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少女は刀を握り姫となる!剣姫〜いざ行かん  作者: 榊 凪
1章 幼少期 殻を破る時
10/96

10イノシシ掃討戦

暴走状態で、止められませんでした。

 10


 私の顔を覗き込むお爺様は頭上に? マークを浮かべていた。


 おっと、いけない。


「体調が優れないか?札を取ったのがマズかったのだろうか」


 腕を組み、翁は考えにふけていた。


「そんな事よりもお爺様。剣の修行をお願いします。お父様、お母様を殺した鬼が憎いのです」


「そ、そうか……分かった。ならば外に来なさい。前回の続きを」


「はい!」


 ◇◇◇◇◇◇


 時は達、三年の月日が経った。



「夜見、遅いぞ」

 私の顔を狙う一撃、今では止まってみえる。


 ふふっ、あの頃の私とは違う……。


 懐かしいあの日々。

 毎日の様にボコボコにされていた日々を思い出す。

「その程度」


 私は上体を低くし、鋭き一撃を寸前の所で避け、カウンターをお爺様に叩き込む。


「何のこれしき」


 私が繰り出したカウンター素手で受け、技を消す。

 私とお爺様は一旦距離を置き、息を整える。


 ゼェゼェと荒い息をし、呼吸を整える。


「さて、ここまでにしようか、彼此半日はやっているからな。私も歳だから休憩をしたいのだが」


「え、えぇ、そうしましょう。私もそろそろ限界が近づいて来ていた所です。あと数手でお爺様に一撃当てられるかと思ったのですが、そう簡単には行きませんね」


 剣を腰に刺し、昨日の晩に狩っておいたイノシシを庭先から持って来て、真剣を使い捌く。


 それにしても、真剣を素手で受け止めるお爺様は相変わらずぶっ壊れているな。

 丸太さえ抵抗なく切れる剣なのにどうして素手で受け止められるのだろうか?

 昔から体は丈夫とかは言っていたが、そう言う問題では無いと思うのだけれど。


「ブモォォォォ!!!」


 どうやらイノシシはまだ生きていたそうで、庭先を駆け回っていた。

 それをお爺様はやれやれと手を振り、木刀をイノシシの頭に突き刺すのであった。


「どうやったら木刀がイノシシの頭に刺さるのですか?先が鋭くない剣など骨を折るのが精一杯かと思うのですが?」


「ん?何となくだよ」


 意味わからない。

 あぁービクビクしてるよ。

 血が庭いっぱいに撒き散らされ、私が植えておいた花々に血がかかりました。

 全く、美しい花を……。

 掃除するの誰か分かってやってるのかな?


「夜見、掃除して置きなさい」

「はい、分かりました」


 やはりそうでしたか……。

 血の洗い方なんて分からないんだけどな。


 水でも掛けておこうか。

 いつもの事とはいえ、山奥で殺してきてほしいものだ。

 山であれば、微生物たちの餌となりそれが増殖すればきのこや山の幸などが生えてきやすいというものなのに。


 お爺様曰く、めんどくさいなのだぞうだ。


 玄関にしまってある桶と柄杓を持って来るために、剣を腰に刺し戸を開けガサゴソと戸棚を開け閉めしていると、お爺様がイノシシの皮を剥ぎ始めた。


 おいおい、止めて下さいよ。

 その毛も落ちないんですから。

 そんな砂利の上でやるなんてもう……。


「はぁ……」


 小さくため息を付き、ようやく見つけた桶と柄杓を手に持ち、ベランダに掛けてある竹箒を脇に挟みお爺様がイノシシを捌いているところへと向かった。


「夜見、今日はご馳走だぞ!! 猪鍋だ!」


「それはいいですけれど、着物に付けた血。どうにかして下さいね。落ちないんですから」

 顔に付いた血を手で拭い、不敵に笑うお爺様は少し不気味でした。


「…………」

「どうしたのだ? 夜見よ。嫌そうな顔をして。イノシシ嫌いだったか?」


 嫌ではないのですよ。猪肉は。

 若干の癖がありつつも、脂は甘くしっかりとした赤身、そして栄養価が非常に良い。

 そんな美味しい……じゃなくて健康に良い食材が嫌いなわけありません。

 けれど、鴨肉の方が私は好みではありますが、ゴホン。


「いえ、好きです」

 そう言うとお爺様は顔を赤らめ、「え? わし?」みたいな顔をしたので、腰に刺してある剣を抜き、顔面に突き刺しました。


「ぐわぁぁぁぁぁあああ!! なにするんじゃ!! 危うく死ぬところじゃっただろうが!! 全く、ワシがなにをしたと言うのだ」


「いえ、キモかったのでつい」


「つい、で刺すやつがおるか。夜見は脂身だけな」


 ブスリ。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ」


 森のなかにひっそりと佇むお寺からおっさんの甲高い叫び声が轟きました。


「響きましたね」

「野菜だけにしてやる」

「ん? 何か?」

「いえ……なにも」


 額からちょろちょろと血を垂れ流すお爺様はどこかバツが悪そうな顔をしていた。


 ほぼ不死身のお爺様をよそ目に、桶に水を汲み、柄杓で水を撒いていると獣の声が聞こえた。


 野太くて、よく響く声が。


 私とお爺様で頭に?マークを浮かべていると、我が家(お寺)の門を突き破り一匹の大イノシシが出てきた。


「親か」

 私とお爺様はニヤリと笑うと剣を取った。


「お爺様。今夜はご馳走ですね」

「あぁ、ステーキ食べ放題じゃー!!」


 きっとイノシシからはこう見えた事だろう。


 黒きオーラを身に纏い、目は赤く剣を携えた二人の魔神が。


 だが、イノシシも負けてはいなかった。


 太く短い前足で地面を掻き、鼻から息を力強く吐き、花を揺らす。


「ほほぅ、やる気だな」

「えぇ、そうですねお爺様」


 瞬光。


 高速で動く私達にイノシシは反応出来るはずもない。


 そう勘ぐっていると、お爺様が一言。


「夜見。お前がやりなさい」

「分かりました。必ず仕留めてまいります」


 何故お爺様が辞退したのかは分からないが、まぁ、いい。殺してやる。


 ふと、お爺様の顔を見ると鼻をつまんでいた。

 その様子を不思議に見るが、特に気にしず特攻じゃー!! の勢いで突撃した。


 私がやつの目前に迫ると、大イノシシはケツを私に向けた。


 そして、それは発射した。

 猛烈な匂いとドロドロとした茶色いものが私の服や顔、髪の毛にかかった。


「なんじゃこりやー!!」

 と、私が油断しているところに、大イノシシの突進。

 腹部に強烈な痛みと、吐き気が襲いその場に倒れこんでしまう。


 唸り声をあげていると、後ろの方でゲラゲラと笑うお爺様の声が聞こえた。


「よ、夜見ガハハ、お腹いた。ガハハハハッ。だいじょ、やばい」


 地面を叩き、爆笑しているお爺様がそこにいた。


「殺す」

 私がそう言うと、若干青ざめたお爺様が木刀片手に、ユタユタと大イノシシへとゆっくりと歩く。


 その顔は笑いを堪えている顔ではあったが、額は若干青かった。


 流石に二発目は来ないとふんだお爺様は、口元を押さえ笑いを堪えながらイノシシに木刀を振った。


 お爺様がイノシシに近づくと奴は急旋回し、ケツをお爺様に向けた。


 ?マークを浮かべたお爺様がマジマジとイノシシのケツを見ていると、お爺様はなにかを思いついたようだ。


「ふふっ、命乞いか。お前のような獣でもやはり命は惜しいか。くさ。夜見お風呂入って来なさい。やばい。笑い死にそう」


 イラッとしながら早くそいつにトドメを刺してほしいと思いつつ、痛む腹部を押さえて、ゆっくりとお風呂へと向かおうとした。その時。私の後ろの方で、ブリブリと言う聴き慣れた音が聞こえた。


 ふと、後ろをみるとそのには糞まみれなお爺様と、してやったりと言う顔をしたイノシシがいた。


 やばい、今、笑ったら殺される……。


 ふと、こんな名言が頭に浮かんだ。

 と言うか、物理的に笑ったらお腹が痛む。


 で、でも……こ、これは。

 必死に笑いを堪えていると。お爺様が一言。


「笑いたかったら笑え。その前に夜見。ひとつ仕事をする気はないか?」


「えぇ、お爺様」


「こいつ、殺そう」


「そうですね。惨殺しましょう」


 許さない。この私を笑い死にさせる気なんて……お腹、痛い。


「キェェェェエ」

「キェェェェエ」


 甲高い声とともに、剣を振るい。

 イノシシを滅多打ちにし、終いには皮を全て剥ぎ取り、骨を断ち、肉を全て食いつきしてやった。


 その間、お風呂には入っておりません。



 そして、イノシシを最後の最後まで食べ尽くした二人はこういったと言う。


「お風呂、先入ってこれば良かった」

 と……。




お爺様と、夜見が止まってくれませんでした。

ごめんなさい。

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