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自作小説倶楽部 第27冊/2023年下半期(第157-162集)  作者: 自作小説倶楽部
第160集(2023年10月)/テーマ 「ミステリー」
14/26

01 奄美剣星 著 『エルフ文明の謎 10』

【概要】

 カスター荘の事件を解決した考古学者レディー・シナモンと、相棒バディーを組むブレイヤー博士は、王国の特命を受けて新大陸へ。そこには滅亡した〈エルフ文明〉遺跡が点在していた。ミッションはエルフ文明が滅亡した理由を調査すること。そこで殺人事件が……。


 滅亡した種族・古代エルフ文明遺跡〈死都〉。そこの〈水車小屋〉と呼ばれる遺構の一角に、私・ブレイヤー博士と〈姫様〉レディー・シナモン少佐、親衛隊のガスパーレ大尉、そしてシルハ副王領警視庁グラシア・ホルム警視、後任の〈死都〉遺跡調査団長ラサロ博士が集まっていた。


(ヒスカラ王国の晩鐘 45/エルフ文明の謎 10)



挿絵(By みてみん)

挿図/(C)奄美「大尉」

     10 ミステリー


 第二の殺人事件・遺跡調査団長補佐フェリペ・ゼラノ博士の殺人があった〈死都〉遺跡内にある遺構〈水車小屋〉だ。


 私・ブレイヤー博士の横にいる〈姫様〉レディー・ナモンが、集まった面々に、

「起きたことを時系列に沿って整理してみましょう。――まず私とブレイヤー博士を乗せた親衛隊飛行艇で、〈死都〉遺跡にやってくる。飛行艇発着用に使う川の桟橋で、私たちを出迎えてくれましたのが団長補佐。そのとき、前団長のケサダ・バコ博士は〈蛇紋岩神殿〉で殺害されていた……」

 第一の事件が起きたとき、殺害現場に最も近い位置で測量作業をしていたのが、測量士のカシニ・エルミートと相棒の測量助手アンドレス・バレスの二人で、背中から鋭利な刃物で心臓を刺された前団長の悲鳴を聞いて、中に飛び込むが、すでにこと切れていた。


 発掘現場関係者で、団長に因縁があるのは、前団長夫人でカメラマンのナディア・バコ、ナディアの愛人である測量士、手癖の悪い測量士補、そして団長に研究成果を横取りされた経緯のある団長補佐だ。


 殺害現場の〈蛇紋岩神殿〉内部には、天井から吊った細紐にナイフを結わえ、遠心力を利用して、前団長の背中から刺すというトラップがあったが、実験の結果、致命傷に至らないことが判っている。――これは犯人が捜査を攪乱するための偽装だ。

 他方、前団長夫人には、紐で石を飛ばす〈投石器〉で狩猟をする特技があり、ナイフを投げて殺害したのではないかと私は疑った。――だが、〈姫様〉は、団長補佐の仕業だと推測していた。


 〈姫様〉が、

「団長補佐は、朝方、前団長を誘って〈蛇紋岩神殿〉に訪れ、前団長が油断して背中を見せたところで後ろからナイフで刺し、血の付いた凶器のナイフは布にくるんで服に忍ばせ、持ち帰った。それから何事もなかったかのように、私達が乗った飛行艇の到着時刻に出迎えに来た。――では、測量士と測量士補の二人が聞いた前団長の悲鳴はどういうことか?」

 後任の〈死都〉遺跡調査団長ラサロ博士と、親衛隊のガスパーレ大尉が顔を見合わせてから、肩をすくめて見せる。

 単純な話しだ。

 団長補佐に刺された前団長が、この時点ではまだ息があり、断末魔の叫びを挙げたというわけだ。

 団長補佐は捜査を攪乱するため、あらかじめ、事件の数日前に〈トラップ〉の痕跡を作っておいた。


 〈女王様〉警視がここで口を挟む。

「では、レディー・シナモン、ここ〈水車小屋〉で起きた第二の事件・団長補佐の殺人はどう説明するの? 私はもう犯人は判っているけど、貴女の推理も聞いてあげてもよくってよ」

「レディー・グラシア警視、貴女はどのようにお考えですか?」

「まだ確証がないから、今は言及を避けておくわ。――レディー・シナモン、貴女の考えは?」

 ――実は、本件に関心を持たない〈女王様〉が、犯行を推理しているはずがあるまい。


 そんな警視を尻目に〈姫様〉が微笑して、

「団長補佐を殺害するのは怨恨というよりも、犯行の全容が明らかにならないよう、〈黒幕〉に口封じをされたと見るべきでしょう」

「黒幕?」

 警視が素っ頓狂な声を上げつつ、後任の団長・ラサロ博士の顔を見た。

 ――なるほど、新団長を疑うのには一理ある。〈死都〉遺跡調査を指揮し、成果を出すということは名声を得てアカデミーでの存在感を強めることになる。ラサロ博士が、団長補佐をそそのかして前団長を殺害。そしてちゃっかりと自分が後釜に座るというのは筋が通る。


 黄金の髪を後ろで束ねた貴婦人が小首を傾げた。

「第一の事件で、前団長が団長補佐に刺されたとき即死ではなく、しばらく息があった。――それは素人による犯行だからです。――ところが第二の事件で、団長補佐が刺されたときは即死で、残された凶器のナイフの指紋は丁寧に拭き取られていた。殺害方法があまりにも鮮やかで、プロによる犯行、現役軍人あるいは元軍人による犯行であると考えられるのです」

 ――そんなことができる人間が、現場関係者にいるのか? 前団長夫人、測量士と相棒の測量士補のうちできそうなのは? 元軍人だった測量士補か? だが彼は戦闘員ではなく陸地測量部に在籍していたのだ?


 〈姫様〉がガスパーレ大尉を見遣った。

「大尉、団長補佐が殺害されたとき、どこにおられましたか?」

 ガスパーレ大尉が、ポシェットの拳銃を引き抜いて後ずさりを始め、飛行艇のある桟橋に駆けて逃げてゆく。


               ノート20231031

【登場人物】

01 レディー・シナモン少佐:王国特命遺跡調査官

02 ドロシー・ブレイヤー博士:同補佐官

03 ガスパーレ・ドミンゴ大尉:副王親衛隊士官

04 ケサダ・バコ博士:〈死都〉遺跡調査団長

05 フェリペ・ゼラノ博士:団長補佐

06 ナディア・バコ:団長夫人,カメラマン

07 カシニ・エルミート:測量士

08 アンドレス・バレス:測量助手

09 ロドリゴ・ラサロ博士:後任の〈死都〉遺跡調査団長

10 グラシア・ホルム警視:新大陸シルハ警視庁から派遣された捜査班長

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