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18話 順調な二日目

 エドワードが作ってくれたのは干し肉や乾燥野菜を使ったクリームシチューだった。ダンジョン内でもこういった食事ができるのは魔術の存在が大きい。

 前世の記憶だと化学を始めとした様々なものが発展していたおかげで食事のクオリティが高かったようだが、こちらの世界ではそれと似たような役割を魔術が担っている。


 男性陣が料理を囲ったところで、水浴びからレティアとメイ令嬢が帰ってきた。

 どうせなら全員で食事しようという話になり、二人が諸々を終えるまで待つ。


「おまたせしました」

「お待たせですわ」


 二人が戻ってくると、エドワードが全員にシチューをよそってくれた。

 皆から礼を言われたエドワードは、これくらいしかできないのでと言う。料理や細やかな気遣いが苦手な俺からすると彼はすごいのだが、本人はそう思っていないようだ。


 それから皆でコミュニケーションを取りつつ、食事を楽しんだ。

 エドワードの料理の腕はかなりのもので、非常においしい夕食だった。おかげで全員のモチベーションが高いままの状態で翌日を迎えることができる。


 ダンジョンの階層と階層を繋ぐ階段付近に魔物は近づけない。そのため周囲の警戒に人を割く必要がなく、全員で眠りにつくことができた。


「――――今日は運がいいな!」


 翌朝、身支度を済ませた俺たちは早速探索に出た。

 昨日と比べるとかなり探索の成果が出ており、昼過ぎの現時点ですでに四階層まで辿り着いていた。魔物との遭遇が少なく、グレイの言う通り運も良かった。だが、もちろんそれ以外にも探索がスムーズな理由はある。それは俺が前世の記憶からこのマップの情報を必死に引き出したからだ。

 俺がこのダンジョンを攻略すると決めたのは主人公がストーリーを進める上で重要なものが隠されているからである。つまりはゲームのプレイヤーはこのダンジョンをクリア済なのだ。ある程度やり込んでいたならマップだって覚えているだろう。どうやら俺の前世もそれなりのゲーマーだったようで、このダンジョンの構造やマップなどの情報はおおよそ引き出すことができた。

 そして俺が目指す場所はこのダンジョンの際奥ではない。現在、俺たちがいるこの四階層にある隠し部屋だ。そこに求めているものがある。もちろん実習の成績を良いものにしたいので可能なところまで探索を進めるが、無理してボス討伐必要はない。


「この調子だとボスのいる階層まで下りられるかもしれませんね」

「そうなればわたくしたちの成績は最高評価で間違いありませんわ!」

「ボスに勝つ前提かよ。このご令嬢相変わらず強気だぜ」


 とはいえ皆ボスと戦う気でいる。理由もなくボスは倒さないと言えば士気は下がり、今後共に行動する際に影響が出るだろう。どうするべきか。迷うところだがひとまず今は第一目標である隠し部屋の方へそれとなく誘導しなくては。


「リヒト様、分かれ道ですわ」

「先に魔物はいるか?」

「ええ、左の方の道の先に。まだ距離があるから種類までは断定できませんけど、人型のものがいますわ」

「右はいないのか?」

「いませんわ」


 これは困った。

 俺が進みたいのは左の道である。

 だが、今の情報を聞いてあえて左へ進むのは正しい判断とは言えない。どうにか左を選んだことを納得させられる言い訳はないだろうか――――。


「あの、リヒト様! 私、そろそろ魔物と戦いたいです」


 俺がどうしたものかと考えていると、レティアそんなことを言い始める。


「つまり左に進みたいということか?」

「はい!」


 俺としては非常に有難い申し出だ。

 ここは彼女の意見を取り入れるしかないだろう。


「……分かった。俺もそろそろ剣を振るっておきたかった。今回はあえて魔物がいる方へ進もう」

「げっ!? マジかよ。戦わずに先に進めると思ったのに。まさかリヒトがあえて危険に飛び込むなんて思わなかったぜ」

「確かに意外ではありますが、わたくしはお二人が戦いたいとおっしゃるのならお供しますわ。ヘタレがどうしても戦いたくないと言うのであれば、一人だけ右へ進んでもよろしいのよ?」

「そんなことしたら、逆に死ぬだろ!! 他のみんなが左に行くなら、俺だってそっちへ進むぞ」


 こうして俺たちは左の道を進むことにする。

 レティアが好戦的だったおかげで、俺は助けられたのだった。




読んでいただきありがとうございます。

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これからもよろしくお願いします。

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