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…ごめんなさい〜
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小一時間程たっただろうか……。
日はすっかり上に上がり、木は短めの影を蓄えていた。
教室や廊下に人はおらずただ風の音だけが聞こえて来る。
目が覚めた美命は目を擦る。
夜見の姿を視界に入れてガラガラと椅子を押して立った。
「ブタ、それから夜見起きなさい。もう、そろそろ行かなくちゃ」
その声を聞いた2人は口から息を吐き目をゆっくりと開ける。
デブはハンマーを、夜見は刀を握りしめそれを杖にして立った。
夜見の体からはすこし血が垂れているが、どうやら傷口は完全に塞がったようだ。
「やれるわね?」
「もちろんです」
「あぁ、やれる……」
デブと夜見は険しそうな顔で笑って見せるのだ。
外を見れば既に夕暮れ、鬼達が一番活動しやすく、人を殺している時間帯だ。
外からはいくつかの悲鳴が耳に届く。
「やってるわね」
夜見が吠える。
そっと、美命は短剣を舌舐めずりをした。
デブはカバンに入っている干し肉をムシャムシャしながら教室の扉を開けようとしている。
「遅いぞ、晩飯にはすこし早いけど新鮮なお肉は待ってくれない」
「クソデブお前はどこまで太りたいんだ」
夜見の罵倒が飛ぶがそんなものあの男にはもう効かない。くくくっと笑って見せた。
その顔は、些か男になっていた。
◇
「夜見!! やれ!」
外に出て一時間が経過した。
山頂付近は空気が薄い。
おまけに視界もかなり悪い。
そんな不利な条件で彼ら三人は迫りくる鬼達の首を狩り続けている。
地べたに落ちている首は合計で二十八。
寝そべっている鬼の体は二十一……。
先生から出されたお題はとうの昔にクリアしている。
だが、三人共そんなことは知っている。知ってはいるのだ。
だが、この状況ではそれは死を意味するのだろう。
視界を埋め尽くすほどの鬼の大群。
数にしておおよそ五十はくだらないだろう。
そんなものを眼下におさめて仕舞えば、逃げると言う選択肢はほぼ死と同意義と化す。たとえ、熟練の戦士だとしても逃げながら強敵を殺すのは自殺行為だ。
夜見はそれをよく知っている。
あの旅で培ってきた心に刻まれたあの悪夢のような毎日が、夜見に問いかける。
『逃げるな、殺せ』と。
そして、その愉悦が夜見の血を一層煮えたぎらせる。
動脈が激しくみみずが生えずり回るように収縮、肥大を繰り返す。
刃の一撃は過去のものとは比較できないほどに洗練され、破壊力を極端に増大させている。
そんな、斬撃を受けても尚立てる鬼は数少ない。
「夜見、もう休め!! 一度下がって体勢を整えるのが先決だ。こんな状態で戦ってもいずれ消耗しきって死ぬだけだ」
「わかってる、わかってるけど……この手が、体が、脳が。あいつらを殺せって言うことを聞かない。まるで体だけ何者かに操られているかのようで、『心が躍る』様でとても楽しくて仕方ないんだよ」
ケラケラと夜見は笑う。女の子らしからぬ立ち居振る舞いに美命もたじろぐ。
「デブあのバカを止めるやつ何かないの?」
「あったらやってる。でも、あれは単なる暴走なのかな。夜見から出ているあの赤い霧みたいなのは一体……なんだというんだい」
なんか、書けなくなってやばいですね!




