表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作小説倶楽部 第27冊/2023年下半期(第157-162集)  作者: 自作小説倶楽部
第158集(2023年8月)/テーマ「山」
6/26

01 奄美剣星 著 『エルフ文明の謎 08』

【概要】

 カスター荘の事件を解決した考古学者レディー・シナモンと、相棒バディーを組むブレイヤー博士は、王国の特命を受けて新大陸へ。そこには滅亡した〈エルフ文明〉遺跡が点在していた。ミッションはエルフ文明が滅亡した理由を調査すること。そこで殺人事件が……(ヒスカラ王国の晩鐘 43/エルフ文明の謎 08)



挿絵(By みてみん)

挿図/(C)奄美「令嬢二人」

   08 山場


 測量士カシニ・エルミートが重要参考人として、ホルム警視の飛行艇に拘禁・訊問されている。実のところ新大陸シルハ警視庁は真相に興味がなく、自分達が用意したシナリオに沿って自供させることに重点を置いていた。要は社会秩序を維持するための生贄を求めているに過ぎない。

 ホルム警視ときたら、――もはや殺人事件のことなどどうでも良いといったふうで――事件の辻褄合わせを部下の刑事達に任せ、自身はシナモン少佐の仮説に目を輝かさせていた。

「ねえねえ、レディー・シナモン、私とお友達にならなくて? ――甲殻虫を削りだして作ったレコード・プレートを、水車装置で演算して、解を出すんでしょ? エルフ文明って、面白過ぎ。――ゼラノ団長補佐、《水車小屋》に案内して下さらないかしら」

 警視の言う〈水車小屋〉とは、先日、調査団が発見した〈死都〉の外れにある奇妙な地下施設遺構で、そこには〈雨樋〉状の溝に水を流して複数の円盤を回す装置がある。――装置の一部には破損している箇所もあったが、概ね保存状態は良く、そのまま使ってもある程度は機能しそうだった。――とはいっても、遺構も遺物も発掘したてで、そのまま使って、保管されている大切なデータが損なわれないとも限らない。まずは現況を記録し、装置自体は、新大陸首都シルハの博物館に持ち帰ってから分析するのが賢明だと思う。

 半ば強制された団長補佐に警視が続く。このときシナモン少佐の手を引っ張って行ったことを付け加えておこう。

 問題が生じたのはその夜のことだった。


               ***


 少佐と私が寝泊まりしている飛行艇は、ガスパーレ大尉麾下副王親衛隊に守られた桟橋に停泊している。朝食どき、あてがわれた二人部屋の士官室で私達が着替えていると、木製ドアをけたたましく叩かれた。

「レディー・シナモン、団長補佐ゼラノ博士が殺害されました。警視は先に現場に行っています」

「なんですって? ――大尉ですね、場所は?」

「例の《水車小屋》です」

 ガスパーレ大尉に続いて少佐と私も現場に向かう。川べりの波止場から伸びた、密林の奥へ向かう道を私たちは早歩きしつつ、大尉の説明を聞く。

「警視と少佐を案内したあと、団長補佐は、〈水車小屋〉に戻って報告書用の所見を書いていた。――明け方、テント村に戻らなかった団長補佐を心配した新団長のラサロ博士は、職員を連れて、現場に向かった」

 そしてゼラノ博士の死体が発見されたというわけだ。


               ***


 ――〈水車小屋〉――

 発電機は地上の入口に設置され、コードは階段の端に伸ばして、地下ホール内部をライトで照らしている。

 ガスパーレ大尉が地下の入り口で立ち止まり、――そこから先は、お嬢様方のエリアです――と言わんばかりに、恭しく宮廷風のお辞儀をした。

 刑事達が現場検証し、殺害されたゼラノ博士の遺体の殺害状況写真を撮影していた。指揮を執っているホルム警視が、

「あら遅かったわね、レディー・シナモン少佐。見ての通り、トリックらしいトリックもない。犯人は、ためらうことなく、被害者の首筋をざっくり切り裂いているわね」

 少佐は、地下室石畳に片膝をつき、ローアングルで状況を見た。

 現場には捜査員がすでに入っているので、情報価値は減っている。

 凶器のナイフは被害者の首筋に刺さったままの状態で放置されてはいるが、柄の指紋はすでに、拭き取られているとのことだった。

 黄金の髪を後ろで束ねたその人が、私に囁く。

「ここにきてゼラノ博士が殺されたのはなぜでしょうね? 実を言うと、私の中で博士は、ホルム警視が拘束なさっている測量士のカシニ・エルミート氏よりも、本件に関する重要参考人だったのですよ」

「ほう、それは聞き捨てならない。ぜひ理由をお聞かせくださいな、レディー・シナモン?」

 聞き耳を立てていた警視が、少佐と私の会話に割り込んできた。


               ノート20230830

【登場人物】

01 レディー・シナモン少佐:王国特命遺跡調査官

02 ドロシー・ブレイヤー博士:同補佐官

03 ガスパーレ・ドミンゴ大尉:副王親衛隊士官

04 ケサダ・バコ博士:〈死都〉遺跡調査団長

05 フェリペ・ゼラノ博士:団長補佐

06 ナディア・バコ:団長夫人,カメラマン

07 カシニ・エルミート:測量士

08 アンドレス・バレス:測量助手

09 ロドリゴ・ラサロ博士:後任の〈死都〉遺跡長団長

10 グラシア・ホルム警視:新大陸シルハ警視庁から派遣された捜査班長

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ