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第十一話。魔王の力と中間地点。 パート3。

「雰囲気かわったな」

 四階でございますって言う、

 ダンジョンさんのアナウンスが、聞こえた直後だ。

 

 

 俺こと胡桃栖博士くるすひろしは、ひかりリンの無双を眺めるだけの

 簡単なお仕事をしながら、のんべんだらりとダンジョンを歩き回っている。

 

「ところでゴーレママ、だったかしら?」

 平然と姿 じゃないか、顔の見えないダンジョンさんに

 声をかけるピカリンの、その度胸は見事なもんだと思う。

 和也かずやもそうだけど、幻想生物に順応しすぎじゃないかと

 思うんだよなぁ。

 

『なんですのリン様?』

 で、こうしてダンジョンさんの方も、普通に返事する。

 どんな空間なんだよここは、って、疑問に思う俺の方が

 おかしい気になって来るんだから不思議だ。

 

 ーーまあ、純白の鎧着てる俺が不思議がるのも、いささか妙か。

 

 

仁武和也じんむかずや、どんな様子?」

 相変わらず、フルネーム呼びをやめてないんだよな、こいつ。

『カズヤさまでしたら、今大魔王様マスターといっしょに

七つ目の階層。最終階一歩前に向かうところですわ』

「なるほどね、ありがと」

 

『お安い御用ですわ。ではお二人とも。

そのドアを開けてくださいませ』

「ええ。いくわよヒロシ」

「だから。その呼び方、やめろっつってんだろ、ピカリン」

 

「あんたこそやめなさいよね」

「お前がやめたらな」

 なんて言い合ってる間に、ピカリンがグググっと真っ黒い

 見るからに重たそうな、鉄の扉を押し開け始めた。

 

 

「さてさて。鬼が出るか蛇が出るか」

「案外、竜が出るかもね」

「おいおい、冗談だろ」

 

「わかんないわよ。なんせここは、異世界のゴーレムって言う

未知のダンジョンよ。竜ぐらい出てもおかしくないでしょっっ」

 「ょ」にグッと力をこめたピカリン。

 グイイイイって言う独特な、

 今にも蝶番が外れそうな音で、ゆっくりと開いて行く扉。

 

 ここは、フロアの構造からして、これまでとは明らかに異質だ。

 まさにボスフロア。

 

 

「暗いな」

「そうね。でも、相手さんは分かり易く、足音を立ててくれてるわ」

 今までと違って、ピカリンの足取りは慎重だ。

 

 流石にこの上階うえに比べて、明らかに暗いここじゃ、そうもなるか。

 いくら、ここまでまさに無双の、ひかりリンと言えどもな。

『さて、お二人のご期待に添えますかしら』

「楽しそうだな、ダンジョンさん」

 

『ええ。お客様がこの、わたくしと言う名のダンジョンに、期待をしてくれる。

これが、楽しくないはずがありませんもの』

 ピカリンよりも、よっぽど接しやすい口調と態度だな、

 このダンジョン。

 

「ん? 目が慣れたか。少しずつ明るくなって来たぞ」

「ええ。さて、なにものかしら」

「ちょっと足音がザラついてるように聞こえるぞ、相手さん」

 

「そうね。読めないわね、これは」

 ぼんやりと輪郭が見え始めた。って!

「でかっ!」「でかっ!?」

 そう。シルエットだけでも、優に人の倍はあるのだ。

 ちなみに、リアクションがでかいのが俺な。

 

 

「で、どうやら人型みたいね」

「だな。ロボか?」

「なわけないでしょ。魔力持ってるような存在が、ロボットを。

それも人型ロボットなんて考えると思う?」

「む。言われてみれば」

 

「そうなれば。お相手は、同類。違うかしら?」

『あら、あっさりバレてしまいましたわね、その通り。

あなた方に相手をしていただくのは、この世界で生み出した

ゴーレムの一種です』

 

「なるほど。面白いじゃない」

「お前。まさか、そのままのかっこで戦うつもりか?」

「そうよ。なんか問題ある?」

 

「いや。お前が問題ないって判断してるんなら、

そうなんだろうけど。大丈夫なのか?」

「アトラクションなダンジョン相手に、

アレを使うなんて。照家の人間としては、恥なのよ」

「おいおい。意地になるなって」

 

「ここまでのハリボテは、身体能力こぶしで充分だったし、

問題ないでしょ。それに」

「な……なんでこっち見るんだ?」

 いやな予感が。

 

 

おとりもいることだし」

「やっぱりかよ……」

「なんだ、覚悟決まってるんじゃない。

じゃ、役割分担は決定ね。頼んだわよ」

「お前なぁ」

 

「このダンジョンに入ってからこれまで、

なーんにもしてこなかったんだし。

中ボス戦でぐらい、役に立ってもらわなきゃ」

「あのなぁ。これでもこっちは疲れてんだぞ」

 

 言い返した。言い返したのに、

「それはあんたが、フルコンプリートボーナス

使わなかったせいじゃない。自業自得よ」

 にべもなかった。

 

「あんなうさんくさいシステム、誰が好き好んで使うんだよ?」

「ん? あたし。後たぶん仁武和也もね」

 同意が得られると思ったらこれだよ。

「ほんとお前ら、順応能力高すぎだぞ」

 やれやれと呟くことしかできない俺なのであった。

 

 

「ってことで、いってらっしゃいっ!」

「のわーっ!?」

 背中をドンと叩かれた、ならまだ前に

 おっとっと、ってなるだけで済んだ。

 

 が、こいつは。ピカリンは、あろうことか。

 俺の背中のド真ん中を、ぶん殴って来やがったのだっ!

「ごふっ」

 おかげで吹っ飛ばされたあげくに、

 顔から派手に倒れることになったわちくしょう!

 

「わ。わらってんじゃねーよ!」

 鼻を右手で抑えながら、左手で地面を支えに

 勢いつけて起き上がった。

「だって。あんまりにも、見事すぎるリアクションなんだもの」

 笑いながら言うかなぁもぉ。

 

「ちくしょう見てろ。囮以上の活躍してやるからな……!」

 言って、俺は黒い影を睨み上げた。

『それでは、準備はよろしいですわね』

 ダンジョンさんに聞かれて、俺は「ああ」と頷く。

 後ろからも、「ええ」と準備完了の声がした。

 

『わかりました。では、ゴーレミート。好きになさい!』

 初めてだ。この人……で いいのかな? ダンジョンさんが、

 力強い声を発したのを聞いたのは。

 

「じゃ、オトリちゃん。好きになさい」

「っなろぉ。聞いただけで、ニヤニヤしてんのわかる声出しやがって……!」

 もう一度。ターゲットを睨み上げる。

 

 

 

「このむかつき。巨人てめえに叩きつけてやらーっ!」

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