの芸術だろう。前衛芸術すぎるが。

 

「(いちおう、他の候補もあるにはあるが)」

 

 いわゆる夫婦の営みも必要だ。しかしフィオに限ってそれはない。フィオはアランの身内だし、自分のような齢1024才の爺を愛する対象に選ぶはずがない。彼女ならもっと若く健康な男を見つけられる。

 

 だからありえないとアランは結論づけた。結論づけてしまった。

 

「だが俺はそちらの専門家ではないぞ。俺でいいのか?」

「あの……え、えっと……」

 

 フィオは頬をピンク色に染めると下を向いた。

 胸を恥ずかしげに抑えて、じわりと涙をにじませながら。

 

「わたしは……あの……か、体が、リティシアさんと比べても、おかしくて」

 

 ぷるるるんと震える胸。たしかに大きさがおかしい。

 

「だから、あの……相手をしていただける方なんて……」

「いや待て。(芸術に)体は関係ないだろう。(芸術に)大事なのは心だ」

 

 フィオはぴくっと震えて、嬉しそうに笑って見せた。

 なおアランが肝心なところを省略したため誤解エルフまっしぐらだ。

 

「アランおじさんは、やっぱり、優しいんですね……」

「そうか?」

「強くて、優しくて……だ、だから……だから、フィオは……っ」

 

 すーはーと深呼吸して、アランをまっすぐに見つめる。

 

「アランおじさんに……す……っ!」

 

 全身を緊張に震わせながら、フィオはもう一度はっきり言った。

 

 

 

「『スコップ』してほしい、です……!」

 

 

 

 そこまで言われては、アランはもう頷くしかなかった。

 よって勘違いに気付くチャンスは未来永劫失われた。

 

「わかった。がんばってみよう」

 

 フィオが嬉しそうにうなずいた。その表情は羞恥に満ちていた。

 

「俺は専門家ではないが……一応知ってはいる」

「……あの、気になっていたのですが、こういうことに『専門家』がいるのですか?」

「それはもちろん。例えばパーサルナックも専門家だったぞ」

「最長老様が専門家だった!?」

 

 フィオが飛び上がらんばかりに驚いた。

 

「知らなかったのか? 彼の作品は1000を下るまい」

「1000人!? わ、私知りませんでした! そんな方だったんですか!?」

 

 フィオ内部のパーサルナックの評価がとんでもないことになった。

 

「では……そろそろはじめるか。最初は基礎の練習からだ」

「ひゃ、ひゃいっ! よよ、よろしくおねがいします!」

 

 そしてアランは作業をはじめた。

 彫像一体分ほどの粘土をスコップで集めた。上質な粘土の基本はこねることだ。スコップを差し入れて、最初はかき混ぜるように激しく、次第に優しく。ある程度やわらかくなった時点で、手による撹拌に切り替えていく。

 

「あ……あれ……?」

 

 フィオは顔を真赤にして、正面からその作業を見つめている。

 

「こ……これはその……れ、練習的なもの……なの、ですか?」

「ああ、本物(彫像)は準備が必要だ。何事もまず練習からだ」

「そ、そそそそうですよねっ」

 

 こねこねこねもみもみもみ。粘土をほぐしながらアランが答える。

 するとフィオはまた胸をぎゅっと腕で抑えてみせた。

 アランはさすーり、さすーりと粘土をさする。

 

「はうっ……こ、こ、こんなにも……優しく……っ?」

「フィオの言ったとおり、愛を持ってとりくむことが大事だ」

「愛……あうぅ……っ」

 

 もみもみもみみもみ。

 ぎゅっぎゅっ。もじもじ。

 粘土に手をいれるたびにフィオがなぜか悶える。

 ぷるん、ぷるん、ぷるるるるるんと大きなたわわが揺れる。そのうえ短いスカートで正面で体育座りをしているのだ。白いナニカまで見える。ぷっくり膨れる白いの。ぴっちり閉じた太ももはエルフなのにふくよかだ。

 視線に困りすぎる情景である。

 

「(だが――言えん。集中だ)」

 

 自分をおじさんと呼ぶ少女にそういう視線を向けたことを知られたくない。

 アランは必死で雑念を払い集中した。

 だから目の前のフィオの、少女にあるまじき様子にも気づかない。

 

「ひあううぅぅ……そ、そんなにやさしく……ふあぁっ!」

 

 もみもみもみもみ。たぷんたぷんたぷんたぷん。

 粘土をほぐすたびにフィオのフィオがゆっさゆっさと揺れる。

 それを、繰り返す。

 ただひたすらに、二人で作業を続けていく。


「………………」

「そんな、そんなに黙々と……ふぁあぁぁ……っ」


 耳をくすぐるような、幸せな声を発するエルフ少女フィオ。

 なおも揉み続けるアラン。もみゅもみゅもみゅもみゅ。

 スコップぺしぺし。フィオがびくんびくん。


「……」

「あ、あぅっ」

「……」

「ひあ……そんな、そんなに急に……はげしっ……」

「……」

「ああああぁぁぁぁ……っ」


 月明かりの下、粘土を手とスコップでほぐすアラン。

 顔全体を真っ赤に染めて、ドキドキ全開でぷるぷる胸のカタチを変えるエルフ少女。

 もしこの場に二人以外の人間がいたら、二人をこう評していただろう。

 

 

 

 ――なにやってんだこいつら。

 

 

 △▼△

 

 

 エルフ復興スコップの練習をはじめて二時間が過ぎた。

 

「……とまあ、これで一段落だな」

「はああぁぁ……っ」

 

 フィオがはぁはぁと息を大きくつく。アランが集中を解いて正面を見ると、フィオは汗だくだくだった。ほとんど服が透けている。胸のあたりまでが肌色とピンク色が見え始めている。アランは慌てた。

 

「ちょ……ふぃ、フィオ、大丈夫かっ!?」

「はううう……はい、だ、だいじょうぶ……ふぅ、ふぅ……」

 

 アランが駆け寄ると、フィオはとさりと、アランの肩に寄りかかった。

 よほど体力を消耗したようだ。

 それほどエルフの里復興に熱心だったのだろう。

 

「す……すみません……れ、練習の『スコップ』なのに……っ」

「いや、真剣なのはいいことだ。それで、感想はどうだ」

「はい……あの、あの……」

 

 ほうっと安心したようなため息をつく。

 アランの服の端っこを、きゅっといじらしく握る。

 

「アランおじさんの……あ、あ、愛を……感じました……っ!」

「………………………………そうか」

 

 あまりにも誤解を招く物言いだが(そして実際、誤解でもなんでもないのだが)アランはツッコまなかい。腕に触れる汗じっとりのエルフ少女(特に二つのたわわ)への妄念を振り払うのに精一杯だった。

 

「ん……ふあ……」

 

 トロンとフィオの目が泳いでいる。疲労で眠くなったようだ。

 

「大丈夫か? 疲れたならもう寝たらどうだ」

「は……ふぁいぃ……」

 

 フィオは目を細め、コテンとアランに寄りかかった。

 もはや歩く気力すらないようだ。

 動かすのもかわいそうなので、アランはその金髪を撫でてやる。

 

「あ……それ、きもちーです……」

「そうか。なら続けよう」

 

 そのままゆっくりと、子守唄のように撫で続ける。

 フィオはくすぐったそうな表情を浮かべると。

 

 

「ん……フィオは……しあわせスコップ……です……っ」

 

 

 くーくーと、子どもらしく安らかな寝息を立て始めたのだった。

 最後の言葉だけは気にかかるが……あと腕にあたるむにゅむにゅ胸も。

 

「(……待て、朝までこうするのか?)」

 

 ぷにゅんぷにゅんと寝息にあわせて圧迫してくるフィオのたわわ。

 アランの試練はその夜中ずっと、続くのだった。

 

 

 △▼△

 

 

 翌日。

 

「リティシア。フィオに妙なスコップを教えただろう」

「鉱夫さま、スコップは全人類の必須科目です。義務スコップ教育です」

「おまえの国の教育崩壊が心配だ……」

 

 リティシアとアラン、それにカチュアは紅茶で朝を迎えていた。

 話題はもちろん昨日のフィオのことである。

  

「それで、その……フィオちゃんは、いかがでしたか?」

 

 興味津々といった様子でリティシアが問いかけてきた。

 いつの間にかフィオのことはちゃん付けになったらしい。

 

「真剣だったな。愛を感じたとか言っていたが」

「愛を……っ!」

 

 リティシアは恥ずかしげにドレスの裾をギュっとつまんだ。

 

「少し……その、すみません……彼女をうらやましく思ってしまいます……」

「なぜに。リティシアが焚き付けたんだろう?」

 

 リティシアは寂しそうな笑顔を浮かべた。

 どこか遠くに思いを馳せているかのようだった。

 

「鉱夫さまは……一国の王女ごときが独占できる方ではありません」

「俺を買いかぶり過ぎだ」

「鉱夫さま」

 

 リティシアは真剣な顔つきになると。

 

「あなたがどれほど偉大か、この森を見れば、誰でもわかってしまうのです」

 

 ここはエルフ城の最上階だ。外が見えた。広大なエルフの森を囲む堀。地平線の果てまで続くアダマンティンの壁。そしてリティシア達が今いる、世界樹の城そのもの。すべてアランがわずか一日で建築したものだ。

 たった一人で大地を裂き、天を穿つ世界樹の城を建ててしまう。

 常人にとってその行為は神業としか言いようがない。

 

「鉱夫さま。あなたは伝説に……いいえ、神話となられる方です」

  

 リティシアは確信を持って、誇らしげにそう語った。

 が、その表情にはどこか寂しさも見え隠れしている。

 大事なものが遠くに言ってしまうと、わかっているような、そんな顔。

 

「だから……わたしごときは、ただおそばにいるだけで……きゃっ!?」

 

 アランはリティシアの金髪をわしゃわしゃと撫でた。

 寂しそうなリティシアは、見るに堪えない。

 スコップスコップ言っている方が、よほどましだ。

 

「俺はリティシアの護衛だ。神のように崇める必要などない、ただの人間だ」

 

 リティシアはしばらくじっと、アランの顔を見た。

 ぽろぽろと涙をこぼしはじめる。やがて、コクリとうなずくと。

 

 

「……リティシアは……スコップしあわせです……」

 

 

 昨晩のフィオと同じようなことをつぶやいたのだった。

 

 

「でも崇めはします。教団の御神体は黄金のスコップ像に決めました」

「決めるなやめろ」

「それとカチュアはスコップ神殿騎士団長に任命します。大出世です」

「辞退させてください……」

「だめです」

 

 にっこり笑顔のリティシア。アランとカチュアは二人でため息をついた。

 

「……もういい。カチュア、旅立ちの準備は?」

「完璧だ。いよいよだな」

 

 カチュアがぐっと拳を握る。気合を入れているようだ。

 昨日フィオに聞いたところによれば、リフテンの古城はアンデッドの巣窟と化しているのだそうだ。常に黄色の怪しいオーラで城が包まれ、スケルトンやゴーストがたむろしている。おそらく内部はダンジョンになっている。

 ダンジョン。

 それはすなわち――鉱夫の真骨頂だ。

 

「カチュア、ダンジョンでもっとも重要なことはなんだ?」

「む。もちろん恐れを知らず勇敢に戦うことだ」

「違う」

「え」

「ダンジョン攻略の最大のポイント、それは――」

 

 アランはスコップを握りしめる。これまでになく引き締まった声と表情。

 ドウっと青いオーラがアランの背後から吹き出る。気合の現れだった。

 アランはおごそかに言う。

 

 

 

「安全第一だ」

 

 

 

 大陸史上もっとも安全なダンジョン攻略が、はじまろうとしていた。

フィオちゃんのしあわせスコップ(2時間フル)を体験したい方は、ブックマークして↓スクロールの評価を入れ感想欄に「しあわせスコップ」と……お待ちくださいスコップ閻魔、さすがのぼくも4話連続のポイント懇願は猛省しまして、せめてあとがき芸で読者様を楽しませようとしたのです。なんならあとがき考えてる時間が本編より長いまである。だから情状酌量の(このへんで首をはねられた)

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[良い点] スコップ [気になる点] スコップ [一言] これほどスコップな作品は見たことがない。 ところでシャベルの登場はいつだろうか。
[良い点] しあわせスコップゥッ!
[良い点] しあわせスコップ [気になる点] しあわせスコップ [一言] しあわせスコップ
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