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第八話。週の始めに朝からドビックリ! パート2。

「なんだか。寂しいご飯でした。しょんぼり」

「しょんぼりまで口に出すなよ……。んじゃ、俺学校行ってくっから」

「え?」

 

「異世界にはな、学校ってものがあるんだ。

朝から夕方まで拘束されて、いろいろしなきゃあならない

ハードワークがな」

「あ、いえ。学校そのものは知ってます。

どうして、わたしを。つれてってくれないんですか?」

 

「つれてけるか、お前みたいな否日常の存在。

目立ってしょうがない」

 

「そんな、どうして」

「え、ちょっとまて。なんでそんなシリアスにショック受けてるんだ?」

「わたしが大魔王として、どんな生活をしてたのか、

わかってくれてたと思ってたのに」

 

「いや、まあ。隠密スキルがカンストするほど

気配を殺しながら散歩する程度には窮屈だった、

ってのは聞いたけど」

「なら、わたしの気持ち。わかりませんか?」

「いや、あの。上目遣いされてもだな……」

 

 

「いやなんですっ」

 突然叫び出されて、俺はビクリと驚いてしまった。

 

「拠点で待つ生活は、もう。いやなんですっ!」

 その必死な様子に、俺は黙って話を聞くことにした。

 

「大魔王の時は、状況の報告に仲間が来ることはありましたから、

少しは寂しさが紛れました。でも、でもここは……ここでは

一人っきりになっちゃうじゃないですかっ!」

 そうだよな。こいつ、すごく寂しがりやなんだった。

 

「朝から夕方まで一人っきりだなんて……

わたしには……耐えられません……」

「ちょ、おい。泣くなよ……」

 

「だんな、さま。わたしも……つれていって、ください、ませんか?

ご迷惑は……かけませんから……」

 涙ながらに訴えて来る、掌サイズの少女。

 両手を胸の前でひしと組み合わせて俺を見つめるその姿に……。

 

 

「……はぁ、やれやれ」

 負けた。男って奴は、どうやら女の涙には

 勝てないようにできてるらしい。

「わかった、好きにしろ」

 

「……だんなさま」

 涙目の笑顔のディバイナに、口角がつられて緩みそうになるのを噛み殺す。

 

 

「いくぞ、大魔王。ついてこい」

 自分の人の好さに一息吐いて、俺は昨日と同じように

 家のドアを開けた。

 

「はいっ!」

 涙の残る声で元気よく言って、彼女は俺の横に飛んで来た。

 それを確認してから、俺はドアとその鍵を閉める。

 

 今日は忘れなかったぞ。忘れたらことだからな。

 

 

***

 

 

「はぁ」

 予想通りだった。教室の扉の前にいる俺だが、

 既にお疲れモードである。

 

「どうしたんですかだんなさま? お疲れのようですけど」

「誰のせいだよ……」

 学校に行くまでの路では、ちらちら視線を向けられても

 大して気にはならなかった。

 

 が、学校についてからと言うもの、

 突き刺さる視線の距離が近いのか、妙なプレッシャーを感じているのだ。

「さて、入りますか」

 ゆっくりガラガラと扉を横に開く。

 

 

「うぃーっす」

「だんなさま、挨拶は元気にしないとですよ」

 俺の存在を認識したか、教室内がにわかにざわつき始めた。

 その理由はどう考えても、俺の顔の右を

 ふよふよしている白黒娘だ。

 

「やかましい。そんなキャラじゃねえだろ俺。

ってか、そういやお前に挨拶してなかったな」

「あっ、そうでした。そうですよだんなさま、

おはようございます」

 

「今更だけどな」

「おはようございます、は?」

「あ、はい。おはようございます」

 しかたなく答えてやると、「よろしい」となにやら満足げに頷いた。

 

 

「おいおいどうした和也。フィギュア趣味にでも、目覚めたのか?」

 ズカズカと俺に歩み寄って来たのは、友人の胡桃栖博士くるすひろし

 この状況で接近するとは、

 読空力どっくうりょく ーー 空気を読む能力を俺が縮めた造語だ。 ーー

 がないのかこいつは?

 

「よ、クルミチャン君。これがフィギュア趣味に見える蚊?」

 空中に浮かんでるディバイナを、指さして言う。

「その、ヨンプラザ中野原君さんみたいな呼び方、

曲げる気 ないのな。……って、あれ?

そのフィギュア、浮いてるのか?」

 

「リアクション薄いな。お前のことだから、

『どっひゃー! なんだそのフィギュア空飛んでんぞおい!

どうなってんだよおいこれおいそれあそーれっそーれっ!』

ぐらいの、巨大なリアクションすると思ってたんだけどな?」

 

「お前ん中で、いったい俺は、どんな頭のおかしい奴なんだよ……。

って言うか、どっひゃーって 今時ギャグマンガですら

古いよそれって失笑されるレベルだぞ」

 

「あ、あの。その。じっと、みないで……いただけないでしょうか?」

 恥ずかしそうにそう言ったかと思うと、

 ディバイナは俺の後ろに隠れてしまった。

 そう、なにげないふりしてクルミチャン君はディバイナを凝視していたのである。

 

 

「ぎいいいいやあああああしゃああべったああああああ!!??」

 「ぎ」の時点で耳を全力で塞いだ。

「充分に頭おかしいだろそれ……って言うか

今更だろそのリアクション」

 

 まったく、朝から元気な野郎だ。

 教室中から、なまぬるーい視線を感じる。

 まあ、クルミチャン君抜きでもそうなってたろうけど。

 

 

「ちょっといいかしら?」

 俺達二人の下へ、そう言いながら女子が歩いてきた。

 こいつも読空力ないのか?

 

「なんだ? えっと……名前、なんだっけ?」

 ストレートの赤毛を腰まで伸ばしたこの少女、

 見た目のインパクトで覚えてはいるんだけど

 名前を覚えてない。

 

ひかりリンよ」

 呆れたような吐息交じりにでも、名前を教えてくれたのはありがたい。

仁武和也じんむかずや、あなたに……いえ。

あなたの後ろの女に用があるんだけど」

 

 とげとげしい空気を纏った言葉で、茶と黒のオッドアイの少女

 照リンはそう言った。

 

 

「ディバイナに? いったいなんの用だ?」

「だんなさま、おそばにいてください」

 最早固定位置となっている、俺の顔の右に戻って来るなり、

 ディバイナはそう真剣な調子で言った。

「どうしたディバイナ。照になんか、あるのか?」

 

「はい、だんなさま」

「単刀直入に聞くわ、掌サイズのお嬢さん」

 空気が張りつめた。

「なんですか?」

 ディバイナがすっかり警戒した調子だ。

 

 

「あなた。この世界の人間じゃないわね?」

「そうですよ。そういうあなたも、別世界の人間なんじゃないんですか?」

「なんだって?」

「おいおいどういうことだよピカリン?」

 

「ヒロシ。台無しになるから、その呼び方今は控えてくれるかしら?」

「お前もひろしって言うなよ……」

 あれ、こいつら下の名前で呼び合うほど親しかったのか?

 俺、こいつらがそんな風に親し気だったの、

 見たことねえんだけど?

 

 

「なあ、ところで。人間なのか? このサイズで」

「俺に聞くなよ」

「だってお前のこと『だんなさま』とか言ってるじゃねえかよ、

このちっこいのがなんなのかぐらいは知ってるだろ?」

 人間と言っていいのかはわからない。

 

 大魔王であることは、こいつが言ってるから確定として。

 

「ディバイナが勝手に言ってるだけだ。

俺は、こいつの旦那になった覚えは断じてない。

それとな。流石にあったその日に、

自分の素性を全部話すとも思えないぞ」

 大魔王であることは伏せて置く。

 

 言って信じられるかより、今この状況でその発言は

 危険な気がすると、俺の直感が告げているからだ。

「あったその日?」

「昨日現れたからな」

 

「おいおい、今年の七夕は否日常への扉でも開いてたのか?

俺もちょっくらあったぞ」

「そうなのか?」

 

「ああ。ピカリンって俺が呼ぶようになったのも、

こいつが俺のことを、ヒロシって呼びやがり始めたのも

それが理由だ。リア充になりやがったお前とは

天地の差だよ爆発しろコノヤロウ」

 

 照は、むりやり話を進めようとしたか

 咳払いで俺達の会話を止めさせた。

 

 

「残念ながら、あたしはこの世界の人間よ。

ちょっと、出生が人と違うだけのね」

「魔力があるのは、その『出生』が理由ですか」

「魔力、あるのか照?」

「魔力?」

 

「なるほど。流石に、巨大な魔力の固まりと、気配が似てるだけはあるわね。

完治されてるか」

「巨大な魔力の固まり……だんじょんのことか」

 

「ダンジョン?」

「仁武和也。あなたとくっついてるからかしら、

そのダンジョンをあなたが知ってるのは?」

「まあな。って言うか、フルネーム呼び やめてくれないか?」

 

「いやよ」

「ちっとは考えろよ……」

「そのダンジョンとやら、調べさせてもらうわよ。今日の放課後」

「はい、どうぞどうぞ。大歓迎です」

 ディバイナ側、張りつめてたのがいっきに和らいだ。

 

 ディバイナとしちゃ、怪しい奴からお客様に大変身だもんな。

 

 

「ずいぶん余裕ね、面白いじゃない。後悔するわよ」

「後悔は、させませんよ」

 シリアスな顔の照と対照的に、にっこり笑顔のディバイナ。

 お客とわかってほくほく状態なんだろうな。

 

「仁武和也、ヒロシ。付き合ってもらうわよ」

 言うだけ言って、照は俺達の返事を待たず背を向けて、

 自分の席に戻って行った。

 

「わかった」

 背中に答える。

 次のチャレンジ、いつにしようかまだ決めてなかったんだ。

 ちょうどいいぜ。

 

「なんで俺が?」

 一方、まったくわけのわかってないクルミチャン君は、

 困惑しきりだな。

「安心しろクルミチャン君。命に危険のない、

安全楽しいだんじょんだからよ」

 

「そういう問題じゃねえだろ? って……お前、

ダンジョンとやらの中身。知ってるのか?」

「ああ、少しはな。しかし、まさかこの世界の人間にも

魔力持ちがいたとはなぁ」

 

「予想できる奴がいたら、そいつは神かそれに近いなにかだぞ。

まあ、そんな予測は、立てられそうにない雰囲気だったけどな神様」

「どういうことだ?」

 

「実はさ。昨日、神様にあったんだ」

 サラっと言いやがったよこいつ。

「……お前こそ、いったいなにがあったんだよ?」

 本当に今年の七夕は、否日常への扉が開いてたかもしれないな。

 

 

 

 俺の疑問に答えるかのように、HR開始を告げるチャイムが

 校内に響き渡ったのだった。

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