04新たなる力を求めて。
はい、更新です。戦闘シーンなんかは当分先ですかね〜。
これから夜見ちゃんはたくさん修行して強くなってからいろいろなところに行ってもらいますので、そこで戦ってもらいます。ですのでそう言うのが好みの人は、しばしのお待ちを……。
04
外では鳥たちが鳴き、朝の爽やかな風とともに空気がふんわりと流れる。
太陽は少しだけ上がり影を伸ばす。
聞き慣れた砂利を踏む音が心地く、一歩一歩踏むたびに少しづつ音が変わるのを楽しみ、ベランダにかけてある自身の木刀を掴み、握り心地なんかを確かめる。
「うん、前のとは少し違うけどこれはこれで……」
以前壊してしまった木刀から新しくしたから少しだけ握りが違うような気がした。
「夜見、準備は出来たか?」
「はい、おじいさま」
「それでは今日からやっていく事を教えて行く。まずはこれを見ていろ」
おじいさまはそこから軽く百メートルほど走り、池の近くまで行った。
「おーい! 聞こえるか?」
「はーい! おじいさま」
私が返事をしたのを確認すると、おじいさまは剣を構え、一歩踏み出した。
と、同時におじいさまが消えた。
咄嗟のことで反応できずにいる。
「え? あ、あれ?」
と、同時に、おじいさまは私の肩を掴んでいた。
「久し振りにやったか少し鈍っているようだ。どうだ夜見分かったか?」
「え? なにが?」
おじいさまは得意げに木刀を肩に担ぐとニヤリと笑った。
「これが坂巻家の秘伝の術じゃ」
おじいさまは得意げにそういうのだ。
するとまたおじいさまが視界が消え前に現れる。
私はびっくりしてしまい、尻餅をついてしまった。
ジャリジャリとした丸石たちが私のお尻にダメージを与える。
地味に痛い……。
「何をしたの? おじいさま」
「これが我らが秘伝の技【瞬光】と言うものだ。夜見お前にはまずこれを習得してもらう」
先ほどとは打って変わっておじいさまの顔は堀が深くなる。
なぜか知らないけど、先程から風が騒がしい。
松の木が揺れ、砂埃が上がる。
ごくり
すごい、これが出来たら褒めてもらえるかも?
「や、やります。やってみせます」
おじいさまはゆっくりと首を上下に振り微笑んだ。
私はただ負けたくないだけなのに。
おじいさまに認められたくて……一生懸命にやってきた。
ここでやらないと言ってしまえば、負けたことになる。それだけは絶対に嫌だ。
(目の色が変わった、か……夜見よ。お前は若き頃の私に似ている。負けじと食らいつき、がむしゃらに頑張っている姿に心動かされそうじゃ)
おじいさまは心の中でそう感じ、ニヤリと口角を上げ微笑んでいるのであった。
「それでは夜見、早速教えて行く」
「はい、おじいさま」
そこからおじいさまと私のマンツーマンでの指導が始まる。
「一歩踏み出すとともに、こう考えるのじゃ。あそこに行きたい、飛びたい、ってな」
「はあ、それで?」
「む! 信じておらんな。はぁ、これを連続でやるとこうなる」
おじいさまはため息をつき、剣に手をかける。と同時におじいさまは消えた。いや、気配は感じるのだ。
私が気配を感じその方角を見る直前に消え、私の死角に立つ。
それを連続で行なっているのだ。
普通ならば人間のできる技ではない。
気配を消し、一瞬のうちに消え死角に回り込むなんて事は不可能……。
確かにこれなら強いかもしれない。だけれど、これをいざやれとなると流石に無理が生じる。
「夜見、分かったか? これが瞬光だ。確かにこれを会得するにはかなりの時間を有する。が、これを覚えなくてはこれから先の技などを習得出来ない。大丈夫だ。わしが付いている。きっと出来るようになるから」
「は、はい、おじいさま。私きっとやってみせます」
ウンウンと頷きおじいさまは先ほどの続きを教えて下さった。
時が経ち、昼飯どき。
「さて、夜見よ。そろそろ昼ごはんの時間だ。私は先に戻っている。水浴びでもしてきなさい。手もしっかりと洗ってくるように」
「は、はい……お、おじいさま……」
私は余りの過酷さに休憩と言われた瞬間、全身から力が抜け立膝をついてしまった。
「ゲホッ、カハ……ゼェゼェ」
息きが整わず、むせ返してしまう。
「……ん……」
おじいさまはその姿を横目でチラリと見て、そのままお寺へと入って行った。
数分が経ち、やっとの思いで立てたが生まれたての子鹿のように足がぐらつき、思うように足が進められない。
これが、本当の修行だと言うのか。
つ、辛い…………。
でも、諦めたくない。
でも、取り敢えず水浴びだけして、かいた汗だけはどうにかしなくて……。
毎日続けてきた日課だけはしなくてはならない。
そう決めたから。
たわいもない事だけど、決めた事は最後までやる。そう決めたから。
「いてて、全身の筋肉が悲鳴をあげてるよ。歩くのが辛いよ」
愚痴をこぼしながら、ゆっくりとではあるが、桶を井戸の底に落とし水をすくい上げる。
筋肉が収縮する度に激痛が走り、歯をくいしばる。
やっとの思いで持ち上げた冷水をザバッ〜と頭から水をかぶる。
汗で濡れた体に冷たい水がかかり一気に体温を下げる。
一連の動きを終え、手を洗いお寺の中へと入って行く。
「水浴びしてきました」
「よろしい。手は洗ったか?」
「はい、もちろんです」
「うむ、それでは」
いつのまにか用意されていた料理を眺めるとおじいさまが私を手招きして来たので横に座る。そして、手を合わせる。
「頂きます」
「いただきます」
そう、二人で美味しくご飯を食べるのであった。
えーと、今日の昼ごはんは、雑穀ご飯に白身魚のムニエル、大根の煮物、目玉焼き、ほうれん草のおひたし、レンコンのきんぴらと至って普通のメニューだった。
ゆっくりとご飯を食べ、再び外へと出る。
修行の続きだ。
と意気込むのは簡単だ……だけれど体から言うことを聞いてくれない。
「夜見、疲れたか?」
「い、いえ……」
「その調子だと立つのも一苦労しているようだな……午後の修行は取り止めておくか?」
「すみません……」
私は体の方を選んでしまった。
確かに体は悲鳴をあげている、そしておじいさまの甘い言葉に誘われてしまったのも事実。
駄目だなと思ってはいるのだけれど、今日はもう、無理……。
また明日、頑張ろう。
そして一日でも早く瞬光を会得しなくちゃ……。
その為には今日は大人しくしてよう……。