表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/25

~守護者との契り~

「……守護者?」

御琴は、白夜と名乗った男を階段から見下ろしながら呟く。

───"守護者"。それは巫女を妖から守る存在。

その責任と役目がゆえに、守護者となる者は極めて巫女に従順(じゅうじゅん)でなおかつ、巫女を守るだけの力がある貴族の妖のみとされている。

しかし、守護者が守護者として巫女に仕える場合、巫女自身の合意が不可欠である。

守護者は、自らの意志で守護者として()ることを望み、巫女は、己の守護者が守護者で在ることを望む。

両者が自ら望まなければ、契りは結ばれないのだ。

しかし今、御琴が白夜を守護者として認めるのなら、(ちぎ)りは成立する。

だから御琴は────


「断る」


そう、告げた。

「大方、お母様が寄越した守護者というところか……。君が何を言われてここに来たのかは知らないが、わたしに守護者は必要ない」

目を見開く白夜を真っ直ぐと見つめ。

強い口調で言い放つ

「……そう、ですか。なら……」

しゅんと目を伏せる白夜は、スーツの内ポケットをごそごそと探り、取り出した何かをこちらに差し出す。

「これで僕を……」

「待ちなさい」

思わず白夜の言葉を遮った御琴は、差し出されたそれを見て顔を引きつらせる。

「なぜ短刀(たんとう)を……」

「御琴様の守護者としてお側で仕えることが出来なければ、僕の生きている意味はありません!どうかその手で僕を……!」

御琴は頭を抱えた。どうやらこの白夜という男は、そうとうな変人らしい。

「命を粗末にする人間は嫌いだ」

「申し訳ありません……。ですが僕の存在意義は御琴様にお仕え……」

「だがそれも断る」

「っ……」

御琴は(きびす)を返し、

「とにかく、わたしに守護者は必要ない。……悪いが他をあたってくれ」

一歩踏み出したその時。


「あれぇ~?」


可愛らしい声が聞こえ、御琴は背後を振り返る。

歳は自分と同じくらいだろうか。桃色の髪をした可愛らしい少女は、こちらを見つめながら微笑む。

「もしかして、今日引っ越して来るって言ってた新入りさん?」

「あ、あぁ、そうですが……」

「あー!やーっぱり!……はっ、どうしよう詩織(しおり)ちゃん!まだ歓迎の準備が……」

少女の隣に立つ詩織と呼ばれた女性は、慌てる少女とは裏腹に落ち着いた様子で少女をなだめる。

「ほらほら、慌てないの」

その落ち着いた雰囲気から、おそらく彼女は成人済みだろうと察しがつく。少女と肩を並べる姿は、まるで仲のよい姉妹のようだ。

「騒々しくてごめんなさいね。あなた、南条御琴さんよね?私達もここの住人なの」

女性の言葉を繰り返すように呟く。

「住人……」

「そう!でね、今日御琴ちゃんの歓迎パー……むぐっ」

少女が何かを言おうとした時、女性が少女の口を押さえてそれを制する。

「くれはちゃん、それはまだ秘密よ」

「あっ、そうだった!」

(なんなんだ、いったい……?)

何やらひそひそと話している二人の様子に首を傾げていると、

「詳しい話はまた後で。御琴ちゃんも荷物の整理とか、色々準備しないといけないことがあるでしょ?」

「そうだね。準備が出来たらまた呼ぶね」

そう言いながら、二人は手を振って館の中へと入っていく。

「……準備?」

御琴は少女が言った言葉に首を傾げながらも、キャリーケースに手を伸ばそうとし────

「お部屋までご案内致します」

伸ばした手がキャリーケースに届く前に、白夜がひょいとそれを持ち上げる。

見上げると、彼はにこにこと微笑みを浮かべている。

「一人で大丈夫だ。荷物も自分で持つ」

重なった視線を外すように俯いた御琴だったが、

「では行きましょうか」

「……って、人の話を聞け!」

そんな御琴を無視して、白夜はさっさと行ってしまう。

「まったく……」

御琴は溜め息をついてもう一度空を見上げると、館への一歩を踏み入れた。

今回はちらっと新キャラが出てきました!今後重要人物になってくる…はず?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ