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ブーストアッパー (旧版)  作者: クマ将軍
第一章 始まりのボーイミーツガール
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第3話 選択肢のない人生の転機

 水島姉妹の会話を聞いたその日の夜。

 俺の携帯に水島沙織からのメールが届いた。


(何故俺のメアドを……って監視対象だから調べてあるのか)


 推理能力を限界まで強化した結果、些細な疑問はすぐに解決できるようになった。

 これにより限界まで強化した所は多少の成長を得られることが分かった。

 もっとも限界に届くまでかなりの集中と負担を強いられることになるため、滅多なことでは使わないが。


 閑話休題


 俺はメールの内容を見た。中身はこうだ。


『斉藤弘樹さん、始めまして水島沙織です。

 突然のメールでビックリしていると思いますが、落ち着いてください。

 もっともこのメールを見ている時点で落ち着いていると思いますが。

 さて用件を言います。明日の放課後体育館裏に一人で来てください。

 あなたと今後のことでお話ししたいと思います。ではよろしくお願いしますね』


「…………」


 メールの内容は見る人によってこれから別れるカップルか、果たし状かと認識出来る内容だった。いや、流石にそれはないか。

 ふと湧き上がってくる悪戯心。俺はこのメールに返信した。


『えっ?破局するの?』


 メールを返信してから一分後。メールが帰ってきた。


「あー……」


 そこには200文字以上行く分量に内容はひたすら俺が返信した内容の否定が綴られていた。


「かなりの初心なんだな……」


 ニヤニヤしながら途中まで読んでいるとメールが来た。送り主は水島沙織の妹、水島真紀だった。


『姉ちゃんをからかうな。収まるまで大変だったんだぞ』


 ふむ、試しに直感を強化してからかうか。俺は自分の直感のままに文章を打った。


『ムッツリの癖に』


 なるほど。水島真紀はムッツリなのか。さて、どう反応するか楽しみだ。


 返信してから一分、いやそれ以上の速さで帰ってきた。

 内容は姉のメールとほぼ、いやそれ以上の分量でこれまた姉と同じひたすら否定することが書いてあった。


「図星なんだな……」


 俺はこの時、明日が自分の人生の転機になるということを忘れて、眠気が来るまでひたすらに水島姉妹のことをからかった。




 SIDE 水島沙織


『メトリーよ、今回の作戦、相手に伝えるつもりだろう』


 定時報告の時間が来たので任務の担当上司に連絡したら、開口一番がこれだった。


「ええ、明日彼に作戦のことを伝えます……」

『?なんだメトリー。元気がないぞ』


 それもそのはず。あれから監視対象である、斉藤広樹にからかわれて三時間経った。

 最後に来たメールが「眠いからお休み。また明日」だった。

 散々からかわれて最後に来たメールがこれ。サイキと一緒に騒いでいたら隣の家から苦情が来た。私達は悪くないのに。

 今サイキは自分の部屋で寝ている。あれだけからかわれたんだからしょうがない。


「いえ、何でもありません。明日伝えることはやめませんのでご了承ください」

『大丈夫だ、問題ない。分かっていたことだからな』

「分かっていたとは……?」

『言葉通りの意味だ。学園長は私の言葉を押し切って、君達が対象に接触することまで予知していた』

「そうですか。学園長のことですからそれぐらい知っていても問題ありませんね」

『報告は以上か?』

「はい以上です」


「ハァ……疲れた……」


 定時報告を終え、覚束ない足取りで自分の部屋に戻る。

 散々からかわれた恨み、どう晴らそうか。そう考えながら眠りに着いた。




 SIDE ???


「すまんな、メトリー。お前にはまだ言ってないことがある。

 学園長から聞かされたのはこれだけじゃないんだ……

 明日、無事でいてくれ……」




 SIDE 斉藤広樹


「ん〜なんて清々しい朝……」


 ―――でもなかった。


 滅茶苦茶雨降ってた。何故だ。俺が何かしたのか。

 昨日行った所業を棚に上げて、俺は朝食を取った。


「今日は一日中雨が降ることでしょう。外出する時は傘を忘れずに出かけましょう」


 テレビの天気予報を見て、朝食を食べて、学校に行く支度をする。

 通学途中で友人と遭遇、馬鹿話をしながら学校に向かう。

 先生のホームルームを聞き、授業を受けて、昼飯を食べて、授業を受ける。

 ここまでが俺の日常。そして今日までが俺の、普通の人生。

 俺は漠然と予感していた。今日の放課後、それが俺の人生の転機。


「なんだ広樹?そんな黄昏ているような顔をして」

「……なんだよそのような顔って」

「お前にそんな顔似合わねーよ!」

「なんだと!?俺はどんな顔も似合う男なんだぞ!」


 多分これが友人との最後の馬鹿話。


「広樹、お前これからどうする?」

「今日は女子からの告白を受けるために学校にいなきゃいけねぇんだよ」

「ちょ、マジか!?俺も着いて行っていいか!?」

「知らないのか?人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて不能になれって言う言葉が」

「馬に蹴られて地獄に落ちろだろ!?いやそれでも碌でもないが!」

「ということでお前は一人で寂しく帰れ」

「酷くね!?まぁいいやそれじゃまた明日な!」

「おう!……さよなら、だがな」




 そんな覚悟を持った俺だが体育館裏で一時間待っていた。




「いやぁーめんごめんご待ったか〜?」

「おいムッツリ姉妹これはどういうことだ」

「はて?何のことかしら?別に私達は貴方にからかわれた恨みなんてありませんよ?」


 こいつら……。よっぽど根に持っていたんだな。


「さて単刀直入に言うぜ広樹」

「さっさと言ってくれ」


「俺達と一緒に化け物共をボコろうぜ!」


「いや何言ってんの?」

「俺達は本気だぜ?」


 そうやって胸を張る水島真紀。よくみるとコイツの胸でけーな。姉と大違いだ。

 いや、実のところコイツは本当のことを言っているのだと分かっている。

 しかし、人間は自分の予想の斜め上の出来事に遭遇すると即座に否定する生き物だ。

 俺はあまりの斜め上の発言に咄嗟にああ言ってしまったのだ。

 ふと、姉のほうを見ると右手を耳にあてて何か切羽詰って話している様子だった。

 手に何も持っていないことを見るとあれも一種の超能力なのか?


「なんですって!?」

「どうしたんだ!?姉ちゃん!?」


「エネミーが複数体、この町に攻撃しているわ……!」


 ……なんだって?

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