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6話 レティア

「お頭がやられたあああああああああああああああああ」

「もう終わりだ。俺たちゃおしまいだ!!!」

「まだだ。こんなとこで終わってたまるか! 俺だけでも助かるんだ!!!」

「うわ!? てめえ、何して――――」


 俺が盗賊団のボスの首を切り落としたことで、残党どもが混乱に陥った。

 予想外の出来事にその場で立ち尽くす者。絶望し膝から崩れ落ちる者。自分だけは生き残ろうと、仲間を突き飛ばしながら逃げ出す者。とる行動は様々だが、全員もう勝ちはないと感じているようだ。


「お前たち、残党の捕獲は任せる」

「もちろんです」


 俺とヴァンドレ以外の騎士が盗賊団の残党を捕まえて締め上げる。


「若様、お見事でした」

「いや、落第点だ。最初にお前が庇ってくれなければ、俺は負けていた」


 僅かな油断だった。

 突然、現れた人物。それに対する野盗たちの反応。それらに気を取られた結果、石の魔法で不意を突かれて危うく死ぬところだったのである。

 今回はヴァンドレが助けてくれたため助かったが、次もそうだとは限らない。命の取り合いをする場に立つのなら少しも気を抜いてはいけないのだと、身をもって思い知らされた。


「それは否定できませんが、結果こうして生きているではありませんか。次、戦場に立ったとき、改善すれば良いのです。若様なら、それができるでしょう」

「そうするよ」


 あ、そういえばレティアの存在を忘れていた。

 視線を彼女の方へ向けると、目の前の出来事に困惑し動けないでいる。このまま放置するのは流石に悪いので、声をかけることにした。


「無事だったか?」

「あ……あの、はい!」


 急に声をかけたので、レティアは驚いたようだ。言葉を詰まらせながらぎこちなく答えた。


「すまないな。もう少し早く駆けつけていれば、怖い思いをする時間を少しでも減らせたというのに」

「いえ……助けて頂けただけで十分です。本当にありがとうございます」


 レティアは立ち上がると、ぺこりと頭を下げた。


「そこまでしなくていいぞ。俺が誰かも知らないだろうに」


 レティアは貴族だ。例え、困っていたところを助けられたとしても簡単に頭を下げるべきではない。流石に偉そうではないかと思わないでもないが、もし頭を下げた相手が平民だった場合、そのことが周囲に漏れてしまうと社交界等でひそひそと噂話されたりするからだ。


「え、いえ。シュマイケル伯爵家のリヒト様ですよね?」


 ん?

 どうしてレティアに俺の名前が知れているんだ?


「そう、だが。どこかで会っていたか?」

「はい。たった一度社交界で軽くご挨拶させて頂いた程度ですが」


 嘘だろ。

 世界を救う主人公一行のヒロインと挨拶したのに忘れていたのか。俺が。


「八歳くらいの子供でしたので、覚えていなくても仕方ありませんよ。私はその、リヒト様の綺麗な金髪が印象的だったので覚えていただけなので」


 レティアは俯き気味にそう答えた。


「すまない。話を聞いても思い出せない。だが、こうやって再び出会ったのも何かの縁だ。今後ともよろしく頼む」

「はい! こちらこそよろしくお願いいたします」

「よし、では一旦家まで送ろう。方角はどちらだ?」


 俺はレティアのことを覚えていなかった。なのに行く先を知っていると不自然なので、あえてどちらへ行くのかと尋ねてみた。


「ティッポという町までお願いしてもよろしいでしょうか? あっ!? 申し訳ございません。名乗り忘れていました。私はレティア・ファンデフェンと申します。子爵家の一人娘です」


 慌てて自己紹介をするレティア。


「レティアか。今度はしっかりと覚えるよ。では、君が乗っていたであろうあの馬車で向かうとするか。壊れていなさそうだし、御者もうちの騎士ができるからな」

「ありがとうございます!」


 こうして俺は見事に盗賊団からレティアを救った。

 最初に三人倒したのはヴァンドレなので、半分以上は彼の手柄だが。

 何はともあれ、とにかく主人公のイベントを一つ乗っ取ることに成功したのだ。この先どうなるかは分からないが、少しでも世界滅亡の運命から離れられていれば嬉しいものだ。




読んでいただきありがとうございます。

よければ、ブックマークや下の☆☆☆☆☆で評価をつけてもらえると嬉しいです。

これからもよろしくお願いします。

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