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「魔王……ねぇ……」
夜見は道端にある小さな小石を蹴飛ばした。
少し悪態悪く丸太に腰掛けた。
「美命、なんでそんなに詳しいの。一般常識みたいに言われても私にはピント来ない。もう少し噛み砕いて話して!」
ジト目の美命は大きめのため息を落としうんざりした様子でデブの方を掴んで思いっきり揺らした。
「肉ばっか食ってないであなたも教えて差しあげなさいよ!!!」
面倒くさそうにデブはそっとタンドリーチキンを火にくべて話し始める。
「えーと、さっき美命が話してた称号? みたいなのがあるのは理解してくれた? まあ、そのなんて言うか、強さランキングみたいなものだ。強ければ強いほど良き名を貰えるみたいな感じ??」
「なによ、そのふわっとした紹介は!!」
自身のこめかみを強く押し美命は再度ため息を落とすのだった。
「ふーん、強ければねぇ〜私ってどれくらいの名を冠しているんでしょうね……」
「そんなの知らないわよ。先生にでも聞いてみたらいいんじゃないのかしら? その辺の指標は私たちには測り兼ねるから。まぁ? あなたなら足軽くらいじゃない? 知らんけど」
「まぁ俺達もその辺の目標となる強さを知らないんだよ。どれだけ鍛えても俺らより強い鬼はわんさかいる。例えば2つ名持ちでも死ぬことはある。どれだけ鍛えたとて死ぬ時はいつも一緒さ」
青筋を立てた美命はデブの頭にキツい一髪をお見舞した。悶絶するデブをよそ見に火にくべてあったタンドリーチキンを分捕り豪快に食らいついた。
「あぁ……俺の肉がぁーーー」
「あれ、食べ物の恨みは怖いんでしたっけ? まぁ、今度何か作って差し上げますから、今日は勘弁なさい」
「ちっ、今回だけだぞ」
「そっかぁ……おじいちゃんはかなり強かったのね。魔王なんて、翁行な名前貰っちゃって……」
(殺したのはお前だ……)
チクリと胸に刺さる小針が心臓を締め付ける。
(…………)
「どうしたの? 夜見らしくない変な顔して。なんか変なものでも食べたの?」
ゆっくりと首をふる。「いいえ、そんなんじゃない」そう返すのが精一杯な程に胸を締め付けられていた。
「とは言ったものの明日どうすんのよ。鬼の首なんてその辺に沢山落ちてるって言うのに。なにを持ってこいよ。これでも持っていく? 」
掲げられたへしゃげた鬼の顔はカビ始めており生臭い匂いがした。
「ウジの這ってる首なんか持ってても意味ないと思うんだよねぇ……」
デフがまともな意見を言っているように聞こえるが、その言葉を聞くものは誰一人としていなかった。




