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少女は刀を握り姫となる!剣姫〜いざ行かん  作者: 榊 凪
1章 幼少期 殻を破る時
11/96

11襲来

うーんすぐに改定するかもー?


 11


 十二歳となった私は坂巻家秘伝の剣術は粗方の事は覚え、お爺様との剣技に没頭していた。

 木刀と真剣がぶつかり合い、風を起こす。

 二人の剣士は、互いに肩で息をし、それでも尚剣をぶつけ合う。


「お爺様、そろそろ休憩になさいませんか?もう、夜も更けましたので」


「そうじゃな……今日はもう終わりにしようか……昨日殺しておいたイノシシを食べるか。今日はイノシシステーキといこうか」


 悪い顔を浮かべ、木刀を肩に担ぐ。

 ……パリッ。

 何かが割れる音がした。小さくとても聞きにくかったのだが、それでも尚耳には届いた。

 そしてその時、お爺様が動きを止めた。



「…………早いな……あれからそんなに時は立っていないはずだが?もう、結界が破られたのか…………やれやれ。夜見。晩御飯は自分で作れ。わしは用が出来た。ご飯を食べたら本殿の隠し部屋に行き、朝になるまで出て来てはダメだ。いいな」

 小声でそう言うと自慢の白い髭をさすりながら、音のした方角を目を細めながら見通す。


 物思いにふけ、腰に刺してある小刀の鞘に手をかける。


 小刀は私の前で一度も抜いたことのない剣だ。

 お爺様曰く、この小刀はあらゆる呪いがかけられた禁術の類だと言う。そんな事を言われたら見たくなってしまうのだが、あの時の顔を思い出すとそのようなことは言えなくなる。


 それにいつも持っている剣は禍々しい気を放ってはいるが、この小刀に秘められし力はそれを軽く凌駕する事はまだこの道の浅い人でも一目で分かることだろう。

 それ程だと言うのだ。


「夜見、この剣は弱きものが直接見てはならない。心が弱きものが見るとたちまち心が死んでしまうから。だからこそ夜見、もしわしが死んだ時、強き心を持つお前がこの剣を受け取りなさい、そして、私の仇と全ての鬼を屠れ。良いな」



「……わ、分かりました。そのように致します。ですからお爺様。生きて帰って来てください。そして剣の修行を……」


「もし、そうだったのならばな……」


 力なくそう嘆き、何かを思い出したのか、人差し指を私に向けお爺様は言った。


「生きてくれ」

 夜見の心に深く突き刺さる言葉だけを残しお爺様は音の鳴った方角へと行ってしまった。

 昔は見えなかったのに、見えてしまってはただ悲しくなるものだった。





 ◇◇◇◇◇◇


 言いつけ通り、私は火を起しし、イノシシ肉を直火でこんがりと焼く。

 料理などやった事がなく、初めての経験だったが、なかなか楽しいものだと言うことを今日知った。

 煙が肺に入りむせたり、火を点けるのに苦労したりと分からないことの方が多かった気もするが……。


 完成した料理はご飯には芯が残っていたり、野菜は炒めすぎてフニャフニャになってしまったりイノシシの肉は焦げすぎて硬いのと、味付けをしていないせいか、イノシシの悪いところしか味に出なかった。



「不味い……はぁ、お爺様に料理教えてもらおうかな?」



 不味い料理を堪能し、先程沸かしておいたお風呂に入る。

 薪を入れすぎたせいか幾分熱くなってしまったがなかなかは入れなくて、これではいけないと思い水を足したら、今度は冷たくなってしまった。


 すっかり冷めてしまった体をタオルで拭きながら夜の廊下を歩く。

 髪はボサボサ、肩には水滴が残り、鎖骨をスルリと流れ落ちる。

 夏の夜の涼しげな風が冷めた体を煽情的に色目かす。


「はぁ……」

 小さく溜息をつけは、小さく咲く牡丹のよう。

 歩けばユリ、剣を振るう姿はさながら薔薇のような少女は自身の不甲斐なさとやるせない気持ちに打ちひしがれ空を見上げる。

 今は懐かしき街灯が一つもなく、見上げる空全てに星が輝く。

 赤い星、青い星、白い星。

 その中でも一番大きな月は夜見が一番好きな天体でもあった。


 寝る時は必ずその日の月を見る。

 今日は月が欠けてから十五日。

 だから今日は満月の筈だ。

 夏の夜空は輝いて見える。

 夏の大三角形でもあるデネブ・アルタイル・ベガの輝く星……。


 北極星……。


 指を指しながら昔読んだ本の通りに星を見る。


「綺麗だ……」


 先程までの喧騒を忘れ、不味い料理も忘れ、ただ星を眺める。


 そして、一番最後となった星。


 ……月ーー。


 見上げた月は、赤かった。

 今まで見た月はこんなに赤くは無かった。

「あれ? おかしいなあんなに赤い月は初めて……」


 赤く光る月は大きく見えた。


 目を大きく開きながら月を見ていると、月の中央がパックリと開き、ドス黒い血が流れる。

「え……! なに、これ」


 今まで感じたことの無い恐怖と、畏怖、寒気、黒い感情を一身に受ける。


 時折、何かが燃える音がしパリパリと何かを貪る音も聞こえた。


 急がなきゃ……本殿に。


 宝物でもあるウサギのぬいぐるみを腕に抱き本殿へと走る。


 ドロドロと流れる血はやがては塀を越えてくる。

 そう、直感で感じた。

 それにあれを浴びたら死ぬ。


 なればこそ、非難を。


 やっとの思いでついた本殿は静かで安心した。


 木々が倒される音がした。

 それに、凄く違い!!


 やばい、やばい、やばい!!


 激しく脈打つ心臓を必死に抑え、本殿の奥にある仏像にすがりよる。


 冷たくて、無表情の銅色の仏像は正面を見据えているだけで何もしてはくれない。


「どうしたら」


 はぁ!

 そう言えば、以前ここに来た時に見つけた隠し部屋があった筈。


 そこに、入れば。


 でも、そこに入るなってお爺様が……。


 でも、今はそんなこと言ってる場合じゃ無い。


 えーと、たしかここのレバーを引いて、祭壇に置いてあるろうそくに火を灯せば…………。



 開いた。


 ぬいぐるみの首が取れそうになるくらいに抱きしめ、苦しそうにするぬいぐるみをよそ目に、仏像の後ろに開いた地下へと通ずる階段をかけをりる。


 何もない洞窟みたいな地下トンネルを進んでいくと、鉄の扉がある。


 ーーここに入れば……。


 助かる…………。


 錆びついてなかなか動かない鉄扉を真剣で鍵を破壊し、蹴破る。


 少し強引だった気もするが、死ぬよりはマシ。


 そうして、暗闇の中夜見は疲れてしまった体をここで回復させることにした。


 その部屋が元々何に使われていたのかも知らずに……。








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