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17話 一日目終了

「あっ、みんな! ドロップアイテムがあるぞ」


 レティアの氷魔術に一同が驚愕し、しばらくの間全員から褒め称えられていた。

 その後、全員怪我がないことを確認して前へ進み始めたところでグレイが声を上げる。


「本当ですね!」

「珍しいな」


 ドロップアイテムというのはダンジョン特有のものである。

 外にいる魔物を狩った場合はそいつの死骸を解体して必要なものだけを持ち帰り、装備に加工するなり、売るなりして有効活用する。

 だが、ダンジョンの場合は違う。内部で魔物を倒すとそいつの死骸は光になって消えるのである。ただ一定の確率でその場に何かしらモノが落ちていることがある。それがドロップアイテムだ。倒した魔物の体の一部だったもの、その魔物が使っていた武器、また全く関連性のなさそうなものまで、様々なドロップアイテムが存在する。


「これは……なんだ?」


 ホブゴブリンのドロップアイテムを持ち上げたグレイは頭にハテナを浮かべる。


「石、ですかね?」


 レティアもこのドロップアイテムが何か分からないようだ。


「リヒト様はご存知ですの?」


 メイ令嬢が下から覗き込むようにこちらを見る。

 俺がドロップアイテムの正体を知っていることに気がついたようだ。


 俺は初期こそ彼女のことをただワガママなだけのご令嬢だと思っていたが、最近は考えを改めた。彼女は頭がキレるし、身体能力的なスペックも高い。グレイに対する物言いなどは相変わらずだが、それも今は許容できる範囲に収まっている。仲間にいてくれて非常に助かるのだ。

 ただ魔術適性は火がCで残り全てがGで最低ランクと、魔術に関してはそれほど才能がないが……うちにはレティアという魔術特化の存在もいるから気にするところではない。


「魔石だ」


 魔石とは魔物の心臓のようなもの。

 魔物を殺す方法として手っ取り早いのが、これを貫き破壊することだ。

 ただ、魔石は弱い魔物のものでもかなりの硬度を誇るため、生きた魔物の魔石を破壊するというのは現実的ではない。うちのヴァンドレでさえ、本気で突きを放たなければ成功しないのだ。


「魔石ですの? わたくしが知るものはもっと宝石のように綺麗なのですが……」


 メイ令嬢は困惑の表情を見せる。


「ゴブリン系統の魔石はこういったくすんだ色になる。魔物によって魔石は色が変わるだろう? ゴブリンの魔石が濁った茶色なのもそういうことらしい」

「ゴブリン自体が醜いですから、仕方のないことなのかしら」

「でも、この見た目だと碌な金額で売れそうにないな」


 と、全員から散々な言われようなホブゴブリン魔石だが、本当に使い道がない。この程度の魔物の魔石だと魔導具に利用することもできないし、見た目が悪いため宝石的な価値もないからである。


「ま、まぁ、一応ドロップアイテムですから! もっていきましょうよ」

「それもそうだな!」

「では、僕がお預かりします」


 グレイはエドワードに魔石を渡した。


 それからどれくらい時間が経っただろうか。

 俺たちは順調にダンジョン探索を進めて、二階層への階段を見つけた。


「今日の探索はこれで終わりにしよう」

「おっ、いいね!」

「キリが良いからね」


 ダンジョンの層と層を繋ぐ階段。その周辺は魔物が近寄れない。どういった理屈があるのかは知らないが、大昔から幾度となく検証されていることなので、これは確かだ。

 故にダンジョン探索を長期で行う先は階段の周囲をキャンプ地とすることが常識である。魔物が溢れるダンジョン内で安全を確保できる場所はとても貴重だからだ。


 俺とグレイは二人で協力してテントを組み立てる。

 その間にエドワードが大きなリュックから簡易的な料理セットを取り出して、夕飯を作り始めた。

 レティアとメイ令嬢の二人は壁際の物陰に移動して、レティアの水魔術で生み出した水で汚れや汗を流している。


 ダンジョン探索と言えばもっと過酷で汚いものを想像するかもしれないが、魔術を使える者が多いとこんな程度である。もちろん命がけなため、危険であることに変わりはないが。


「皆さん、夕飯ができました」


 テントを組み立て終えた俺たちにエドワードから声がかかる。


 ぐぅ~。


「すまん、鳴った」


 同時にグレイの腹がなり、恥ずかしそうにそれ自己申告される。

 俺とエドワードは爆笑しながら、料理のもとへと向かったのだった。

 


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