21餓鬼!
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21
すっかり消えた瘴気に包まれた枯れ枝の多い森に長いする訳にもいかず、足早にその場を去る。
多少後ろ髪を引かれる思いで歩く夜見は、改めてこの剣の恐ろしさと強さの意味を知った。
「呪いがこの剣の力と……」
力無く呟く声は誰に届くでもなくその場に残留する。
枯れ果ててしまった草を踏むとパリパリとまるで液体窒素にでも浸かったようだった。木を軽く押せば、まるで麩菓子の様に倒れ、ポロポロと崩れて落ちる。
凄い……と口にする事は何故だか阻まれる。
心がそう感じてはいけないと感じたからだろう。
老婆心ながらも横目で夜見を見る師匠は遣る瀬無さを覚える。
◇
森を抜けた一行は昨日激戦があった町へと降りる。
そこは地獄を通り越し魔界を想像させる。
人の自体にはハエが集り家々は跡形もない。賑わっていたであろう商店街には餓鬼が死体を漁る。
私の姿を見ると、物陰に隠れ様子を伺う。師匠はマシンガンを手に取ると乱射し餓鬼共を殺す。
「あいつらを見逃すとその内でかくなり人を殺し始める。見つけたら殺せ。
師匠はチベットギツネの様な目をし先程まで生きていた餓鬼共を見つめ唾を吐き捨てる。
夜見もつられて唾を吐く、まだうまく吐けないのか、痰を絡ませ慣れない口さばきで唾を吐く。
吐かれた唾は小さな血溜まりと共に消えた。商店街を進みネチョリと泥っぽい血のついた土を踏みしめ生存者がいないかどうかを見ていた夜見たちのものに一人の少女が現れた。
怯えきったその顔は血がかかりかわいいクマさんが描かれていたであろう黄色の服は見るも無残に破られズボンなど履いていない。
泣くと言う事を終え、ふらつく足を引きずり無表情に近いオーラを纏い商店街の角から出てきた。
「おい!」
師匠が声をかけると、安堵の表情を浮かべ泣き終えたはずの顔からは大粒の涙がポロポロと頬を伝う。
少女は足早に師匠の元へとかける。
「もう、安心だ……俺たちについて来なさい……それと、まだ生きたいる人は見たか? 出来たら教えてほしい」
ぐちゃぐちゃになった顔を横に振り師匠の服に抱きつく。おいおいと言いつつも師匠はその少女を優しく抱き抱え頭を撫でる。
そうして三分ほど泣くと、泣き疲れてしまったのか、それとも人に出会えたと言う喜びからくる涙かは夜見のあずかり知らぬ事なのだが……。
彼女は泣き疲れ師匠の肩に揺さぶられスヤスヤと寝息を立てて寝ている。
少し羨ましいと感じてしまう私が悔しいのは独占欲からくるものなのだろうか?
私には全く分からない。
いつかはわかる日が来るのだろうか?
と、心の中で呟くが顔には出ていたのだろう。
師匠が私の顔を覗き込む。
ポンポンと頭を撫でられ、セットした髪がぐしゃぐしゃになる。
顔を膨らませると、ケラケラと笑いズカズカと街中を歩いていく。
「いないか?」
弱々しく師匠は言う。
それもそうだろう。
あれだけ食い尽くされたのだ。
生きている事が難しい……だからこそこの少女は特別なのかも? 私には分からない。
そうこうしているうちに日が沈む。
森は死に絶え、町は瓦礫と化す。
地獄にも似た景色の中で唯一美しいものといえば、あの夕焼けだけだろう。
こんな荒んだ世界でも太陽だけは、空だけは澄んでいて美しいとも感じる。
乾いた笑みを浮かべ疲れて肩を落とす。ため息を一つ落とし近くにあるワゴン車を拝借し少女と荷物、そしてわたし達二人が乗り込む。
ガラスは既に原型は無く割られている。
フロントには血が溜まり、止まるたびにピチャピチャと滴る。
車を走らせる中で一番困ったことは瓦礫処理と死体を引いてしまうことだ。
それもそのはずだ、何十何百、何千人といる街中で全ての人が死んだ今その死体が道路脇に転がっていてもおかしくは無い。寧ろ無いわけがない。
私も死体には慣れてしまったのか私にコロッケを売ってくれた叔母さんも、私に絡んで来た男達も皆一様に死が与えられている。
命とはこれほどまでに軽いのか……少女が悟には申し分ない。
寧ろお釣りが帰って来るほどに……。
ん、ん〜。
気絶していたはずの少女が苦しそうに呻き声をあげる。
喉元を掻き毟り、赤い血を滴らせる。
「これは!」
その言葉とともに車を止める。
勢いよく止められた車には慣性が残る。
慣性の法則により、前座席の頭を支えるクッションに強打し、頭を抑える。
うゔ〜あぁ〜い、いや……
その呻き声は次第に激しく大きくなっていく。
「夜見、その子を車から落とせ!!」
ふむ、少しずつ物語が動き出す




