学校にて
「幸平・・・」
昨日のことを思い出す。
連れてー・・・
「行くぞ。朝日!」
幸平は相葉先輩に睨むように会釈したあと、僕の手を掴んで歩き出した。
「幸平!!あの・・・」
「あの先輩には気をつけろ。お前、目つけられてるから。」
「目?僕を嫌ってるようには見えなかったよ」
「そうじゃねー。とにかく、放課後行くなよ。」
「・・・うん。わかったよ」
それっきり、幸平は無言になった。
僕も黙った。
でもしだいに沈黙がもどかしくなる。
なにか言おうか迷った時、幸平が足を止めた。
「入って」
そして、人がいない教室に入った。
ガララー
ドアを閉めるなり幸平が僕の真っ正面に立った。
「朝日、お前昨日、あの後大丈夫だったのか?・・・何かされたか?」
「・・・・・・ぅん」
僕はうつむいた。
幸平の顔を正面から見ることが出来なかった。
廊下から男子生徒の笑い声がきこえてくる。
「あの後、変な部屋に連れていかれた。・・・幸平は、大丈夫だったのかよ?」
幸平がゆっくりとした動作で、僕の隣に座った。
「あぁ。あの後、警察に通報しようとおもったけど、家族になにかされたら怖くて、無理だった。ごめん」
「へー、・・・それが普通だよ。」
沈黙。
二人の中がぎこちなくなっていた。
僕は思い切って口を開いた。
「あのさ、幸平。実は、あの男にお前を連れて来いって言われたんだ。」
「えっ?!」
顔をこわばらせる友人に僕は続けた。
「でも、来なくていいよ。幸平は関係ないし!」
笑った顔に苦痛が浮かんでいることが、自分でもわかった。
「朝日ーー」
チュ・・・
「・・・ん?」
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
ただ、幸平の顔がすぐ近くにあった。
そして、ゆっくり離れて行く。
「お前だけ、地獄には行かせられない。俺も行く」
ーーいま、何がーー
その時、
ガララーー!!
突然教室のドアが空いた。
「!!?」
数名の男子生徒が、僕と幸平しかいない空間を見渡す。
「え!?えーー!!」
一人が声を上げる。
「お前ら、付き合ってるん!?」
「本当だ、そんな空気だ。」
「二人っきりのとこ、お邪魔しちゃった感じ?」
彼らの反応に慌てて僕は立ち上がった。
「違うわ!ただ話してただけだし!」
男子生徒達が僕に近寄ってくる。
「ん?お前A組みのアサヒちゃん?」
「え?何で知ってるの?」
ーーってかちゃんってなに・・・
「マジか、ショックー!彼氏いたのかよ!!」
「ねぇ、アドレス交換しない?」
「え、と。うん」
予想外の反応に僕は固まった。