~序章~
さぁ、物語を始めようか─────。
この世には、"妖"という、この世のものではないものが存在している。
それは、厄災をもたらし、人々を不幸へと陥れる。
しかし、そんな妖から世を守る存在がいた。
それが───”巫女”。
東西南北に分けられた巫女達は、それぞれの使命という名の力をもつ。
ある巫女は戦い。
ある巫女は唄い。
ある巫女は祈り。
ある巫女は舞う。
巫女が汚れた魂を浄化する。そうしてずっと、この世は安寧を保っていた。
桜の花びらが、そよ風に誘われ青空を舞う春。
大きな屋敷の広間で行われている光景を、少女はただ、ぼんやりと眺めていた。
少女の纏う着物は、それはたいそう高級なものだと、細かい刺繍や布の質を見れば察しがつく。
畳に散らばる程の長い黒髪の美しさを、髪に飾られた赤い椿の鮮やかさが、より一層に引き立てている。
そんな、美しい少女の前で、貴族の妖達が己の特技を披露する。
変化をする者。芸を披露する者。世間話をする者。自慢話をする者。
貴族達は特技を披露し終えると、深々と礼をし、颯爽と広間を出ていく。
その光景を、少女はただただ、ぼんやりと眺めていた。
初めまして、みやま唯です。この度はお守り妖狐を読んで頂き誠にありがとうございます。まさかのセリフのないプロローグでしたが、そこは皆様の想像力で、これから始まる物語の背景を想像して頂けたらなぁと思います!それでは、次回会えることを願って。