ヤケドガミ
皆さんもくれぐれも放火などと愚かしいことは夢にも思わない事です。
さもないと――――――――
深夜2時 某県某所の神社にて。
「うわっ、また火事だ。」
「最近多いよな。」
「外人の仕業らしいぜ? 日本の伝統や歴史を破壊したいんだとよ。」
「おっそろしい時代だな。」
ここ最近数週間おきに伝統ある神社に不審火が相次いでいる。
市井では外国人が多く発見されたことから外国人の犯行だという噂が流れていた。
幸い、神主を含めこれまで誰一人死傷者は出ていなかった。
ここは不破火除神社。
古くから続く火災を避けて火傷を治すという謂れのある神社である。
確認できるだけでも鎌倉の昔、この辺りにあった青銅等の鍛冶場等が多かったとされる資料の中に、
~~なる者、家焼けて自身も大火傷を負い、役立つこと会い合わなくなり、
7歳の時に神の元に返されることになったが、不破火除の神その傷みを忽ちのうちに直し、
後にその者大層優れた職人となり、神の恩に報いて神社の再建に寄与したり。
というものがある。
その他にもこの神を信心深くしていた者の家近くまで延焼してきた火事が、
そのものの家の前ですぱりとその火の足を止めたという話もある。
しかし現在では、古い時代を生きたお年寄りが参拝に来る他を置いて日常的に人通りは無く、
時代の流れを感じさせていた。
そんな不破火除神社に3人組の外国人の放火魔たちがやって来た。
彼らは噂である通り、日本にある歴史建造物に火を放ち母国で自慢するために此処にやって来たのだ。
「ここも古そうな神社だな。火を付けよう。」
そう3人の中で一番背が低い1人が言うと後の2人も、
「そうしよう。」
「そうしよう。」
と賛同した。
「日本人の女を誘拐して神社で犯した後、縄で縛ってソイツごと燃やしてしまおう。」
そう指の数以外にも色んなものが足りない男が言うと、
「そうしよう。」
「そうしよう。」
と後の2人も賛同した。
しかし、一番顎骨が浮き出た男が言った。
「だが、この辺りには婆しかいない。放火した後遠出して女学生を拉致しよう。」
それに対して後の2人も、
「そうしよう。」
「そうしよう。」
と賛同した。
そして、3人が神社の社の襖を蹴破り土足で中に足を踏み入れて、
大黒柱の周りに3人で囲んで柱に用を足した後、持ってきた新聞紙をガソリンに浸して火を付けた。
最初はそれほど広がらなかったものの徐々にその火力を増した炎はいずれ広がりを見せることを容易に想像させた。
3人はそれを見て満足げに帰ろうとすると体が動かない。思わず喚きだしてしまった。
しかし―――――――
「ダマレ。コノアクニンドモガッ!!」
天井の方から恐ろしい声がした。
その事に怯えて3人は泣き出したが声の主はそれを許す様子が無かった。
3人は体が勝手に動き出してしまい、先ほど小便をした柱に囲むように抱き着くと互いの手を握りしめた。
そうしている間にも炎は広がりを見せていく。
「モハヤ、オトロエタチカラデハホノオヲケスコトハデキン。
ユルスマジ。トモニモエツキルガヨイ。」
その声の意味することは3人を燃える神社と共に灰に変えるという事。
3人は高々日本の神社に放火する程度の事でどうして自分たちが死ぬ羽目に合わなくてはならないのかと、
理不尽だと泣き叫んだ。
しかし、3人とも泣き真似が得意であったが、誰一人声の主を絆すことはできなかった。
炎は3人を弄ぶかのように、3人の周りに近づいてきてはその進みを止めることを繰り返していた。
そうしている間に出入り口に先に火が回って崩れ落ちる事となった。
最早逃げることはできない。共に燃え尽きる運命を待つだけだ。
一方声の主は、焼けていく神社を感じながらこれまでの事を思い出していた。
自分が火傷を治した少年は立派に職人となり、
生きているとも称されるほど精巧に作りこまれたこの神社のご神体の容れ物として、
竜の器を作ってくれた。
火事が広がった時に当時厚く多くの人から信心を得ていながらも、
全ての人を火事から救いきれなかった後悔。
そして家族を失った信者の一人がその恨みの為に神社に火を付けたことを納得して受け入れようとしたものの、
大きく燃え広がる前に未然に防がれてしまい、捕えたものに哀れにも殺されてしまうのを見届けた事。
その火事の生き残りが、竜の器の職人の子孫と結婚し、
助かった感謝として火事の焼け跡を再建してくれたこと。
火傷を負った子供を助けたが、放蕩生活に身を堕としていたが、
大分経った後に心を入れ替えて人助けの為に身を費やしたこと。
空襲で逃げてきた人々と町が焼かれる様を見届けた事。
その声の主、不破火除神は嘗てを振り返り、己と人々の栄枯盛衰を思い出し、
そしてその心を決めた。
もはや自分の時代は終わった。
ならばせめて人々の信仰を受けてきた由緒ある神としてその最期を終えんと。
「トオキチヨリキシヒトノコラヨ。ワレハモエツキル。コレフセグコトモハヤアタワズ。
ヒヲトオザケケシサルソノチカラスデニナキ。
シカシ、トオキチノヒトノコラヨ。ナンジラニヒノキズヲトオザケルチカラコソアリケル。
サイゴニタスケルモノガワレニヒヲツケニキタトオキチノヒトノコラトハオモワザリケリ。
シカシ、コレモマタサダメカナ。」
その直後奥の方で何かが割れる音がした。
そしてそれ以降その声が3人に届くことは無かった。
3人は体の自由が効いていたが、それに気が付くこともなく、今度は恐怖故に動けなくなっていた。
そして3人の身体を炎が撫でると焼けつくような熱さこそ感じるものの、
その炎が3人を焼き尽くすことは無かった。
しかしそれも最初の間だけで、次第に火傷を負っていってはそれが治るというものに変わっていき、
焼けてから治るまでの時間はどんどんと広がって行った。
3人がもうダメだ。そう思って諦めた時、天から救いが舞い降りた。
即ち、消防車の消火放水であった。
その後焼け跡に人がいないかと消防隊が捜索に入った中に、火傷一つ負っていない3人組の外国人が発見された。
しかしその3にんのいずれも、
「「「フワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨ―――――――――――」」」
その心がやられてしまっていた。
神と言えど肉体の火の傷を治すことはできても、
恐ろしい炎の中で発狂した精神の火の病を直すことはできなかったのである。
フワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨフワビヨ