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修学旅行

作者: 独楽

学生の頃、楽しみな行事に旅行がありました。

家族と行くのとは違い、クラスメートたち、学校の先生方と行く泊まりの旅行。

修学旅行は考えただけでもドキドキするイベントでした。

高校2年の9月、うちの高校はこの時期を修学旅行に決めていました。

旅行先は奈良京都。

朝早く地元の駅に集合して、東京駅乗り換えて新幹線。

1日目は奈良、お寺や有名な史跡巡って泊まりの京都旅館で1日目は終わりです。

2日目は、クラスメートのグループ班あらかじめ予定を立ててまわる観光地。

友達とのおしゃべりも尽きず、数多く写真も撮りました。3日目もクラスメートごとにまわり、記念写真などを撮って帰路です。あっという間の二泊三日。

楽しい思い出は、帰ってからクラスごとの廊下に貼り出される写真にも

現れていました。

番号が振られ、数十枚〜数百枚の写真

小さなメモが用意され、それに番号を記入して希望写真を注文しました。

「おーい、写真注文今週末までだからな、早く出せよ」

担任の急かす声、他のクラスも見比べて注文数はかなりになるのでしょう。

その中で、暗く沈むクラスがありました。

「どうしたの?」

廊下で、知り合いのクラスメートから話を聞くと

「あのね...」

廊下に貼り出された写真をみると、どれもピンぼけのようになっていて

さらに黒い影がところどころに入り込んでいました。

「なにこれ..酷いね?先生が撮ったやつ?」

「ううん、それもあるけどクラスメートや写真係の子のも全部がそうなの」

そう言われれば、満遍なく様々なアングルで撮られています。

女子だけとか男子だけとか、個人に限られたものでもありませんでした。

ピンぼけもさる事ながら、黒い影も同じ向きとか形ではありません。

「うーん、残念だよね」

取り返しのつかない写真ですから、その写真のクラスが沈むのも仕方ありませんでした。


「ねえ..ちょっとさあ」

その子は、言ってその写真を貼ってある模造紙を外しました。

「え!?ちょっとやばいって」

「いいの、いいの!ちょっと机かして」

強引にクラスへと入り、机をいくつか向い合せにして

写真が貼ってある模造紙が、全体に置けるようにしました。

そして、徐に写真を剥がし始めたのです。

一枚、二枚全部を綺麗に剥がすのは、以外と大変でした。

そして今度は、その写真をまた貼り直したのです。

ぶつぶつと独り言をいいながら

「あ..これはこっち、これはそっちね」

という風に...

「出来たあ」

言って彼女は、再び廊下へその写真を持って

貼り出しました。

クラスメートも何ごとかとどやどやと廊下へ見にきました。

そして、貼り出された写真を見て

クラスメートの反応は....

絶句するもの、悲鳴をあげるもの、泣き出すものまでいました。

失礼してしまいますね

修学旅行の記念写真だというのに、大事なクラスメートが写った写真ですよ。


「この写真、自殺した奈々子じゃない」


廊下に貼り出された写真は

ピンぼけではありませんでした。

黒い部分もちゃんと意味があったのです。

春に自殺したこのクラスメートの木村奈々子がそこに写っていました。

数百枚の写真の黒い部分をそろえ直すと、一人の少女の

苦悶とも恨みとも思えるような、まっすぐと前を見据える顔が

アップで浮かび上がったのでした。


「修学旅行楽しかったよね」


写真が、そういうとにやりと口の部分が黒くゆがみ

そして、消えました。


木村奈々子は、新しいクラスに馴染めずに春に自殺した子。

クラスの誰も綺麗に変わった写真を買う事はできませんでした。







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