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オスィゴトで投稿遅れ、すまない……
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数十分も運転をすれば見たことの無い世界が眼に映る。
知らない家、人々、道、様々なものが目に飛び込んでくる。刺激的と言わずなんというか!
開いた口が閉じることなく夜見は知らない街を堪能して居た。
「夜見ちゃんこの街に来るのは初めてかしら?
私たちが住んでいるところは少し田舎で大きなショッピングモールがないのよ。だから、こういう所まで来て服を買うの。きっと夜見ちゃんに似合う服があると思うわ」
美穂お姉ちゃんは自慢げにそういうとサングラスをクイっと持ち上げる。
ルームミラー越しに美穂お姉ちゃんの顔がチラリと見える。
そんな美穂お姉ちゃんの姿に夏帆お姉ちゃんはやれやれと頭を抱えていた。
「もう、全く……」
◇
閑散な住宅街や大きめのビルが目に映る中夜見はお姉さん方と色々な事を話した。
好きな食べ物、嫌いなもの。今期のアニメなんて言うのも聞いた。アニメと聞いてピンと来るものはないが美穂お姉ちゃんは語りが熱かったのが印象的だ。
それから十五分程車を進めると見たこともないような大きな建物が見えてきた。
「着いたわね。夜見ちゃんあれはね巨大ショッピングモール『アリー』よ。ここには何でも揃ってるのよ。店舗数約二百五十。映画館、食事エリア、カラオケ、ボーリングなどなどあらゆる娯楽設備も完備。まさに若者の溜まり場よ。モールサイコー」
「美穂、語彙力が欠損してるわよ」
「ゴホン……それはどうでもいいの。それだけ凄いって事をわかってもらえるかな〜と思った次第よ!べ、別にね〜語彙力なんて言われても……」
美穂お姉ちゃんは頬をポリポリかいていた。
私と夏帆お姉ちゃんがジト目で美穂お姉ちゃんを見つめると視線を若干そらし、小さく舌を出し誤魔化すように笑った。
店内へと足を運ぶと、そこに広がっていたのは……。
「……なに、これ…………」
そこに並ぶのは見たこともないような煌びやかな装飾、見渡す限りの人々、綺麗な服、嗅いだことのないようないい匂い、まさに夜見にとって夢の国のような存在だった。
「驚いてる驚いてる! 夜見ちゃんこう言うところに来るのは初めてでしょ〜顔がぶは〜ってなってるわよ! 驚くのはまだ早いわよ」
「美穂、貴方が作ったんじゃないんだからそんなに騒がないの。それに、他のお客さんに迷惑がかかるわよ? まぁ、夜見ちゃんは仕方ないとは思うけど、いつまでも口を開けたまま静止するのは良くないわよ」
「………………う、ん」
夏帆が言った言葉を右から左に流し夜見は惚けていた。
「はぁ、全く仕方ないんだから! ほーら、いつまでそうしてないで行くよ」
夜見は手を引かれながら辺りを見渡すのだった。
エレベーターに乗り三階へ……。
エレベーターに乗る際も夜見の興奮は収まることなく。
「な、何だと、床が動いていやがる!!」
「美穂のが移った」
「かたじけない……? って夏帆酷い〜」
子供服専用の売り場についた夜見達一行は、ベテランの狙撃兵が如く偵察をする。
「夜見ちゃんあれを見ろ」
「えぇ〜〜〜〜!!!」
ペシッ
「美穂、変なこと教えないの」
「イタッ! むぅ〜だってだって! 夜見ちゃん覚えが早いしそれに面白いもん。いじりたくなるのも仕方ないよ〜」
「だってじゃないの。子供じゃないんだから」
「ちぇっ、夏帆のケチ」
その言葉に夏帆は目を細めた。
「ほほぅ〜ケチと申すか。よろしいならば戦争だ」
「その喧嘩、買ってやる」
突如始まったキャッツファイト夜見は呆然とするだけだった。
何これ?
喧嘩は数分も続き、周囲の目も気になりだした頃、突如サイレンが鳴りだした。
「なに? これ。何かあったの?」
美穂と夏帆は顔を青白くさせ、辺りにいた人々も逃げ惑うように騒ぎ出す。
「ピンポンパンポン! 緊急放送です。三キロ圏内に鬼が多数出現との情報がありました。皆様は速やかに地下のシェルターまで御避難下さい。大変申し訳ありませんが避難の方お急ぎ下さいませ」
悲鳴と、怒鳴り声。館内放送が流れるがそれに耳を貸すものは誰一人としていない。
ただ一人夜見を除いて……。
「夜見ちゃん……よく聞いて。あのね、この近くに鬼が出たの。だから、ショッピングモールの地下にあるシェルターに逃げなきゃいけないの。分かる?」
まだ年端もいかぬ夜見ちゃんを死なせるわけにはいかない。これからだって言う時にこんな事になるなんて……こんな所に連れて来るべきじゃなかったんだ。
夏帆は強く思う。
喧騒がひどく鳴りつつある現状に夜見は全くついていけない……それどころか落ち着いても見える。何故か? 鬼は殺さねばならない。
護身用にと持って来ておいたあの刀の柄を掴む。
「夜見ちゃんダメ! 鬼とは戦ってはダメ。鬼はとっても恐ろしくて怖いものなの。鬼殺達が来るまで……って、どこに行くの!!!」
夏帆は後ろ髪を引かれる思いで夜見の手をつかもうとするが、人混みに紛れ夜見の姿は見えなくなってしまった。
悲壮感を秘めた夏帆の声は夜見に届くことなく。美穂は夏帆の手を引き急いで走ろうとするが、夏帆の体は動かなかった。
「夏帆! 何してるの。貴方も死にたいの?」
「でもでも……夜見ちゃんが」
「あの子は鬼を殺した事があるんでしょ。それに銭湯で言っていたじゃない」
泣く夏帆を美穂は引きずるようにその場を後にした。
数分もすればモールには人っ子一人いない。
逃げ慣れているのだろうか? 人は戦うことを諦め逃げ惑うことしかできないのだろうか?
夏帆は胸に強くその思いを抱いていた。
◇
すっかり静かになったホールを夜見は警戒しながら歩く。
十五分ほど経った頃、下の階から何かが壊れる音がした。
小さな叫び声が夜見の耳に届いた。
「ま、まさか……」
手すりを滑るように降りた。
三階から一階へと降りるのに僅か二十秒も掛からず降りる事が出来だ。
夜見は辺りを見渡した。
いくつかの人の死体。
壊れた照明器具。
薙ぎ倒されたマネキン。
抉れた地面。
かすかに匂う血の香り。
外はあんなにも明るいのに店内は真っ暗だった。外からの木漏れ日だけが夜見の目を支えてくれている。僅かな光では不意打ちされる危険性が高まる。注意しなければ……。
「んっ!」
ひたひたと歩く音が聞こえた。それも、かなり近くで。
後ろか……!
逃げるようにその場を離れた。
夜見が離れた瞬間、岩が砕け飛び散る。
音が……しない。
影に紛れ、気配を完全にけすか……。
厄介だな。こんな鬼始めてだ。
足音は聞こえる、これを頼りに戦うのはかなり不利だ。が、やる他ないか!!
柄に手をかける。心を落ち着かせ音だけに集中する。
あの時のことを思い出せ……。
◇
「夜見、今日から新しい修行を始めたいと思う。いいか?」
「はい、お爺様」
お爺様が死んでしまう三年前の出来事だ……。




