朝日
朝の淡い光の中。
鳥はさえずり、空気はヒヤリと澄んでいた。
「・・・はぁ。屈辱だよ。」
ため息がでた。
僕は男としてのプライドが失われたような気持ちになった。
キーンコーンカーンコーン・・・
遠くで学校の清らかなかねの音がする。
異世界のあとの現実。
僕は重い足取りで、学校に向かった。
「おはようございます。」
「え」
校門をくぐろうとした時、声をかけられてびっくりした。
見ると風紀委員長の相葉洋だった。
彼は3年生だ。僕は二年生だから先輩になる。
毎朝学校の前に立ち、挨拶運動をしている。
「あ、おはようございます。」
「今日は暗い顔をしているね。昨日何かあったの?」
「え、・・・なにも、ないです。」
挨拶以外したことがない先輩に、確信をつくような発言をされ、僕は顔を背けた。
まだ傷は癒えていない。
胸がチクリとする。
「失礼します。」
「まって」
振り切ろうとした僕を相葉先輩が腕をつかんでとめた。
「俺に相談してもいいよ。放課後おいで。風紀委員の部屋に。」
「え、せんぱ・・・」
「何してるんだ?」
突然、背後で鋭い声がした。
振り返ると、心臓が止まりそうになった。
そして、それと同時に昨日の出来事を思い出す。
ーー彼を連れておいで
頭の隅で、男の柔和な笑みが浮かぶ。