√B その①「ラスボスと黒幕」
〈二〇二五年 三月十三日 御加実市 某所〉
巷では、タイムリフトという麻薬が流行っているらしい。警官が血眼になって警戒しているのだが、未だに撲滅の兆しを見せない。
『決闘士』も、噛んでいるという噂が、警官の中で最も有力な線である。
マフィアは『決闘士』にはあまり介在しないため、麻薬には手を出そうとしない。
西の地では、『決闘士』であるジョニー=ディエゴが新米の『決闘士』に敗れたらしい。彼の連勝記録は永遠に増えないだろうとの噂だ。
中央蒸気列車都市では、国民一斉蜂起の準備が行われている。警官を混乱させるため、民衆の判断能力を奪うため一斉蜂起を扇動している組織が麻薬が流したらしい。
市長の息子と、この国の金貸しであるピアーノが組んで、その一斉蜂起の功績や利益を横から掠め取ろうとしている。
一斉蜂起を扇動しようとしている組織には派閥が二つあり、少し断絶気味だ。
アルトラーム国の国境線では、隣国ウェポンスが動きを見せた。この国の蒸気機関技術を奪い取ろうと、武器産業が主流である武装国家ウェンポスが同盟国と責める準備をしている。さらに、スカイディア空商国がそれに乗じて、ウェンポスを攻めようとしている。
ジョニィを倒した新米の『決闘士』は、北東にある街で、決闘大会に出ようとしている。新米の『決闘士』の仲間は五人、彼合わせて六人。彼の師匠はかつて戦争で活躍した────────────
「────ん、寝ていたのか。じゃあワット、次の指令を……」
────目を覚ますと、摩天楼にいた。
明らかにこの世のものではない意匠の、かなり高い建築群。
灰色の墓標を思わせる建築物がそこかしこに犇めき合っていた。
その建物たちの幾つかには、動く絵が貼ってあった。
行き交う人々の格好も奇抜で、おおよそ見たことないものばかりであり、目を引く……いや、それ自体を目的に作られたものが多いのか。
「……なるほどねぇ」
手元を見ると、見たことのない板が握られていた。
確かに以前には持ってはいなかった、知りもしないその道具は触ると光った。
以前の世界にもここまで小型なものはなかったが、何らかの機器の類だろうか。
暗くなった画面に彼の姿が映る。
中肉中背、黒の長髪に蒼碧の瞳、格好は袖広のスーツを着ている。
見た目も以前の世界と同じだ、それにおそらく声も。
まるで、自身がまるまる異世界に転移してきたように、だ。
───異世界、それも自分のいた世界よりも文明の進んだものが目の前にある。
彼はそれだけで、心が好奇心で満たされていった。
「ふむ、とりあえず、この板のボタンをポチポチっと」
板状の機器の使い方はさっぱりわからないので、とりあえず周りについた突起を押す。
ただ、光が点滅するだけで何も起きない。
「ああ、画面を触るのか」
周りの人間がやっているのを見て、彼は理解した。
確かにわかりやすい操作方法だと、彼は感心した。
普通なら動揺一つ見せていいくらいの状況に彼は冷静に現状を分析する。
「ふむ、なるほど、これは………げーむ?カラフルな絵の説明が触ると、画面が変わる。それに知らない言語のはずなのに何故か読めるのはどうしてだろう」
機器に表示されたのは興味をそそる、絵や人物画であった。
それも、よりわかりやすくデフォルメされたものであった。
いわゆるソシャゲの画面という奴だったが、空想世界から来た彼には当然わかりっこない。
「わかりやすいね、このボタンの絵を触れれば、絵が変わり、様々な情報が表示されるのか。進んだ技術もここまでくれば驚嘆の域だね」
────彼は目を細めて笑う。
これがあれば、どれだけの悪事をすることができるか。これがあれば、前の狭い世界では成し得なかったことができるかもしれない。
そして、静かに悪党の顔をしながら彼は、目の前の端末の理解に努めた。
◆◇◆◇◆
「ふむ、【空想現界】に【ゲーム】、〝イベント〟、〝クエスト〟にポイント…………なるほど、ご丁寧に説明付きとは驚いた」
自らが思っているよりも状況は複雑であった。
この端末はあくまで、【ゲーム】を進めていくことを補助するための道具らしい。
【ゲーム】では常時発生している〝クエスト〟や、不定期開催の〝イベント〟などで集めたポイントで競い合う。【ゲーム】終了後に一番ポイントの多いゲーム参加者、つまり〝プレイヤー〟が、何でも一つ願いを叶えられる権利をもらえるらしい。
「露骨すぎる、罠だね」
通知、【ゲーム】の主催者からのメッセージがあった。
通知の内容を見るに「最初にゲーム参加者には〝GM〟が案内を行っていたが、飽きたのでやめた」という主旨が書いてあった。
「────気に食わないねぇ」
顔は笑っていたが、彼は怒りを発露した。
案内が無かったことはどうでもいいのだ。この【ゲーム】自体が誰かに主導権を握られていて、黒幕的な存在が自分ではないことに腹が立っていた。
空想現界というものも、この世界が生み出した創作の人物が、現実に召喚されるようなものであろう。
「まあ、ともかくここが異世界ではなく、僕たちの世界を作り出した上位の世界であることはわかった」
要するにこの世界は木の幹で、かつて居た世界は枝であり、今いる世界は幹に近い。
あちらは末端で、こちらはより頭脳に近いというわけだ。
それについても、特に衝撃はない。
むしろ、以前は誰かに操られた見せかけの世界にいたのだ、そして役割を演じていた。
そう思うとゾッとするが、それでもこの状況は自分好みの展開ではある。
「────とにかく、この世界自体を知る必要があるかな」
彼はあえて【ゲーム】のことではない、この世界に対する知識を知りたいと思った。
【ゲーム】もいつかは終わり、この世界で過ごすことになると睨んだから。
そして、この【ゲーム】だけの情報では、黒幕の良い様にされるだけと考えたから。
そして、彼は自らが目的とする場所へと目星をつけ、足を向けたのだった。
◆◇◆◇◆
────人は〝悪〟に怯えている。
世の中、悪が栄えたこともなし……本当にそうだろうか。
必ず正義が勝つ!そんなことはないだろ?
正義など悪に際して作られた、当て馬なのだから。
どれだけ潔いことを言っても、泥を啜らなければいけない時が来る。
正義など一般的な価値観に過ぎない、全ては悪ありきだ。
世界は必要悪で回っている。
正義で回せるものなど全く無いじゃない?
そう、ただ建前的な正義など、僕にとってはどうでもいい。
誰しもが持っている常識と呼ばれる偏見。
自分ではない誰かが言うそれは良識でも正義の心でもなく、それは借り物の偽善、自らさえ助かればいいだけのおためごかしなのだ。
要するに、僕は〝悪〟を信じている。
だが、前倣えの価値観で、あやふやな考えで……皆が正義を信じ、悪を恐れる。
正義と悪を定義する見方自体が、行き過ぎた極論であると言われるかもしれない。
しかしそれでも人は、わかりやすくより鮮烈な価値観を求める。
そう、世界が偽善を求めているからだ。
そして当然、絶対的な悪も必要であり、それに対する絶対的な正義も世界には必要ではある。
どちら側にも傾いてはいけない、それが全てを制する理なのかもしれない。
すなわち、悪でも正義でもない絶対的な〝混沌〟こそがッ!今の僕とって────
◆◇◆◇◆
「────なるほど、大体理解したよ」
彼は糸に指をかけつつ、本を片手で開いて流し読む。その本は主にエンタメ小説、ライトノベルと呼ばれる書物であった。
「────か、ぁガッ……」
彼が指をかける糸を手繰ると、それぞれが絡まって少しずつ糸の合間が狭まっていく。
そんな混沌の終着に────首を糸に絡み取られ、窒息しかけている人間がいた。
その人間は彼が糸を張った書店の店長であり、平日の寂れた書店にいた第一の被害者である。
「ふむ、これは思ったよりラッキーだったかもしれない。この本があれば、なんとなく、【空想現界人】についてもわかる。ただ、量が膨大過ぎて探せないのと、そもそもどの現界人の情報が必要なのかがわからないね」
その一般人がみれば真っ青になるような状況で、彼は平然と口に出して考察する。
「ん、これは──」
ふと気になった本を見つけ、手に取る。
その本の題名は『マリオネット・ワークス』、その本に興味を惹かれて手に取る。その本の内容は──
「────まあ、あるとは思っていたけれど、こんなに早く見つかるとはね」
────その、絵と文字を線で区切って映像のように見せるマンガと呼ばれた芸術作品に、彼の人生が載っていた。
彼の世界の、よく知る情報全てが…………そして彼の〝敗北〟の歴史がそこにはあった。
「万全に準備をしていたはずなのに、最後の最後で見誤っていたということかな」
最終巻と代打たれたそれは彼の知らないことだが、概ね計画通りに進んでいた。しかし──
「────まさか、全ての国家、機関、人物が的に回っているとは。それも、トーマがそれらを私に全て悟らせず、罠に嵌めるとは。完全に誤算だったよ」
裏切り者のワットは醜く死亡、僕も大瀑布に落ちて死亡というわけか。
流石僕、まさしく悪役の死に様だ。
最終的に主人公が勝つというまさしく大団円が、彼の手に取った作品には紛れもない事実として描かれていた。
「……なるほど、これは計画の修正が必要だね」
どさり、と目の前の店長が床に落ちた。
何故か、何故そうしたのかはわからないが、この書店の店長を殺してはいけないと思った。
否、そもそも自身の思考が書き換わっていくことを感じる。外側から干渉されたわけではなく、内側にある自己の精神の要請に応じて、だ。
元々、彼の思考が柔軟ではある。
柔軟過ぎてキモいし怖いとワットにドン引きされたくらいだ。
「──よし、わかった。理解した」
彼は静かに、そこらで買った釣り糸を回収し、書店を後にする。
店長は死んでいない、彼が起きればおそらく警察が来るだろう。
すでにこの世界に対する必要な情報は得れた。
ならば、ここは【ゲーム】の空間に逃げるというのがベターだろう。
自らの思考アルゴリズムが組み変わるのが感じる。
悪意と破滅に満ちた脳内を〝混沌〟へと変換していく。
最初は、警察が来ればシンプルに暴れ、返り討ちにする。
最終的に彼らの一人となり代わり、この町を荒らし、手に入れようと思っていた。
ただ、それも流石に糸だけでは無理そうだ。
【ゲーム】に参加し、何もかもを滅茶苦茶にして、黒幕の面子を潰してやろうとも思った。
────けれど、それでは駄目だ。
破滅的なやり方で、途中まではいける。
頭脳を駆使すれば簡単だし、むしろ一人の方が楽だ。
協力者を募り、脅し、恐れを助長させ、愚か者を煽動させ.............それでは、敵を作りすぎる。
悪を撒き散らすのはそちらの方が効率がいいと思っていた。けれど、それは全くの間違いだ。気づいていなかった、こんな簡単なことを。
楽な道を選ぶという一番ナンセンスなことを、今まで何故していたのだろう。
「全く気が付かなかった。悪でも正義でもない、誰の敵にも回らなかった者が勝者なんだ」
そう、正義でも悪でもない混沌へ至り、全ては帰結する。
誰の敵にも回らず悪をなす、最も難しく効率の悪い策だ。
前世では効率を、身軽さを求め過ぎていた。
無意識に楽な方法を選んでいたのだ。
「──僕としたことが、なんということだ。こんなにも楽しいことがあったなんて、ねぇ」
初めて気がつかせてくれた世界に感謝する。
──味方を作り、誰も敵に回さずに全てを支配する。
そう、ユーモアを忘れていた。
忘れてはならない遊びを捨てて、悪に欠かせないものを見逃していた。
「────でも、ならやっぱり必要だよね。主人公が、さぁ!」
前世でもやっていた一つのルーチンだ。
この世界に来て思考が切り替わってもそれだけは変わらない。
相応しい者を探し、英雄に祭り上げ…………最後の最後に絶望の底に落とす。
それらを至上の悦びとし、それを目的とすることだ。
誰も敵に回してはいけないが、それでも道標は必要だ。
────さて、これからどんなことが起こるだろうか。
これから起こるだろう愉快な出来事に想いを馳せつつ、彼は初期ポイントを使って【ゲーム】へと転移する。
【ゲーム】のフィールドに転移すると、視界が少し暗くなった。
これは、【ゲーム】自体が常時夜という────
────思考していると、突如後頭部に、雫を落としたような冷たい鉄の感触がした。
「──ヘイ、ベイビー、額に風穴開けたくなけりゃ、ポイント全部置いてきな?」
そして、魅力的な口説き文句と共に、銃口を突きつけられた彼は命の危機に笑う。
────彼の名はマリオ=レンブラント。
西部劇風異能力バトル漫画『マリオネット・ワークス』のラスボスであり、無能力者である。
マリオはこれからの期待に胸を躍らせて、どう切り抜けようかと思考を巡らすのだった。
────そう、そして……これはマリオが〝彼〟に出会う前の、物語だ。
◆◇◆◇◆
〈二〇二五年 ?月?日 ??? GMの部屋〉
「────ほぉう、これはこれは、また面白そうな〝プレイヤー〟が来ましたねェ!」
白い部屋に、質素な椅子と机が一つあり、興奮した声が何もない空間に響く。
椅子に座るのは白黒まばらな髪色で、モサっとした髪型に曲がった角が生えている男性だ。
体格はがっしりとしていて、胸元は開いている。
腕は白と黒の帯が編みあっているような袖の上着で、下は純白でもこもことした裾野、裸足で妙に分厚く高い下駄を履いていた。
「……また、覗き見か?相変わらず、お前は悪趣味だよ……ゲィト」
そして、白い空間の端から現れたのは、学生の制服に鬼の面を被った妙な男だ。
たった今部屋に入ってきた奇妙な男は、虚空から生成した椅子を出してテーブルに着く。
「いえいえ、【ゲーム】の管理人として当然のことですから」
「褒めてないが……ま、せめて運営くらいは真面目にやれよ」
ゲィトと呼ばれた男は、鬼面の男に答えた。
座りつつ、鬼面の男は手に持っていたスマホを見る。
「今の一位はまだ〝虫使い〟か。中々逆転できるもんじゃないとは思うが、代わり映えしないな」
「ふふ、ランキングは〈同盟〉の持つ総ポイント数で決まりますからねぇ……そうそう脱退や変更ができない以上、大きくは変わらないでしょう」
彼らはまるで、全てを知っている神のように話していた。
事実として、彼らが運営するゲームなのだ。
多少の制約はあろうと、自由に改変したりもできる。
「【ゲーム】の運営はどうだ?」
「重畳ですぅ!【ゲーム】の《隔離結界システム》も順調稼働中で、〝クエスト〟も順次更新中ですし、〝イベント〟も近々計画中ですからね~!」
そう聞く鬼面の男に、ゲィトはにこやかに答えた。
【ゲーム】の運営はほぼこのゲィトがやっている。
鬼面の男はスポンサーのようなものであり、ただここにいるだけが役割りの御飾りだ。
「相変わらず行き当たりばったりの運営だな……それに少し【杖】を配り過ぎじゃないのか」
「いえいえ、そんなことはないかと。苗床自体もそんなに数は居ませんしね」
【ゲーム】を勝ち抜いた賞品としての【杖】は、空想現界人の強化にも集めれば願いを叶えられる願望気にもなりえる。
生まれつき【杖】を所有している特別な空想現界人もいるが。
「生まれながらの【杖】持ちを安定させるための、外付けの器だっけか?でも、苗床が【空想現界人】と組むケースもあるんだろ?」
「ええ、ハーメルンなどは特にそれでしょう」
「〝虫使い〟は苗床を殺したんだっけか……まぁ、苗床の末路なんてほぼほぼ死亡しか見てないな」
その言葉にゲィトは何も言わない。
【ゲーム】の全てを把握している彼らにも、知りえないことはある。
【ゲーム】外の事などは当然知る由もない。
「魔術師として、覚醒する場合もあるんだろ?大体は死ぬとは思うが」
「【杖】自体がこの【ゲーム】の運営に関わっている魔道具ですからねぇ。そんな劇物を準備のない一般人が受け入れられるわけがありませんし。それに貴方もそう でしょう?」
ゲィトは【杖】を手元で遊ばせる、鬼面の男に言った。
口の端を大きく歪めたゲィトに、目線を向けずに鬼面は口を開く。
「それが分かってて【杖】持ちを生み出すたぁ、人の心とかないのか?あと、俺の場合は【杖】だけだ」
「ふふ、それでも後の呼び水にはなるでしょう?」
ゲィトは薄ら寒い笑みを浮かべた。
「【杖】を狙おうにも、【杖】持ちの実力では無理……ってなりゃ〝イベント〟を勝ち抜くのが正道だな。でも、プレイヤーたちは願いの成就を目の前にぶら下げられてせっせこ走るっつうのは、アコギな商売だぜ、まったく」
「本当に、〝全て〟の【杖】を集めれば可能ですよ?」
ゲィトは言外にそれができるのかの是非は知らないとシラを切る。
そんなことは、鬼面の男がここにいる時点で出来ない。
そう、全ては彼らによって仕組まれている。
「それにしても暇だ。お前と話すしかないんだが、テーブルゲームとかないのか」
そう、鬼面の男は机に肘をついていった。
「そういうのはないですねぇ、【ゲーム】の運営でもします?最近は特に黒ヘルくんがよく働いてくれていますが、まだまだ仕事はありますから」
「そういうのはパスだ。面倒だから」
「ふむ、そうですか。では新しい補助現界人でも呼び出しましょうか」
とんでもなく横柄な発言だが、ゲィトは特に何も思わない。
ゲームの運営自体はやることが多いが、別に苦労しているわけではない。
そう考えつつ、ゲィトは気安く大魔術を行使し、空想現界人を呼ぶと言った。
無論、鬼面の男には魔術など分からないが。
「まあ、外に出た時に小説でも買ってくるか。ああ、ところで────〝姫〟の件だが」
「…………未だ、現界する気配はないですねぇ。彼女の潜在能力次第でしょう」
ゲィトは笑顔でそう言った。今度は本当の笑顔だ。
「まあ、必ず来るさ。実際、〝十天〟の一人は来てるだろ」
「……一応、放っておいてますが、構いませんよね?」
「どちらにせよ、〝王〟で事足りる。お前も戦力は少ない方が望ましいだろ」
その言葉に笑顔で返すゲィトは油断ならない笑顔を浮かべる。
とにかく、彼らの目的に関する確認事項だ。
少なくともこれらに関して二人は利害が一致している。
「────さて、【ゲーム】はさらに面白くなっていきますよ。あなたもぜひご覧ください」
「そうだな……せいぜい終局までは、傍観者でいさせてもらうさ」
そして、静かに黒幕たちの会話は幕を閉じた。
【ゲーム】に関する様々な思惑が交錯し、それぞれの黒幕が陰謀について手番を巡らす。
だが、それでもすべては彼らの掌にあり、全ては仕込み通りに進んでいく。
────かくて、彼らのあずかり知らぬ所で〝姫〟が現界し、全てがシナリオ通りに運んでいくのだった。
〈Tips!〉
・杖について
【杖】とは、ゲームマスターが【空想現界】を呼ぶための軛、礎、要するに召喚魔具である。
ただし、その基礎は現行の魔術と大きく異なっており、その出自は謎である。
そして、【空想現界人】が【杖】を取り込むと大幅に強化され、一般人が使用すると特殊な魔術を使えるようになる。
【空想現界人】が現界するには【杖】が必須となるが、【杖】と一般人を苗床として召喚された【空想現界人】は生まれつき【杖】の強化を得た強者となる。
その過程で苗床とされた一般人は基本的に死んでしまうが、ごくたまに魔術師の素養を持つものは生き残り【ゲーム】に参加できる。
なお全ての【杖】を集めれば何でも願いを一つ叶えることができるとゲームマスターが触れ回っているが、それを信じている者はあまりいない。




