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13話 最弱の魔物

 絶叫した後、泡を吹いて倒れてしまったメイ令嬢のことはエドワードに任せる。

 俺が視線を向ける先はそのメイ令嬢が先程から緑の何かがいると訴えていた洞窟の奥だ。彼女が叫ぶ数瞬前から俺も異臭を捉えて何かいるもかもしれないと考えていたが、どうやら正解だったようだ。


「おい、あれ!」


 現れたのは緑色の肌をした小さな人型の生物だった。額には小さな角が生えており、右手に木の棒切れを持っている。


「魔物ですよね?」

「あぁ。確かゴブリンだったかな」


 俺たちが初めて遭遇した魔物は<最弱の魔物>として有名なゴブリンだった。

 騎士団の資料室には魔物に関する書物もそれなりに置いてある。何度かヴァンドレに見せてもらったことがあった。ゴブリンもそこ見た記憶がある。それから前世の記憶にもゲームに登場する魔物として情報が記されていたな。


「数は三体か」


 倒れたメイ令嬢とその対応をしているエドワードは頭数には入れずに考えると、敵の数はこちらと同じ。俺もレティアもグレイも魔法を使えるということを考えると、十分に対応可能だろう。


「それぞれ一体ずつ倒そう」

「はい!」


 レティアはワクワクした様子で構えた腕の前に氷の結晶を作り始めた。

 前世の記憶だとレティアは好戦的なキャラだったという情報はないのだが、どういうことだろうか。


「いきなりソロかよ!?」


 逆にグレイは文句を垂れている上に、動揺してまだ魔術を発動していない。

 最悪サポートが必要かもな。


 さてと、俺はどうやって倒そうか。

 一月前までの俺なら、どの武器で倒そうかと考えただろう。だが、今はそれに加えて五種類の魔術による攻撃も選択できる。

 日々の鍛錬により様々な武器を扱う技術を磨いてきた俺だが、そこに複数の魔術まで加わったとなると嬉しい反面適切な手段を選ぶ判断力と速さが必要になるため更なる自己研磨が必要となるだろう。


 今回は確実性を重視して、腰に差してある剣を引き抜く。

 そして切っ先をゴブリンに向けて構える。


「想像以上に動きが遅いな」


 迎撃の準備が整った後、素直に出た感想がこれである。

 日頃鍛錬の相手をしてくれていたヴァンドレはもちろんのこと盗賊団のボスにも及びはしない。それどころが、下っ端の野盗にすら勝てないだろう。


「こちらからいくか」


 相手が遅いなら、こちらから距離を詰める。

 ゴブリンにとって予想外の動きだったのだろう。動揺からわずかに動きが鈍る。


 流石にこの隙は見逃せない。

 そのまま距離を詰め切り、剣を首元へと叩き込んだ。


 転がり落ちる緑の頭を視線の端に、仲間の方へと視線を向ける。

 後方にいるメイ令嬢はまだ気を失ったまま。エドワードは短剣を構えて必死に彼女を守ろうとしている。今のところ魔物は一体もそちらへ向かっていないが。


 レティアの方を見るとすでに戦闘は終了していた。

 複数の氷の結晶により串刺しにされたゴブリンの無惨に姿はなかなかにグロテスクである。


「ぶっ飛べ、クソがあああああああああああああ」


 グレイは大丈夫か確認しようとしていたとき。

 やけくそ気味の声が洞窟に響き渡る。

 聞き馴染みのある声。誰かと言われればもちろんグレイである。


 真っ赤な顔で叫びながら斧を振り回すその姿は狂戦士のようにも見える。


「リヒト様、楽しそうですね!」


 いつの間にか隣にきていたレティアからそんなことを言われる。


「グレイがか?」

「もちろんです。とっても楽しそうに斧を振り回しているなと」


 俺の目には魔物を相手にする恐怖に耐えられなくなったグレイがやけくそで暴れているようにしか見えないのだが。レティアの目にはいったい何が映っているのだろうか。


「そ、そう思うか?」

「ええ! 私も魔術を使って戦闘するのが楽しかったので、少しだけ彼の気持ちが分かります!!」


 少しずれているレティアと会話しながら、いつ助けに入ろうかとタイミングを見計らっていると――――。


「あっ」


 ズシャっとゴブリンの頭部が吹き飛んだ。

 どうやらあの適当攻撃が当たったらしい。


 まさかの最後ではあったが、先頭は無事終了。

 俺たちは初戦闘を勝利で飾ったのだった。




読んでいただきありがとうございます。

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