じょしかい!
「ちょっと、あたしの話ちゃんと聞いてるの!?」
「うん、ちゃんと聞いてるよ」
ダァン! とジョッキ(コーラ入り)を居酒屋のテーブルに叩き付けて絡んでくる千佳ちゃん。それをとりあえず宥める私。
でも千佳ちゃん、その話はいつ終わるの? 三周目までは真面目に聞いてたけど、さすがに同じ話の五週目ループは飽きてきたんだ。
ちなみに、今の私たち同級生の女二人組がいるのは、某居酒屋チェーン店の個室。ちなみに掘りごたつタイプ。靴は脱げるし足は楽だし、ついでに周りの様子をあんまり気にしないでいられるので気に入っている席である。
「で、千佳ちゃんはその彼氏と別れたんでしょ」
「あんな奴もう彼氏じゃない! ちゃんと『元』ってつけてよ!」
「うんうん、そうだったね。省略しちゃいけないね」
「そうその通り!」
とりあえず、本日通算二枚目になるトンペイ焼きに箸をぶっ刺す。少し大きめな一口に切りつつ、私は話を促すことも忘れない。そうしないと千佳ちゃんがまた絡んでくるからね。適度に相槌を打ってあげる優しい私ってば気配り屋さん。
フンー! って、鼻息荒いよ千佳ちゃん。可愛いけど。
炭酸飲料でテンションMAXな千佳ちゃんは、私の中学からの友だちだ。フワフワっとした髪に、平均的体格の、普段はほやんとした感じの女の子。
で、つい先日一年付き合った彼氏とめでたく破局したらしい。
「浮気するなんて最低だよね」
「ほんと! 信じらんない! せめて他に気になる子がいるならあたしとの関係清算してからにするべきでしょ! そんな二股野郎、こっちから願い下げよ!」
「というわけで、思い切り振ってやった、と」
「もちろん!」
フンー! とやっぱり鼻息の荒い千佳ちゃん。あまりの鼻息で前髪が一瞬ふわりと浮くのですが。笑いをこらえるのがちょっぴり大変なのはどうすれば。
「だからねー!」
そうして千佳ちゃんの話はついに六周目に突入した。私はトンペイ焼き二枚目を完食して、今度はだし巻き卵三皿目と梅酒ソーダ割りを追加注文することに決めた。
しかし私はその後、六周目にして初めて投下された新しい爆弾――もとい話題……いや、やっぱりその衝撃具合から爆弾って言ってもいいと思う――に、せっかくの美味しい梅酒ソーダ割りを、可愛い千佳ちゃんの顔面にぶっ放す羽目になった。
でも、これは私悪くないと思うんだ。……はい、ハンカチ貸したげるからそんな恨みがましくこっち見ないでね。
「なんでそこで今度は彼女が出来ちゃうの!? 極端に走りすぎじゃない!?」
「だって真知子さん、とっても素敵だから……独り占めしたくなっちゃって」
おのれ二股野郎! お前のせいで私の友だちは新しい扉を開いて新たな世界に飛び出してしまったではないか!
正直、そんな屑いるのね~くらいだったどうでもいいレベルの男が、今すぐぶん殴らなきゃ気が済まないレベルで許せないと感じた瞬間だった。
ポッと頬を染める千佳ちゃんは可愛かった。
ちなみにその真知子さん。どうやらそのクソゴミカス野郎の浮気相手だったそうな。
何がどうしてそうなったの千佳ちゃん!?
拙い作品を読んでいただき、ありがとうございました。
もし書けるなら、千佳ちゃんと真知子さんの修羅場から馴れ初めまでのお話もいつか書きたいです。