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第一話。七月七日が繋いだ物は? パート2。

「んもぅ。殺す気ですかっ!」

「おお。大凡地上80cmの机までの距離を

垂直飛び一回で戻って来るのか。

たしかに、大魔王かもしれねえ」

「どんな基準ですかっ!」

 

 なにやらご立腹のようだ、このたぶん15cmぐらいの大きさの小さな大魔王は。

 ドンドンと机を踏み鳴らしている。

 

 

「って、おいやめろっ、震脚の部分に罅入ってるだろ!」

 なんちゅう馬鹿力だ。

 このサイズで、震脚しただけで、かなり頑丈なはずの机に罅が入るって。

 マジで、大魔王かもしれねえ。

 

「で、どうしてこうなった のか、でしたね」

「涼しい顔して無視すんな」

 なんでどうしてこうなったをわざわざ単体で発音したんだ?

 

「それはかろうじて遅れた伝言の通りです。

来る日も来る日も、大魔王としておかしな強さの

勇者チートたちに日替わりで殺されるんですよ。

あんまりじゃないですか」

 

 あれ作品のタイトルじゃなくて、マジでこいつの

 メッセージだったのかよ。

「来る日も、ってことは。かなりの数殺されたってことか?」

 

「はい、それはもう。初めは倒されて気を失って、

でも それがまるで夢だったみたいに、気が付けば

魔王の城の玉座に座ってました。

 

で、夢だと思った最初の茶番しぼうとは、どうも相手が違うんですね。

で、またわたしはボッコボコにされてあえなく撃沈。

 

そしてまた、次の勇者チートのフルボッコタイム、以下ループ。

もう50辺りから茶番しぼう回数数えるのやめました。

めんどくさいので」

 

 怒涛の愚痴。むしろよく、五十回も殺されたの数えたな。

 凄まじい根性。

 

「震脚連打やめろよ、そんな威力じゃ机全体に被害が出る。

んで? なんで、そんなことになってんだよ?」

「チート。転生。俺TUEEEつえええ

 恨めしそうな声で呟かれる言葉。

 

「は?」

 目が点になった。だがなるほど、そうでもなきゃ

 フルボッコなんて言葉は異世界の存在らしい大魔王には

 思いつきようもないか。

 

 

「転生チーレム俺TUEEEストーリーが

溢れかえったせいで、幻想が幻想たりえないわたしの世界には、

そういったチーレムさんたちが、入れ替わり立ち代わりに現れるんです。

 

で、その結果。

魔族の中で一番強いってだけのわたしが、やり玉に挙げられて、

死ぬわ死ぬわ。

 

本来別の存在であるはずの各魔王に、

わたしはその名前と姿に変えさせられて、

台本通りにいろんなことをやらされてます。

 

あんなことやこんなことまでイタシてしまう人もいて。

わたし、自分の意志で初めてが選べなかったんですよ。

このつらさ、乙女じゃないあなたにはわからないでしょうけど」

 悲しそうな顔をするどうみても人間の少女、のフィギュア。

 

 

「神様とやらがいるんでしょうね。

わたしに不死身の肉体と、勝手な変身能力を与えやがりました存在。

一発グーパンでもしたいところですが、相手の存在が確認できないので、

泣き寝入って死んでます」

 

 ふてくされてしまった。

 ……なあ、今。さらっと『やがりました』とか言わなかったか?

 

「そいつは気の毒だな。……で、大魔王なんかやめてやるー、

ってことか?」

「そうです、そのとおりなんですy

あ、ちょっと ごめんなさい」

 そう言うとディバイナは一つ咳払いをする。

 

 続けてゆっくりと瞳を閉じて深呼吸。

 なんだ? キャッチフォンでも入ったような話のブツ切り方したけど。

 

 

『いつまで待たせるつもりだったんだ貴様ら』

「ぇぁ?」

 いきなり声色が別人の物になった。

 目の前の15cmが途端に、威厳はあるけど、

どこかコミカルな雰囲気の男にかわった。そう錯覚するような声。

 

 腰に手を当て 足を肩幅に開いて、

 ひっくり返るんじゃないかってぐらい、

 のけぞるその様は、まさにふんぞり返っている。

 だが、目は閉じたままだ。

 

 

『のんびりゆったりまったりとハーレムライフなんぞ楽しみおってからに!

このワシが、貴様らのようなリア充、まとめて葬ってくれるわ!』

「あ……あの、大魔王さん殿?」

 

「ごめんなさい、今日の勇者ご一考様チーレムさんたちが来たので、

台本通り決戦の口火を切りました。ああ、台本は勿論

このチーレム小説の、作者さんの書いたストーリーのことです」

 目を開けてそう解説する。どうやら目の開閉がコネクトのオンオフらしい。

 

「わかるんですよ、彼等がわたしの世界に来た時点で

お話しの細部に至るまで。まるで物語を

頭にむりやり叩き込まれたように」

 ふっと、諦めたような一息。

 

「そうなのか」

 無難な相槌はするものの、そうでなきゃとっさに

 勇者に対するリアクションなんて出て来るわけがないな、

 と納得はしてる。

 

 しかし、むりやり頭に叩き込まれるのか。

 できがお察しな作品の魔王にさせられたら、

 こいつはどんな気持ちでられるんだろうな。

「そうなんですよ。

『グワーッ! な、なぜだ。こんな軟弱どもに、

このワシが追い詰められるとは』」

 どうやら状況は常に感知してるらしい。台詞の直前に、

 慌てて瞳を閉じた。

 

 グワーッの時には芸細なことに、しっかりと

 仰向けに倒れてまでいる。役者だなぁ。

「『ええい! こうなれば真のすがt』」

「どうした? 変身しないのか?」

 

「『ちょっ いやいやまって! 変身のフリ中に

呪文詠唱とかナイワー! マジナイワー!

ギャアアアアア!!』」

 

「……」

「……」

 なんとも言えない空気だ。

 

「もう……いいのか?」

 ゆっくりと目を開けたディバイナに、俺は恐る恐る声をかけた。

 はい、という頷きが返って来る。

 

「今ので今日の抜け殻だいまおうは死にましたので」

 続く言葉には、流石にちょっと思考が止まった。

「……お疲れさま」

 なんとか出た言葉に、ありがとうございますと

 白髪はくはつの大魔王は頭を下げた。

 

 どうやら今日のチーレム作者は、戦闘パートが苦手だったようだ。

 もしくはそのやられ方を見るに、戦闘パートを

 ギャグとして割り切ってるか。

 

 

「でもさ。これって、逃げられてなくね?」

「毎日死ぬ感覚を味わうよりは遥かにましですよ」

 疲れたような息といっしょに、そんな愚痴めいたひとこと。

 

「そういうもんかねぇ。しっかし、なんであんな

アテレコみたいなまねしなきゃいけねえんだ?

めんどくさいだろ?」

 

「言うなれば、わたしは大魔王の本体 コアですから、

声はわたし自身が出さないと、無言のなにかがなんかやってるだけ、

になってしまうんです。それは台本に逆らう行為ですし

読者さんも面白くないと思うんです」

 

 やらされてることなのに台本には逆らいたくないのか、

 変なところでまじめだな。

 それに、自分が物語を読まされてるからか、読者視点を持ってるようだ。

 

 

 面白えな、こいつ。

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