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少女は刀を握り姫となる!剣姫〜いざ行かん  作者: 榊 凪
1章 幼少期 殻を破る時
15/96

15激昂

ちょっと遅れたー

 15


 私は久し振りに激昂した。


 ◇


 私が意識を取り戻したのはあれから三時間後のことだった。


 ズシリと体が重く、鉛の塊を体の至る所にぶら下げそれを揺らしているかのようだった。


「痛い…………」


「夜見くん…………意識を取り戻したのか」


 私の横にいたのは、お爺様の元弟子の男だった。


 男の体は傷まみれで見るからに重傷。


「何があったの……?」


「聞いて驚くなよ……これ全部君がやったことだ」


「ーーえ……」


 そう言われるがままに辺りを見渡す。


 そこに広がっていたのは……。


 日やがった池。

 草木の枯れた大地。

 壊れた家。


 そして極め付けが、ズタボロになっている鬼の姿だ。

 首は無残に引き千切られ

 内臓は引き摺り出され

 両手両足は最早原型は無く

 血で濡れていない所など有りはしなかった。


「何があったの……?」


 力なく項垂れる私は片手に持つ鞘付きの短剣を固く握りしめるだけだった。



「ーーお爺様は……無事、なんですか」


 夜見の口から出た言葉は祈りにも似ていた。


 男は目を伏せ、口を開けようとはしなかった。


 夜見は男の顔を息絶え絶えながらもその意図を汲み取り、一筋の涙を浮かべるのであった…………。



 ◇◇◇◇◇◇



 あれから三日経った。


 私はお爺様の形見を探すために全壊したお寺の中を散策していた。


「無いかな? 写真の一つでもあれば頑張れるんだけど……」


 そう言えば、お爺様の死体見てないな……私が切り刻んで原型はとどめてないかと師匠に言われたけど、本当かな?


 あの人はあまり信用できない。


「あ、あった」


 夜見は土を少しかぶった写真立てと、書物を見つけた。


 懐かしいな……これ、あの時読んでもらった本とお爺様が私の誕生日にくれたお母様とお爺様、そして顔も見たこともないお父様の写真だ。


 妙に重い気を引きずり、瓦礫の散乱するお寺跡を急ぎ足でその場を後にした。


 ◇◇◇◇◇◇



「夜見、戻ったのか?」

「……はい、戻りました」


 何もない空き地に、緑色の簡易テントの設置してある仮拠点で師匠は台にハンドガンの手入れをしていた。


「何かあったか?」

「写真と、本がありました」

「そうか」


 作業着にも似た淡い青色をした服を見に纏い、口元にはタバコを咥え呑気に作業をしていた。


「何してるんですか?」

「見て分からないのか? 武器の手入れだ。こういう所からしっかりしておかないといざ先頭になった時誤作動を起こす可能性があるからな。だから整備をっといった所だ」



 手袋を真っ黒にし、額に流れる汗を拭う。

 手袋に着いた汚れが額に付き黒い筋をつける。



「ふぅ、一段落といったところかな」


「終わったのですか?」


「あ? あぁ、そうだな」


 師匠と呼ばれた男はカチャカチャとハンドガンを慣れた手つきで組み立て、腰にあるホルダーにしまう。



「さてと、修行と行くかな?」

「……はいーー」


 嫌々師匠の後を続く。


 一時間ほど経つと、市街に着いた。


「はぁ、人に慣れる訓練ってなんなんですか?」


「ほら、行け。これも修行だ」


 私はいま、人に慣れるという訓練をしている。

 勿論、剣の修行もしているのだけどそれよりも師匠と曰くお前は人と接してもう少し協調性を持てとのことだ。


 私が街中であたふたしている最中、師匠はバーという所でお酒を飲んでいるらしい。


 クソが。


「それじゃあ夜見、三時間後ここで、な」


「はい」


 意図は全く分からないし、これをやる意味が分からない。


 剣の修行をしてきた私にとって人と接することと言うのはどうでもいいことであり、お爺様としか話したくない。


 もう、死んでしまったけれども……。


 街中をキョロキョロしながら歩いていると、見知らぬ人が私を見て指をさして何かを話している。


 あまり気分の良いものではない。


 私の何が行けないのだろうか。


 師匠曰く、学べだそうだ。


「ねぇ、君。いま暇?」


 こんな風に男どもが私に声をかけてくることがある。

 暇じゃない、と答えると腕を掴みどこかへと連れて行こうとすることが多々ある。


 大抵、裏路地に連れていかれ胸や下を弄られた後、服を脱がされそうになる。


 何が楽しいのか、そんな私の写真を何度も撮った。


 流石の私も気分が悪い。

 剣を少しだけ抜くと、男達は顔を青くしその場を急いで立ち去った。


 乱された服を整えながら、剣をしまう。


 辺りに撒き散らされた赤い霧を掻い潜り裏路地を抜ける。


 ふぅ、さてと。

 街中を巡るかな……。


 といっても、師匠からもらったお金?と言うものを財布と言うものにいれそれを裾に入れる。


「良かった、また人を殺したら師匠に怒られる所だった。良かった」


 昨日、私は人を殺した。

 なんか、喧嘩を売られたから買った。

 それだけの話。


 その町には私はもう入れないらしい。

 何でだろう。


 師匠曰く、犯罪というのらしい。

 興味無いけど。


 仕方がなく、街角で売っているコロッケを買いトコトコと街中を歩き回る。


 そうこうしているうちに三時間はあっという間に過ぎる。


 待ち合わせをしていた山の麓まで歩き師匠を待つ。


 コロッケ……買いすぎたかな?


 袋いっぱいに買ったコロッケは結局食べきれなかった。


「夜見、戻ってたのか〜ゲップ……」


 顔を赤くして戻ってきた師匠に肩を貸し、テントまで引きずって行くのがここ二日の日課である。

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