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第六話。はじめてのだんじょん! その4。 パート1。

こいつらいつまでもぐってんだよとお思いの皆さま、お待たせいたしました!

作者自身がそう思ってましたけどもw

「はっ!」

 巨人の右太腿の紅の印に向けて、いけると踏んで

 強化された身体能力を当てに、助走せずに大ジャンプ。

 

「よしっ!」

 ベキリッと言うかなり不穏な音を立てて、

 俺の踏み込みを受け止めた、ゴーレムの太腿。

 そのまま更に体重をかける。

 

 気合の呼気を音だけ放ち、初撃でついた体の紅に向けて、

 忍者のように ーー ただのイメージだけどな ーー

 脚力だけでクライミング。

 

「ぐわっ?!」

 紅に足が付く僅かに前。俺は、右から来たなにかに、弾き飛ばされた。

「ぐぅっ!」

 なにが起きたのか、理解するよりも前に地面に激突。

 

「うわっ?」

 その衝撃で、軽くワンバウンド。

 更にバウンドからの着地余波で、左にゴロゴロと少しの間転がされ、

 ようやく止まった。

 

「いってぇ」

 元来たであろう方に顔だけ向ける。どうやら、今の一撃で

 けっこうな距離を離されたらしかった。

「今俺、格闘ゲームもびっくりな吹っ飛び方しなかったか?」

 仰向けのままそう独りごちた。

 

 

「だんなさまっ!」

 必死に呼びかける声に、

「大丈夫だっ!」

 そう彼女の声の遠さを考えて、大声で返した。

 

「このぉっ!」

 怒り心頭、そんな声の直後閃く紅。

 紅眼レッド・ガンは、簡単に射撃できるって言ってたか。

 とはいえ、自己申告であんま打てないって言ってたろうに。

 

「大丈夫だ、っつってんだろ。大げさだなぁ。

って言うか、無害ダンジョンを標榜してた本人があんな必死じゃ、

看板に偽りありって誤解されんぞ」

 あったばっかりの俺にあんなに必死になれるお人よし。

 そんな大魔王に口角が緩んでた。

 

 一回転右に転がって、その勢いで起き上がる。

 このまま転がってんの、かっこつかねえしな。

「無茶すんなよへなちょこ大魔王」

 相変わらず、俺の顔の高さをキープしてるディバイナに近づきながら、

 軽口をぶっ叩いてみる。

 

「だっ誰がへなちょこですかっ! わたしはあの世界で、

魔族最強なんですよっ!」

「ああ、そこにプライドはあるんだな」

 意外な反応。だけど、あれだけ大魔王って物に責任持ってる奴が、

 雑魚扱いされて怒らないってのも、おかしな話か。ほっとしたぜ。

 

 

「でもお前さ。もう大して魔弾打てないって言っただろ?」

「そ、それは。だって、世界を超えてそのままゴーレママ召喚して、

弾幕打ってですもん。わたしがへなちょこなんじゃないですもんっ!」

 プイっとそっぽ向いてしまうだいまおうさま。

 

 この、人が言葉を続けようと舌のと同時にっ!

 なんだよ、母親タイミングの次はネタかぶりタイミングかよ。

 

『それに、体の大半をあちらの世界に置いて来ていますものね』

 フォローに入るゴーレママ。どうやら二人には、

 小さくついた俺の溜息は、聞こえてないらしい。

「そうです、そうですよゴーレママ。もっと言ってくださいっ」

 顔をこっちにギュインっと戻しながら、わーわー騒ぐちっこいの。

 

「はいはいわかりました。俺がわるぅござんしたよ」

 めんどくさくなったので、てきとうに答えた。

 俺別にMP切れだからって、

 それを攻めたかったんじゃないんだけど、

 もう訂正できる雰囲気じゃねえし。

 

 バカにしてるってことでいいや。

 

 

「むぅ」

 納得行ってないらしく、ほっぺた膨らませてるが、

 むしろそんな顔してえのはこっちだ。

「さて」

 気を取り直す。

 

「さっきはなにかに弾き飛ばされたけど、

今度はそうはいかねえ……!」

 改めてゴーレムを見れば、間合いを詰めることをやめて

 シャドーボクシングなんぞやっている。

 挑発のつもりなんだろうかあれは?

 

「目印、今さっきの射撃でついたのは……左太腿の付け根か。なら」

 顔までのルートをイメージする。一つ頷き駆け出す。

「右の太腿に取り付いてっ!」

 さっきと同じ場所に、足を叩きつける。

 

 ビキャリ。さっきよりも、より嫌な音が鼓膜を叩く。

 けど、気にしてる場合じゃない。次は!

「左太ももの付け根に移るっ!」

 踏み込み、軽く左上へ。

 

 パキリ。軽目の破砕音。

 どうやら、結界がまだ強めに残ってるらしいな。

 おそらく、だけど あの紅眼レッド・ガンは、

 バリアを中和する効果があるんじゃないだろうか?

 

 そうでもなきゃ、最初剣を弾いたゴーレムの体を

 紅の部分だけ切れた理由が説明できない。

「次は体に」

 少し右上に広がる、紅のマーカーを見たその時!

 

「ぐっ!」

 なにかに体を掴まれたっ!?

「な にぃっ!?」

 グググっと、少しずつ体全体に圧力がかかって来始めている、らしい。

 

 

「やらせませんっ!」

 くぐもった叫びが聞こえた。と、思ったら

 背後からベキャリっと粉砕音が。

「ぐ、うぅっ。くそ、素材は、硬さとは、無縁の、くせっ! にっ!

なんだっこの力強さはっ!?」

 

 どんどんと、外から力が加わって行く俺の身体からだ

 ……なるほど。俺が腰を持った時、ディバイナは

 こんな感覚を味わってたのか。

 

「ぐ、こ、のぉっ!」

 全力で暴れようとしてんのにっ、もぞもぞとしかっ! 動かねえっ!

「だんなさまをっ! 離しなさいっっ!」

 直後にくぐもった甲高い音。これは……さっきのチャージ音か?

 

「ぐわぁぁっ?!」

 気付いた時には、また空中に放り出されていた。

「ぐうっ!」

 着地した瞬間に俺は、無意識で床を殴って転がされるのを防いだ。

 

 けど。逆にそれが、激突の衝撃を身体しんたいに行き渡らせることになって、

「ぁあぁあぁ!」

 痛みに転げまわることになった。

 

「だんなさまっ大丈夫ですかっ!」

 ちっこいのがすごい速度でこっちに飛んで来た。

「っってぇぇ……!」

 なんとかゴロゴロを中断することができた。

 けど、軽く息が上がってしまった。

 

「なん、だったんだ、今の、は」

 意味がわからない圧力のせいで、動悸が収まらないっ。

「だんなさまを顔まで登らせまいと、ゴーレミートが

だんなさまを握りつぶしにかかったんです。不貞なことに!」

 怒りに任せて、って感じで右手で床を殴りつけたディバイナ。

 

 こ……こいつ、小指ぐらいの太さの腕から

 繰り出したパンチだってのに、それでも床から

 小石が飛び散ったぞ……マジかよ。

 

「おちつけって、拳砕けるぞ」

 スっと手を差し出して、その小さくて細い腕を

 人差し指と中指の間で挟んで止める。

「……ごめんなさい、取り乱しまして」

 俯いて言う。見るからにしょんぼりしてしまった。

 

 

「いや、いい。で? 俺はどうして放り出されたんだ?」

 半身を起こして問いかける。

「ああ、それですか? それは、わたしが紅眼レッド・ガン

こう しゅ つ りょ く の魔弾を、僅かな時間差で打って、

ゴーレミートの左手を破壊したのですっ」

 

 えっへん、と口に出しながら胸を張る大魔王……のはずのマスコット。

 くるくるテンションも表情もかわるなぁ。

「そんなに高 出 力が気になるのか?」

 

「フフフ。そういうだんなさまこそ」

 楽しそうに笑う手の平白黒。そんな少女に釣られて、

 こっちも表情が緩んでしまったぜ。

 

 

「んじゃま、三度目の正直と行きますかね!」

 跳ねるように立ち上がった俺に、わっとびっくりしたような声。

「こっちは手の平サイズなんですよ、

いきなり動かないでくださいだんなさまぁ」

 

 だだをこねるように言いながら、

 いつもの高さまで上昇して来るディバイナに、

「勢いぐらいつけたっていいだろ?」

 とにべもなく切り返す。

 

「それは……そうですけど」

 もごもごと不満そうに言うのに、ふっとまた表情が綻ぶ俺。

「たしかに。綺麗に手がなくなってるな」

 ジャッ、ジャッ、ジャッとこっちに歩いて来てるゴーレムを見れば、

 言葉の通りになっていた。

 

 足音も床踏んだ時の衝撃も、ずいぶんと軽くなったな。

 踏んだ時なんて、もう揺れが起こらない程度だ。

「だいまおうさま」

「えっ? あ、はい。なんですか?」

 なんでびっくりしたんだ?

 

 不意打ちなんてしたタイミングじゃ、とってもなかったぞ?

 

「顔面全体にあかいの、打てるか?」

「はい、いけます」

「よし、頼む」

 

「はい。もしかして結界中和能力があること、

気付いたんですか?」

 驚いた声で訊いて来たから、「まあ、な」と

 ニヤリしながら肯定する。

 

 

「すごいですっ! 流石はだんなさまっ!」

 両手を胸の前で組んで大喜びだ。ディバイナの方見なくても、

 パンって音したからわかった。右ずっと向いてると

 首痛くなるから、見てらんないんだよ。

 失礼って言わないでほしい。

 

 

「簡単なことだろ。一太刀目で弾かれた相手が、

あれが当たったところは綺麗に斬れたんだから、

違いはそこにしかないじゃないか」

 

「初めての巨大な相手との戦闘で、そんなことをすぐに気付けるのは

やっぱりすごいですよぅ」

 聞くからに目がキラキラしてる声だな。

 

「キラキラ……か」

 敵の目当てのパーツを見上げて、

 俺は口の中で音を転がした。

 

「なんですか?」

「いんや、なんでもねっ!」

 ね、に合わせて駆ける。

「少し打つまでに時間がかかりますから、そのつもりでおねがいしますね」

 

「わかった。って言っても一秒かそこらだろ?」

 懲りずにさっきと同じルートを通る。右足に乗った時に、

 ついに、バギリミシシ、って罅が入る音がはっきり聞こえた。

「だっ!」

 バギャリ。

 

 左太腿への跳躍をした時、

 明らかに今までより鈍い音がした。

 左太腿に着地して、体へのルートを確認。

 

 目の端に右足の状態が映ったんだけど、

 太腿の前面が割れて、黒茶色の『中身』が

 露出しているのがわかった。

 

 こりゃ、あんまり阻止され続けてると、

 上りにくいかっこうになっちまうな。

 

 

 

 今回でいければいいんだけど……。

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