図面
それは建物全体の図面、見取り図で事故のあった部屋なども詳細に書かれていた。
「こういうのは1番最初に出してくるもんじゃないか?」ヒロが憮然とする。
「いや〜逃げ出す人がほとんどだから、様子見してたんじゃないか?」楊世が推測する。
「わあ~大島てるよりヒドい!
アレに載ってるのは本当に一部なんだ!」夏希が歓声を上げる。
楊世が夏希をにらむ。
「コホンコホン、もうちょっとエレベーターは怖すぎるから、これを元に聞き取り出来そうな人は話聞いて回ろうか?」言いながら、あの体臭はイヤだなぁ〜とか思い出す。
「う〜ん、なんでエレベーター前に柱があるのか?
疑問だったけど、構造上仕方なかったのかもね。」楊世がアゴに手をかける。
屋上のエレベーターの昇降機と貯水タンクが真上にまとめてあるのだ。
「なんで真上にあると柱要るんだ?」ヒロが聞く。
「だって屋上に重いものがあるんだから、それを下支えする柱が要るじゃん。
そうしないと建物の強度が弱くなる。」空いたプリッツの空き箱に指を立てて押すとそこだけひしゃげた。
「そういう事かあ〜しかし、あの柱でエレベーター内が遠目で確認できないから余計恐いんだよな。」
思い出してヒロは震える。
「なんで、そんな重いものを並べるのかな?バランス悪くない?」サキが質問する。
「さあ、居住部屋の上を均等にしたかったのと、ただ単に作業する人が便利なようにじゃない?」楊世が答える。
物理が壊滅的な夏希には、サッパリ分からない話だ。
「でも、あの、マンションは危険だよ。
高校生なんかに捜査頼まないで警察に頼むべきだよ。
僕はこの話、断るべきだと思う。」楊世がマジなトーンで話す。
「でも事故死した部屋は警察入ってるはずだよ?
それで何も無いんだから、ウチに来たんじゃない?」夏希が食い下がる。
しばらく2人の間に沈黙が流れる。
ヒロとサキは顔を見合わせる。
「もし、やるなら条件がある。それを守れるならやっても良いよ。」楊世が譲歩した。
「やった!」夏希がホッとする。
「どうかな?条件見てから考えたら方が良いよ…」楊世が不敵に笑う。
祝日、楊世に夏希は原宿まで連れて行かれた。
「東京のほぼ反対側だからほとんど知らないや〜
若者ばっかりだね〜」夏希はすっかりお上りさんの田舎のおばあちゃんみたいになってる。
「僕はほとんど西側で育ったから、友達と遊ぶとなるとここら辺だったな。あった、あった!
この店だ!」竹下通りの路地の地下に連れて行かれる。
「友達がパンク好きだから連れて来られた事あったんだよね。コレコレ!
さあ、着けてみて!」差し出されたのはハーネスである。
「えっ、コレ?私が?」オシャレなパンク女子ならゴツいブーツ、チェックのミニスカートにハーネスも似合うだろうが。
私服の夏希は丸襟ブラウスにジャンバスカートのモスモス系のナチュラル服を着てる。
この頃は丸メガネの伊達メガネやベレー帽もかぶったりしてる。
「ハーネス…」夏希はそのまま言葉を失う。
「オカルト倶楽部、活動中はコレを着けて貰う…そして」夏希をクルッと後向きにすると背中のリングにカチッとカラビナを掛けて手綱が楊世の手のサポーターのようなバングルに繋がっていた。
「コレは!」夏希も見たことある!公園とかで!
「迷子防止ハーネス!」夏希はその場に崩れた。
「これをつけて街を歩けと…」夏希は打ちひしがれる。
「ねっ、無理でしょ?」楊世は涼しげに微笑む。
迷子用ハーネスつけた女子高生…
「でも、楊世だって恥ずかしいよ!良いの?
変態男子高校生なって?」夏希が訴える。
「ごめん、心配してヒヤヒヤしてるより精神的に楽なんだよ。空から夏希が降ってきたあの時の衝撃に比べたら。
僕は人にどう思われるか?より、自分がどうしたいか?が1番大事なんだよね。」
夏希は絶望する。
『そうだった。楊世はキラキラ属性の男子!』