時はたち……。
夜のそよ風が頬を撫で、髪をふらりとなびかせる。
桜の葉がひらりと舞い、木の床に落ち感慨にふける。
そして見慣れた天井の木目を一つ二つと数え自身が今ここにいることを実感した。
「……はぁ」
小さくため息をつき、自分の不甲斐なさを嘆く。
もう少し出来たかもしれない。まだ動けたかもしれない……そう思えば思うほどため息が落ちる。
「おじいさま私のこと嫌いにならないかな?」
幼心にそう思ってしまう。
私は小さい頃からおじいさまに育てられ、いつも期待に添えるように頑張ってきた。
その期待を裏切ってしまうんじゃないか、見捨てられてしまうんじゃないか、私の前からいなくなってしまうんじゃないかと……。
私の前から居なくなってしまった両親を重ねてしまう。
大した思い出などないのにもかかわらず。
目を瞑ると今でも薄っすらと覚えているあの光景。
「痛い……」
やはりダメだ。思い出そうとすると頭が痛くなる……けれど━━。
「昔か……」
思い出すほど生きてはいないけれど、それでも語るなら辛いことだったのだろうか。頭が拒否するように思考を止める。
「私に昔何があったのだろう」
思い出したくもない過去をおじいさまに聞くのも……いや、止めたほうがいいかな?
今日はもう寝ようかな? 辛いことを掘り返してもいいことなんて今までひとつもありはしなかったのだから。
◇
目を覚ますといつもの天井、部屋、匂い。何もかもがいつも通り、けれど何かが足りないと感じてしまう日常。
まるで私の横にいつもいてくれた存在がいないと言う虚無感。
頬に流れる涙がそれを体現する。
「ダメだな……しっかりしなくちゃ」
体の痛みはもうない、どうやら筋肉痛はどうやら治ったようだ。
我ながら自身の体は強いのだなと感じる。これも鬼の心臓を食べたせいなのかな?
布団からゆっくり起き上がり、横に用意されている服を着る。
太陽の匂いがするさっぱりとした衣服。
毎日おじいさまが洗って干して私の横に置いていてくれる。
たったこんだけの事なのに幸せを感じる。
ーーークスリ。
小さく微笑む私はどこか寂しげな笑みを浮かべる。
「夜見、起きたか?」
「あ、はい! おじいさま」
笑顔で、いつもと変わらず孫を眺める優しげなおじいさま。
私はおじいさまの笑顔が一番好きだった…………。
素早く朝ごはんを食べ終え、砂利が引いてある外へと出た。修行のためだ。
「夜見、本当に体の具合はいいのか? 嘘、付いていないか?」
「はい、おじいさま。いつも何ら変わりありませんと先程も言いましたよ」
おじいさまはふむ、と一言うなずき、昨日の続きを教えてくださるのだった。
次第に日が完全に上り、森からは山鳥たちが可愛らしい歌を披露する。さながら森のオーケストラと言った所だろう。
「ふぅ……一息いれるか」
おじいさまは古びた木刀を壁に立てかけ、ヘトヘトにへばった私にタオルを投げかけるのだった。
そのタオル私の顔に掛かる。
冷たくひんやりとしたタオルがとても気持ちがいい。
「まだ昼ごはんまでには時間があるから少しそこで寝ていなさい」
「ごめんなさい、おじいさま」
「遠慮することはない」
私はおじいさまはか許可を得て、暫しの間、ゴロゴロとしたこいしの並んだ地べたで寝ることにした。
「夜見、起きたか?」
暫くするとおじさまが私を呼びにきた。
「はい、起きました」
「昼ごはんの用意ができた。少し早いがご飯としよう」
ゴツゴツとした砂利が肌に食い込み赤く肌を変色させる。ピリリと小さな痛みを肌に走らせ脳を刺激する。
ふぅ……小さく息を吐き木刀を支えにしてその場から立ち上がる。
足に付いている小さな砂利や石を手で払いながら井戸へと向かいいつもと同じように水浴びをしお寺の中へ。
時は経ち、かれこれ一年がたった頃、夜見の修行に少しばかりの光が差してきた。
「夜見、誕生日おめでとう」
「ありがとうございます、お祖父様。こんなダメな弟子を持たせてしまいごめんなさい。けれどこれからも頑張って付いて行きます」
「ふむ、その勢いじゃぞ」
今日で私は九歳となった。
人生からしたら九年など短いかもしれない。けれど私にとってはかけがえのない九年なのだから……。
それに私はまだまだ子供だと思う。
こんなことを言っていたらまたお祖父様に叱られてしまうかもしれません。
それにしてもここ一年で私はとても大きくなりました。身長はなんと百四十センチになり自身の成長が嬉しく思います!!
この調子でお祖父様の背丈を抜かします!!
とこの前お祖父様に言ったところ、頭を思いっきり撫で回され背が縮むかと思いました。
そんなこんなで又一つ歳をとった私は午後から修行の開始です。
先週辺りから午前中は英語などの外国語や呪語と言われる呪い言葉のお勉強をしています。
外国語では英語を初めとするフランス語、中国語、ロシア語、イタリア語の五カ国の勉強。
そして呪語と呼ばれる呪い言葉、例えばそうですね、【死】この言葉があります。この一言でも呪語となり、人をも殺す力があります。
簡単に言ってしまうとこんな感じですかね? より深くやろうとすると三十三単語の呪語と十二の印と言うものがあります。これは後日紹介いたします!!
私とお祖父様はご飯を食べ終えたので、瞬光の練習とそれに追随する型の練習をしなければならない。俗に言う、秘術と言われる物です。
技の型は計五つ。
技の正式名称は教えてもらってはいない。理解できないからだそうだ。
そう言われると少し不甲斐ないとは思うけれど、仕方がない。
なんかよく分からないのだけれど、剣を振ったり、消したり、剣を地面に当てそのまま相手に当てるとかそんなのばかりで正直何をしているのか分からない?
それでもお祖父様の顔は真剣そのもの。怖いです。
誤字とかあるかな?
ありましたら言ってくださると嬉しいです!!