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長らくお待たせいたしました!!
ふぅ、
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スナイパーライフルを助手席側には置く。
荷台には二人の子供がぐったりとしている。
ため息をひとつ付き、頭を抱えた。
「どこで何をしたら増えるんだよ。カレンに何言われるか分かんねーよ」
悪態をつきアクセルを踏んだ。
帰り道、道中出てくる鬼たちの頭をかち割りながら車を走らせる事十五時間。
やっとの思いで帰路につくことができた。
季節外れの朝顔が咲く。青々とした植物たちが顔を覗かせ、元気に手を振っていた。
百合の花は花が重いのか枝垂れていた。
水をあげる彼女の横顔は優しげに微笑んでいた。
クラクションを二度鳴らせば、彼女は俺に向かって手を振ってくれた。その顔は誰しもが見ても満面の笑みに見えるだろうが、俺には少し悲しげでいたたまれない気持ちにも読み取れた。
車から降りて、カレンを抱きしめた。
「あなた……おかえりなさい」
「あぁ……ただいま。愛してるよ」
「私もよ。ねぇ、あなた長い旅路でしたね。ご飯はしっかりと食べていましたか? お風呂は毎日入っていましたか? 私のこと忘れたりしませんでしたか?」
まくしたてるようにカレンは俺に質問を投げかけてきた。まるで、お菓子を買ってと騒ぐ愛らしい子供のような姿だった。
ここを離れて俺は夜見の監視をしていた。もちろん、死なせたくないからだ。
何度も死線を乗り越えあの子は強くなったと確信している。だけど……。
軽トラの荷台で伸びているあの子を見ると胸がとても痛む。
カレンは俺の顔を見て優しく微笑んでくれた。それが何よりの救いでもあり、罪でもあるのだろう。自身への戒め、愛している人を置いてきぼりにし人類の栄光のために一肌脱いだ感想はそんなものかもしれない。
「あなた? どうしたの。私の顔に何かついてる?」
「カレン……ごめんな」
抱きしめる手に力を入れた。
離したくない愛しい人。わずか時間だったとしてもこの人とは離れたくないのだと俺はこの旅を通して知ることができただろう。
「あ、あなた……少し苦しいわ。それにあの子達をどうにかしなきゃね」
荷台に目を向けやれやれと肩を落とすカレンは何だか現実に打ちしひしがれたサラリーマンみたいな顔をしていた。
二人を家へと運び、ふかふかの布団に寝かせた。
二人とも可愛らしい吐息……ではなくとてつもなく大きないびきをかいていた。それほど疲れていたのだろう。どこにも安心しん出来る場所など何処にもなく、唯ひたすらに己との戦い……。
あれ程の戦闘を幾度となく繰り広げれば誰でもこうなってしまうのだろう。
がっくりと肩を落とした師匠……もとい、鶴巻 章弘はお気に入りの紫色のソファーに思いっきりもたれ掛かった。
「あなた……お疲れ様でした」
「怒らないのか?」
「……すこし、思うところは、あります……。でも、そんなこと言ってしまったらあの子の思いを踏み潰すことにもなってしまうでしょう……それでは味気ない……」
カレンは続けた……。
「それに見て、あの子始めてここに来た時は怯えた子犬みたいに震えてたのに今では……鬼そのものと言っても変わりはないわ。それほどの経験を彼女は積み重ねてきたのよ……それを否定し拒絶するのはいい年の大人がやる事じゃないわ」
カレンはココアを飲み、ベットを見て優しく微笑んだ。
彼女の横顔を見て俺は何故かどっと疲れた気がした。多分俺も安心出来なかったのだろう……。ここに来てやっと心から落ち着けるのだろうか?
そんなことは分かりゃしないが、気分は幾分か楽にはなる……。
「おかわりいる?」
「あぁ、とびっきり甘いやつをね」
「ふふっ、糖尿病になるわよ」
「そんな君こそ……いや、これは無粋だね」
照れ臭そうに俺が笑うとカレンは頬を膨らませ少し怒った声で。
「それは言わない約束……でしょ!!」
鼻歌を奏で、カレンはキッチンへとスキップしながら戻っていくのであった。
◇
その夜……。
軋むベットには男と女の姿が……。さぞかし盛り上がったのだろうか?!
次の投稿は……未定です




