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少女は刀を握り姫となる!剣姫〜いざ行かん  作者: 榊 凪
1章 幼少期 殻を破る時
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01おじいさま

久しぶりの投稿、何度か初心を思い出します〜!!

 


 私が剣を握ったのはいくつだっただろうか?

 小さい頃のことはよく覚えていない。

 うっすらと覚えているのは、黒くて大きくて怖い目をしたやつがおかあさまを殺したということだけ。


 なぜかその記憶だけはしっかりとしていた。

 自分でも驚くくらいに……。






夜見よみ、剣先が鈍っているぞ、しっかりと握りなさい」


「はい、おじいさま」


 幼少の頃からおじいさまのお寺に住み込み、毎日のように剣の修行をしている。


 剣を降り始めた頃の記憶はない。思い出そうとすると頭が割れるように痛くなる。


「えい! えい!」

 愛用の木刀を上下に振る。そして、地面に着きそうなる手前で手を絞り木刀を寸前で止める。

「うむ、その調子だ」


 そう言いおじいさまは空を見上げて太陽の位置を確認した。真上にある太陽はキラキラと輝き目を霞ませる。思わず手で目元を隠した。


「そろそろ昼か。夜見(よみ)飯にするぞ」


「はい、おじいさま」


 私は井戸へと向かいおじいさまは外にある棚へ木刀を戻しお寺の中へと入って行った。古びた木造建築のお寺の床を踏みしめ襖を開けどこかへ行ってしまわれた。


 私はと言うと太陽の温かな日の光を全身に浴び、汗ばんだ体を井戸水で一気に冷やす。透き通った淡い水色の井戸水が汗ばんだ体を締め付けるようだ。白い道着はぴったりと体に密着し、幼げな体のラインを露わにした。


「ひゃー気持ち〜生き返る!」



「わしは飯の用意をしておく。その間に汗を流しておけ、それと、しっかりと体を拭きなさい。風邪をひいて修行をサボられたらかなわないからな」

襖の間から顔を出し、オタマと菜箸を持った姿でお爺様そう言う。

「わかりました。おじいさま」


 さらに私は桶一杯に水を汲み頭から水を被る。


「冷たくて気持ちー」


「全く、聞いておらんな」

 やれやれとおじいさまは手を振り襖を閉め寺の中へと入っていった。



 水浴びを終え、近くにかけてあったタオルで体を拭く。身につけていた道着は物干し竿にかけ、予め物保持竿干してあった新しい道着を着てお寺の中へとはいっていった。



「手は洗ったか?」

眉を寄せ戒めるかのようにおじいさまは言う。ギクリと身を引き、私は言葉を返した。

「あ! まだでした。今から洗ってきます」


おじいさまは、小さく頷き「そうか」と短く返すと、白黒のシマウマ模様のエプロンを腰に巻きつけ台所に戻る。



「それと、もう少しでご飯が出来るから少しまっていなさい」

ヒョッコリと顔を出し、今度こそは本当に戻って行った。

「わかりました」


 私はおじいさまに言われた通り手を洗い食事用のテーブルにつき今日の昼ごはんを待つ。杉の香りのするテーブルに自前の箸を置いた。凸凹しているこの箸はおじいさま手作りの一品だ。


 どうやら料理が出来たようで、台所からおじいさまの歩く音が聞こえた。ドスドスと木材が軋む音がしている。芳しい匂いと山菜の和え物、それと血生臭いデザートだ。


 基本は美味しいのだけれど、デザート? 

 みたいなやつがとてつもなくまずいのだ。しかも残したらとてつもなく怒られる。何故かと聞いても、好き嫌いはよくない、との一点張り。もはや話は通じまいと思いを押し殺しているが、まずい、例えようのない不味さだ。食感はグミのようで、味は甘い、色はどす黒い赤、匂いは、ん〜血の匂い? なのかな、鉄が錆びたような匂いがするのだ。

 簡単に言ってしまえば何かのお肉を甘くしただけみたいな感じなのだ。




 本当にまずい、一回残したら……やめよう。思い出しただけで鳥肌が……。


「出来たぞ。手を合わせなさい」


「はい」


「いただきます」

「頂きます」


 二人で手を合わせ、今日の食材たちに感謝を込める。いつもおじいさまとやっている事だ。これをやらなければならないと、おじいさまに最初に教えてもらった事なのだから。


「うげ、今日もこれ入ってる」


「なんだ? これが嫌いなのか? いつも最後に食べてるから好きな物だと勘違いしていたが。違うのか?」


「うん、これ美味しくない。あ、でも、それ以外の料理は美味しいからねおじいさま。これだけだからね」


「うむ、これだけは食べてもらわなきゃいけないんだがな……」


 おじいさまは腕を組んで何やら難しい顔をして考え事をしていました。


 数分ほど考え、おじいさまは言いました。


「文句を言わず食え」


 私は渋々そのへんな黒いものを口に含みました。

歯ごたえはなく、ホルモンとグミを掛け合わせたような食感、味は最悪。私が嫌そうに食べていると、おじいさまは優しい目をしていました。少し心が痛いです。





 ご飯も食べ終え、晩御飯までまた剣を振ります。と、いっても、木刀なんですけどね。握り慣れた木刀はやはり手に馴染む。これを握っている間だけは心が落ち着き、無心になれる事が多い。


食べた食器は自分で片付ける。この家のルールみたいなものだ。


「夜見、さて、今日から新しいことをやってみようと思うが、いいか」

洗剤を多く付けすぎたスポンジでお茶碗を洗っているとお爺様が話しかけてきた。


「ん? なにをやるんですか?」


「新しい稽古だよ」


「はあ? そうなのですか?」


 私が食器を洗い終えると、手を拭き外へといきました。そして、外の棚に置いてある木刀を掴むと私を優しく手招きしています。


 私もそれに置いていかれないように、玄関に置いてある自身の木刀を持ち藁草履を履いて外へと向かいました。

外に出るとそこには木刀を振るうお爺様の姿がありました。引き締まった腕、そこから振り下ろさせる木刀はしなるほど強力な振り下ろし。わたしには真似出来ません。



「夜見、これから私と組み稽古をしてもらう」


「組み稽古?」


「そうだ、実践とは言い難いが、今のお前の実力や打ち込みの強さを知りたくてな、お前も実際に相手と合間見えた方が、自身の力となりやすいだよう。そう思っての事だ」



 お爺様は私に向けて木刀を構えます。おじいさまの構えは、一部たりとも隙がなく、そして、呼吸に全くの乱れがありませんでした。


 私は言われるがまま、おじいさまの前に立ち、剣を構えました。


 剣を構え、おじいさまを見ました。

 そこにはいつも優しげに微笑むおじいさまは居なく、ただ武士としての佇まいでとてもカッコ良かったです。



「さぁ、夜見。剣を構えててわしに打ち込んで見なさい。私に一回でも打ち込めたのならあのデザートは抜いてあげよう」


「なに!!」

 おじいさまが自らあのクソ不味いデザートを抜くと宣言なされました。


 ふふ、これは何としても打ち込まなくてはなりません。

 くくくっ私はそこそこ剣が上手くなったと思います。

 だから、早々に終わらせ、美味しい物だけをお腹いっぱい食べてやるんだから!!



「てーい」


 短い掛け声とともに打ち込まれた私の剣は、おじいさまにあたる寸前で砕け散りました。爆散した私の木刀はほろほろと木屑が舞い、根元から砕け散りました。


 え? なにが起きたの?



「ふむふむ、やはりやりおるな、この歳でここまでとは、やはり坂巻家の子ということか」


 おじいさまは小さな小声でそういうと、剣を腰に刺し、新しい木刀を私に投げ渡しました。


「夜見、剣の打ち込みは素晴らしいものだった。流石はわしの孫だけはある。だが、わしにはまだまだ勝てないようだな」


「むぅ、おじいさまは反則ですよ!! 剣を砕くなんて普通じゃあり得ないよ!」


 私がそういうと、おじいさまはニッコリ笑い、そっと私の頭に手を置き優しく撫でてくださいました。

 暖かくて、ゴツゴツしててそれでいて優しいおじいさまの手。


 どうしてこんなにも強いのだろうか?

 そして、おじいさまはあの時何をしたのだろうか?

 今の私には到底わからないものだった。



「夜見、今日はもう休みなさい、疲れただろう、今日の修行はお休みにしてあげるから、ゆっくりしなさい。その代わり明日からはビシバシいくから気を引き締めて置きなさい」


「はい、おじいさまは」



 その日の修行は終わりを告げ、自室へと戻った私はただ、天井を見上げるだけで、ご飯ができたと呼ばれるまでずっとそうしていた。





読んでくださり、ありがとうございます!!

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