白亜の洋館
4人はとりあえず月島の商店会の事務所に向かった。
「もう無理!私には無理!」サキがギブしたし楊世も顔色が真っ青のままだ。
ヒロと夏希は、エレベーター乗りたかったが…
「これ夜乗ったらどうなるんだろ?」と良からぬ発想が湧いてしまった。
「やっぱり見たのかい…」商店会会長はため息をついて4人を迎い入れた。
「オーナーさんは?」楊世が聞く。
「アイツは忙しいからの。インバウンド客でホテル増やしても従業員が足りないらしい。
アイツもフロントやりに帰ったよ。」
オーナーにプレゼントされたとウォーターサーバーで
お茶を出してくれた。
「おさげの可愛い姉妹じゃったろ?」商店会会長が目を細めた。
「知り合いなんですか?」幽霊に知り合いも何もないだろうが。
「昔は…戦後まだまだ焼け野原からバラックの掘っ立て小屋ばかりだった月島であそこには白亜の洋館があったんじゃ。
父親が腕の良いコックでな〜洋食屋が大繁盛してた。
まだ飢えに苦しむ人もいた時代にアソコだけは別世界みたいじゃった。」商店会会長が懐かしむ。
「1階が店で2階が住宅じゃった。わしらが道端で泥んこになって遊んでるとお人形を抱えたあの姉妹がニコニコしながら見てたよ。」
商店会会長が目を細める。
「同世代だったんですか?」楊世が年齢を計算するように聞く。
「そうじゃ。でも母親が気位高い人で遊ぶ事は無かったなあ〜遠目に見てた。」
「でも、なんで幽霊に?亡くなったんですか?」夏希が気になる部分を聞く。
「いや、大人になってからも見かけたし。
なんなら銀座のとんかつ屋にも食べに行ったよ。」会長が普通に話す。
「えっ?」4人は話が見えなくなる。
「洋食屋はお父さんが無くなるとすっかり客足が途絶えてなあ〜大人になった姉妹はそれぞれ父親の弟子と結婚してたが、店を畳んで別々に新橋と銀座でとんかつ屋と天ぷら屋をやっとった。」
「えっ?じゃ、生きてるんですか?」夏希が驚いて聞く。
「のはずだが。しかし、もう店は辞めてるからなあ〜
音信不通じゃ。」そこで会長はズーッとお茶をすする。
「この年なると足腰が弱ってお互い遠出しなくなるからの〜今どうしてるのか?さっぱり知らん!」スッキリした顔で言われた。
「なんなんだよ?いったい??」帰り道ヒロがこぼす。
「とにかく私はもうあのマンション無理!」あんなに気に入ってたのにサキが手をバツにする。
「いや〜オバケって足があるんだな。僕も今回はもう無理だな。それに疲れたし眠い…」朝が早かった楊世はすでに眠そうだ。
ヒロが夏希を小突いた。
「土曜日だし今夜がベストじゃないか?」サキと楊世に気付かれないよう小声で言う。
「じゃ、また今夜7時にマンション前で!」夏希が親指を立てた。