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第十一話。魔王の力と中間地点。 パート2。

「ひどいじゃないですか~」

 戻って来ながら抗議しているディバイナ。

「お前が奇妙なことを言い始めるからだろうが」

 目の前で停止した白黒娘に、やれやれと返す。

 

「えへへ、ごめんなさい。つい……勢いがすぎまして」

 苦笑いのだいまおうさまに、まったくと溜息。

 少し上昇した掌娘。どうやらこのサイズだと、

 俺の溜息はブレス攻撃になるようだ。

 

「そのわりには、最後の選択肢には溜めがあったよな?」

「だ、だって。いくら夫婦って言っても」

「おい」

 

「わたしを食べますか? だなんて……」

 「覚悟しないと言えませんってば」と、

 真っ赤になりながら、蚊の鳴くようなボリュームで言った。

 しかも、両手を胸の前でモジモジとこすり合わせながら、俯いて である。

 

 くっ。悔しいことに、今の覚悟しないとのくだり

 ……かわいいと思ってしまった。

 

「お前と俺は、いったいいつ夫婦になったんだ」

 トーンを少し落とした。

 これで顔の熱さが、かわいらしさからじゃなく、

 腹が立ったからだって、誤認させられただろうか?

 

「フフフ。さて、回復ポイント探しましょう」

 そう言うと、ディバイナはくるっと反転

 いつものように、ふよふよと移動し始めた。

 今の訳知り顔の嬉しそうな笑い。誤魔化し、失敗したのか?

 

「だんなさま? どうしたんですか?」

 右目が見えるようにこっちに向いた、ディバイナに呼びかけられて、

 なんでもね と答えつつ、彼女を追う。

 

 

「モンスターが、一匹もいねえ。ほんとにフルコンプしちまったのか」

 周囲を見ながら歩く。にわかには信じがたい状況だ。

「そうですよ。わたしの大破壊魔法で、一網打尽ですっ」

 

「誇らしげに言うのはいいんだけどさ。

今、ものすごい物騒な言葉が聞こえたんだけど」

「ん? 物騒な言葉? どれのことですか?」

 本気でわかってなさそうな声色だ。

 

 

「俺の耳がおかしいんじゃなきゃ、大破壊って聞こえた」

「ああ、それでしたか。ぜんぜん物騒じゃないですよ」

「嘘つけ。大破壊だぞ」

 平気な顔して言い放ちやがった。

 即座に言い返したのはしかたないだろう。

 

 

「どこが物騒ですか。最上級の攻撃魔法は、

みんな大破壊魔法じゃないですか」

 しれっと切り返して来るか、そこを。

 

「お前らの世界の常識なんぞ知らんわ」

 やけになったような言い方になってしまった。

「むぅ。それは、しかたないですか」

 ここが、ディバイナにとって異世界であることは、

 すんなりと受け入れてるらしい。

 

「ちなみにさっきのは、わたしが最も得意とする大破壊魔法。

ディアボリック・エリミネーションです」

「ディアボリック……魔法の名前が、魔王感すごいな」

 

「はい、大魔王ですから」

 くるっとこっちに向き直ってそう言うと、

 えっへんと右の握り拳で、胸をぽむっと叩いた。

 

「それでこのディアボリック・エリミネーション、

どういう仕組みかと言いますとですね」

 出たよ、メカニズム解説したがり。

「純粋な魔力と火の魔力を合わせて、一度高密度に圧縮。

それを拡大させるだけのシンプルな物です」

 

「火?」

「はい。無属性と火属性の魔力が、同時に敵を焼き尽くします」

 だから。かわいい声してんのに、

 言ってる言葉が、物騒極まりないんだって。

 

「なるほど。純粋な……自前の? 魔力ってのは、

イコール無属性なんだな」

「そうです。流石はだんなさま、すぐに理解しちゃいますね」

「大したことか? ただ文章繋げて、答え導き出しただけだぞ?」

 俺の答えに、なぜだかニッコニコの笑顔で帰してきた。

 

「しっかし。そのサイズでフロア全域が範囲か、恐ろしいな。

本来の大きさだったら、どうなってたんだ?」

「ううん、そうですねぇ。この魔法、抜け殻だいまおう生活が長かったせいで

あんまり打ってないんですけど……たぶんですが」

 そう考えつつ思い出しつつ? 言って。

 

 出て来た次の言葉が、

「町一つぐらいなら消し飛ばせるんじゃないでしょうか?」

 だった。真顔だ。冗談なのか本気なのかわからない。

 

 

「お前……それは、本気か?」

 一信九疑の驚き声で尋ねることになったのは、

 ただの人間でしかない俺の立場からしたら、当然の反応だろう。

 

「はい」

 あっさりと頷いたが、ただ と続きがあるようだ。

「ただ?」

 促すと一つ頷いて、ディバイナは続きを答えた。

 

 

「わたし、魔界しか知らないんですよね。

人間世界に行ったことがないので、

そちらの対魔性能がどれくらいなのか

わからなくって。だから、被害を予測するの

難しいんですよ」

 

「へぇ。建物に、そういうコーティング施してたりするのか?」

「魔界ではそれがあたりまえです。

でも、人間世界ではどうなのか」

「なるほどな。一応言っとくけど、

この世界にそんな技術はないからな」

 

「そうなんですね」

 感心した表情だ。

「魔力の存在を知る人間は、はたしているのか ってぐらいだからな」

「少なくとも、リンさんとクルミチャンさんは知ってますよね」

 

「だな。けど、一般的には、ないと思われてる」

「なるほどです」

「ところで。今さっき打ったディアボリックなんちゃらは、

どれぐらいの力加減だったんだ?」

 移動を再開したディバイナに聞いてみる。

 

 

「んー。久しぶりだったのと、

だんなさまがあぶないーって思ったら……加減、忘れちゃってました」

 困ったような、てれたような声色だ。

 

「なるほど。掌サイズでの手加減なしの威力が、

モンスター三十匹が跡形もなくなる、か。

ほんと、実寸じゃなくてよかったぜ」

「あの……反省してます」

 

「ならばよし。けど……ありがとな。おかげで助かった」

 スルっと出た。

「はっ はひっ?!」

 今……のけぞったよな? しかも裏声。

 

「いえいえとんでもなひっ!」

 空中で、手足をバタバタさせまくっている。

「だんなさまにょためですからーっ!」

 「ら」と同時にドシューッと、凄まじいスピードで飛んでってしまった……。

 

 湯気のような白い軌跡を、まるで彗星の尻尾のように

 飛行機雲のように残して飛ぶ様は、なんとも奇妙だ。

「おーい、どこいくんだー」

 俺の歩行速度だとか回復ポイント探索だとか、

 そう言ったのが全部どっか行ったな あれは。

 

「やれやれ、フリーダムな奴だ」

 俺は、のんびり歩いて探索するとしよう。

 

 

***

 

 

「ふぅ。まったく、ビュンビュン飛び回りやがって」

 回復ポイントで完全回復し終えた俺は、

 同じく回復ポイントの効果を受けたディバイナに

 やれやれと吐き出した。

 

 

 歩き回ってわかったことは、今回のこのフロア。

 モンスターがいないと、なにもない場所だった、と言うことだ。

 

「すみませんです、はい。

真っ直ぐお礼してもらえたのが、嬉しくてですね。

それがとっても、てれてれしてしまいまして」

 はにかんだような声色で、また顔を真っ赤にして

 ニヘラっと声色通りの表情で、また俯いて言う。

 

「いくぞ、乙女っ娘大魔王」

 ニヤけてるのを隠すため、雑に言って歩き出す。

 

「はぁい、だんなさまー」

 確実に、語尾に音符がついてる声色。

 ……こいつ。俺のニヤけ顔、気付いてやがる。

 

 

「なんでわかった」

「フフフ、だって。声が笑ってるんですもんっ」

「敏感なことで」

 まだ音符ついていやがるな。

 

「ほらほらだんなさま、こっちですよ~」

 右を並走してたディバイナ、突然ヒューっと飛んで行ってしまった。

「ほんっと。フリーダムな奴だぜ」

 ニヤニヤが収まらねえだろ、

 

 

 どうしてくれるんだよまったく。

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