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やるせなき脱力神番外編 橋の上  作者: 伊達サクット
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番外編「橋の上」4

 上陸後、ハリクとリーセルはすぐに冥王軍の警察隊を呼び、ゼラットの海賊船を引き渡した。

 そして、『生死問わず』の確約通り、ゼラット一味を倒したことによる賞金が支払われることとなった。

 警察隊の屯所で支払われた賞金は50万G。

 中核従者であるハリクの給金のおよそ半年分、管轄従者であるリーセルのおよそ四ヶ月分、といったところだろうか。

「100万Gのはずですけど?」

 リーセルが手配書を出し、賞金を渡した刑事に問いかける。

 手配書を覗き込んだ狼の獣人タイプの刑事が目を細め、すぐに返答を寄越す。

「ああー、これ古い手配書だね。この前ランクの見直しがあって変わったから。ゼラット海賊団ね、A級からC級になった」

「何で2ランクも下がってんの?」

「あんたが抜けたから下がった」

 刑事に指を指されたリーセルはぐうの音も出なかった。

 ゼラット海賊団の弱体化の原因は、正にリーセルが離脱したためであった。

 屯所には、たまたま別件の賞金を受け取りに来ていたメガモリジョニーもいた。

 この前の破壊坊ヴェン・Kとの戦いで受けたダメージはすっかり回復しているようだ。

「ちぇっ、ゼラット海賊団俺が狙ってたのになー。先越されたぜ」

 悔しそうに言うメガモリジョニーに対し、ハリクはどう返していいか分からず「ああー……」としかリアクションを取れなかった。

 屯所を後にした二人。賞金はその場で紙幣によって支払われた。

 リーセルが十本の足をくねらせて帰路につきつつ、ハリクに言う。

「これがあなたの分け前」

 リーセルが一万G紙幣を十枚で束ねた札束を、三つハリクに向ける。

「いえ、私何もしてないし、リーセル殿の足を引っ張った身ですから」

「そういうこと言わないで。元々職場の任務には全く関係ない私の私事に巻き込んだんだから。迷惑料として受け取って」

「30万だと半分以上だけどいいんですか?」

「当然よ。命の危険に晒したんだから。本当に悪かったわ。ごめんなさい」

 リーセルがハリクから物憂げに目線を落とし、銀髪をふわりと揺らす。

「……分かりました。そういうことであれば、遠慮なく頂戴致します」

「はい」

 改めて紙幣の束を差し出すリーセル。

 ハリクは一度頭を下げ、両手で10万Gを三束、計30万Gを確かに受け取った。

「正直、非常に助かります。有難いです」

 ハリクは逆にリーセルの足手まといになったと自分自身を恥じていたぐらいだったが、ここで固辞してもリーセルを辛くさせるだけだろうし、彼女の言う通りハリクは巻き込まれた側面もある。ハリクは納得して30万Gを受け取った。

「感謝するわ。受け取ってくれて」

「はい。でもリーセル殿は悪くないです。本当に」

「そう言ってもらえると嬉しいわ」

 リーセルが笑顔を見せた。ハリクも会釈を返す。

 その後、家路につくため二人が別れる際に、またリーセルから投げかけがあった。

「今回の借りを返すということで、私が直々に肉弾戦を教えてあげる」

「えっ? 肉弾戦?」

「そう、あなた魔法使いだから物理弱いでしょ? 私がトレーニングつけてあげる。今回のようなときも、生存率上がると思う」

「了解しました。ありがとうございます」

 リーセルと肉弾戦の訓練。

 一人になった帰り道、ハリクはリーセルとのトレーニングがどんな風になるのか、延々と想像を巡らしていた。



 後日、ハリクは王都の貴族街にあるリーセルの屋敷に招かれた。

 例のトレーニングをするということだ。職場の訓練場でやるものと思っていたが、リーセル曰く、任務外の出来事での借りを返すわけだから、プライベートの時間で行わねばならないとのことであった。

 代々軍人の家系であるというスキュラーケン家の屋敷は、中流貴族の中でも立派な方であった。

「お嬢様はお庭のプールにいます。ご案内致します」

 屋敷を訪ねると、ハリクを迎えた執事にそう言われた。執事の後をついていくと、大きなプールのある庭園に案内された。

 リーセルは、そのプールで激しく水しぶきを立てて泳いでいた。十本の足を激しく運動させての凄まじいスピードだ。

 プールサイドに寄るとこちらに気付いたようで、リーセルが上がってきた。

 この前の海賊船のときのようなビキニアーマーではなく、黒い本当のビキニ姿だった。

「お疲れ様です」

「いらっしゃい」

 挨拶するハリクに対し、リーセルが微笑む。

「今日水着は持ってきた?」

 続けてリーセルが問う。微笑んだまま。

「いや、持ってきませんでした」

 ハリクが目を丸くして言う。泳ぐことなど全く想定していない。

「そしたら、ウチに男用のがあるから貸してあげる。今日水中戦の訓練するから」

「あ、はい」

 リーセルから借りたサーフパンツに着替えてプールサイドに戻るハリク。リーセルに促されるまま、二人でプールに入る。

「水中では触手で相手に絡みついてくる魔物が多いの。まずはそういった敵に捕まった状況を想定して、そこから脱出する訓練よ」

「えっ?」

「ちょっとじっとしてて」

 リーセルはプールの中で十本の足をハリクに向け、グルグル巻きにして、吸盤を吸いつけてきた。

「わ、わわわわ!」

 慌てるハリクをよそに、リーセルの足がギリギリと巻き付いてくる。

「じゃあ、ここから脱出してみなさい」

 リーセルがハリクの首筋に両腕を回し、黒いビキニに包まれた豊満な胸を押し当ててくる。

「ちょ、ちょっと近くないですか!?」

 たまらずハリクが言う。

「接近戦なんだから当たり前でしょ。まさか何か変な想像してる? やらしいわね」

「いや、そんなことないです!」

 リーセルが冷たい軽蔑の眼差しを向けてきたので、咄嗟にハリクは否定する。

「じゃあ全く問題ないじゃない。ただ肉弾戦の特訓してるだけなんだから」

「はい。確かに……」

 あまり釈然としないが、上辺だけ納得してみせる。

「じゃあ行くわよ」

 リーセルが巻き付いた十本の足でハリクをぎゅっと締め付けてきた。

「うっ! 苦しい」

「さあ、この拘束をほどいてみなさい」

「んんんん~!」

 ハリクは力んで巻き付いた足を解こうとするが、全くびくともしない。

「だ、駄目です……」

「もっと力入れて頑張ってよ」

 言われるままに抵抗するが、全く見動きが取れない。リーセルの足はもがけばもがく程に締まっていくようだ。

「駄目です。ギブアップ」

 どうにもならずに音を上げる。

「抜けないといつまでもこのままだから。真面目にやりなさい」

「う~ん! う~ん!」

 精一杯力んでみるが、リーセルの拘束を解くには遠く及ばない。

「やっぱり無理です」

「無理だなんて決めつけちゃ駄目。もっと頑張ってみなさい」

 言われて再び力を入れるが、段々と疲れてきて、抵抗する力も弱くなっていく。

 こうしてリーセルの足に縛られたまま、時間だけが過ぎていった。

 この膠着状態になって随分と時間が経ち、吐息が顔や首筋に当たる程に顔を近づけているリーセルが苛立った様子で腕を組む。

「なんで抜けようとしないの? あなた私に気があるわけ? ずっとこうしていたいの?」

「いや、どうしたって無理で……」

「そんなことないわ。あなたあえて手ぇ抜いてるでしょ? せっかく私が直々に接近戦の修業つけてあげてるのに」

「いやいやいやいや、んなことないですよ?」

 ハリクは苦笑してかぶりを振ってみせる。厳然たる事実。今のハリクの十倍の膂力(りょりょく)があったとしてもリーセルの十本足の拘束を振り解けると思えない。

 再びこの状態のまま時間が経つ。リーセルに度々叱咤され、ハリクは手加減を要求するが、彼女は「元々弱めにしてあげてんだから。頑張ればできるはず」と言って聞き入れてくれない。

「やっぱ、ずっとこうしていたいわけ?」

 リーセルが間近で冷ややかな視線を当ててくる。

「そんなことないです!」

「ってことは、この訓練内容が不服ってこと?」

「そんなことないです!」

「分かったわ。そんなに私の足が好きなのね。きっしょ。下心見え見えのおじさんね」

「そんなことないです!」

「じゃあなんでさっさとホールド外さないわけ?」

「無理です!」

「だって全然力入れてないんだから外せるはずよ」

「そんなことないです! 本当に力入れてないんですか? 嘘でしょう!?」

「それはこっちのセリフよ。やっぱハリク、こうやって女の生足にロールされていたいからできない演技してるんでしょ?」

「そんなことないです!」

「きっしょ! マジできしょいんですけど! 何? ドM!? ドMなのハリク?」

「そんなことないです!」

「じゃあこのぐらい抜け出してみなさいよ。ほら、敵はあなたの都合なんて考えてくれないんだから」

 そう言ってリーセルは巻き付けている足を下げ、ハリクの頭を水中に漬けた。

「ゴボボーッ!」

 泡を吹いて苦しむハリク。リーセルはすぐに引き上げる。

「ブハッ! ハアッ! ちょ、ちょっとやめて下さい! それは駄目! 死んじゃいます!」

 これはシャレにならない。たまらず抗議するハリク。

「確かに、ハリクの言う通りだわ。水中戦の訓練なんだから、万一溺れるような事故にならないよう、安全対策はしっかりやらないと」

「はい」

「水の中でも息ができるようになる魔法をかけてあげる」

「へー、そんなのあるんですね」

 感心するハリク。

「あなた魔術士の割に以外と知らないこと多いわよね」

「そうなんですよね~」

 魔法に関しては割と我流の要素が多いハリクであった。

「じゃあ、ちょっとかけるわね」

「お願いします」

 リーセルの唇が魔力を帯び、青く、おぼろげに光り始める。

 そして、目を僅かに細め、ほんの少しの笑みを見せながら、自らの唇を、ハリクの唇に付けようと近づけてきた。

 思わずハリクは目を見開く。

「ちょ、ちょちょちょ!」

「何?」

「まずいですよ!」

「何で? 術者が対象に唇を重ねることで魔法がかかるのよ」

「でもこれは、ちょっと、まずいかと……」

 言葉を濁しながら顔を遠ざけるハリク。しかし全くと言っていい程身動きが取れないので、ほとんど意味を成さない。

 リーセルのクールかつ妖艶な吐息がハリクの首筋をくすぐる。瞬間、ハリクの全身の皮膚がぞわっと騒ぎ、ブルッと震える。

 すると俄かに足の締め付けが強くなり、冷たく熱いエネルギーがサーフパンツ一丁のハリクの胴体に伝導していく。

「だってそういう魔法なんだから。万一溺れないための安全でしょ。駄目なの? どうして?」

「……その、やっぱり……、キスは……」

 気後れしながら言葉を詰まらせる。慎重に言葉を選んだつもりが『キス』というド直球な物言いになり全く選べていない。

 ハリクは自らの動揺を自覚していく。

「そういう捉え方するわけ? 勘違いしないで。こういう魔法なんだからしょうがないじゃない。水中での訓練で安全対策は怠ったらいけないでしょ?」

「そうですが……。もし誰かに見られたら」

「ここは私の屋敷のプライベートプールなんだから、誰に見られるっていうの? あなたん()のような、セキュリティ対策皆無の一般平民のボロ家とは格が違うのよ。安心なさい」

「いや、そういう問題では」

「それに、これはただの接近戦の修業で、今かけようとしてる魔法も、あくまで水中での事故を防ぐ為のもので、あなたが勝手に妄想しているようなそういう、いわゆる男女の性的な要素は全くないけど、仮にそう誤解されたとして、何か問題ある?」

 リーセルが苛立った様子で言う。視線は冷たいが、同じく熱い。先程からの彼女の吐息と同じだ。プールに入る為に眼鏡を外したハリクの視力でも、彼女の青く澄んだ瞳に映った自分の姿がはっきり見えてしまう程の近い距離。

「いや、誤解されたらリーセル殿に申し訳ないので」

「当然よ。あなたみたいに弱い男、私が異性として意識するなんてあり得ないけど、仮に、これは仮によ? あなたと私がそういう関係って誤解されて何か問題でもあるわけって言ってるの。何? 私とそういう関係だって思われると迷惑? 私じゃ駄目?」

「リーセル殿じゃ駄目とか、そういう問題じゃなくて、ただ」

 ハリクがその先を言おうとしたら、リーセルは不意打ち的に、突然自らの唇をハリクに重ね合わせてきた。

「んっ!」

 ハリクは塞がれた唇の内側で思わず声を出す。

 リーセルが唇に塗った魔力がハリクの口に伝わり、喉から肺に魔力が流れる。その瞬間、リーセルはハリクと共に水中に潜り、キスをした状態のまま、プールの底にハリクを押し倒した。

 プールの底に叩きつけられるような形になるが、背中に回っているリーセルの柔らかい足がクッションになって衝撃はない。仰向けのハリクにリーセルの上半身が覆いかぶさるような体勢となる。

 両腕も使えず、顔もリーセルの両手で抑えられ、全く抵抗できない。しばらくの後、リーセルがゆっくりと唇を離したことで、ようやく水中の中でも呼吸できるようになっていることに気付く。口でも鼻でも息ができる。魔法の効果だ。

「目も痛くないでしょ? これが水中適応の魔法。私のは丸一日保つわ。さあ、続きよ」

 水棲タイプのリーセルの声は、水の中でも普通にハリクの耳に届いた。

「待って下さい! その、今言おうと思ったんですけど、自分彼女いるんです!」

 そう言ったハリクの言葉は、リーセルの水中適応魔法により、彼女と同じように水の中でも良く通った。

 リーセルの顔に、微かな驚きの表情が生まれた。

「……何? そうなの?」

「はい。言ってはいなかったんですが、そうなんです」

 ハリクがリーセルと、そして今自分が交際関係にある女性・アイリに対して、申し訳ない気持ちになってリーセルから顔を逸らす。

 しばらくの沈黙。水に包まれた無音の世界。

「ふーん、そうなんだ」

 気まずい無音を破り、リーセルがぽつりとこぼす。

「はい、確かにこれはただの水中訓練で全く問題ないし、他人の目もない場所っていうのは重々承知ですが、やっぱり私自身の中でこれは線引きしたくて」

 まさかあんな風に、ハリクが喋っている最中にいきなり唇を付けてくるとは予想外だった。あと僅かに早く、言えていれば。

「だから勘違いしないで。私にその気があるわけないでしょ。とは言え、まあ確かに、この状況は他人から客観的に見ると誤解されても仕方ない状況ね。それじゃあ、ちょっと休憩しましょうか」

「は、はい……」

 ここでようやくリーセルは足の拘束を解き、プールから上がった。

 ハリクもそれに続こうとしたが、下半身がすっかり固くなり、サーフパンツが隆起していたので、一旦クールダウンしてからプールを出る。

 そこで、全身がリーセルの吸盤の跡だらけになっていることに気付く。

「吸盤の跡、ついちゃったわね。あなたの彼女は私のこと知ってるの?」

「いえ、彼女には職場の話は全然しないんで」

「そう。もし何か聞かれたら、任務中に海の魔物に捕えられてできた跡だって言いなさい」

「はい」

 とりあえずハリクは相槌を打つが、素肌に吸盤の跡があるのは不自然だ。アイリから「裸で戦ってたの?」と突っ込まれそうである。別の理由を用意せねばなるまい。

「ねえ、ねえったら!」

「え? あっ、はい、はい!」

 何度も呼ばれていたようで、咄嗟に意識をリーセルに向け直す。

「何だんまりと考え込んでるのよ? 何か後悔でもしてるの?」

「いえ、別に、リーセル殿が言ってたじゃないですか? 全く問題ないですよね?」

「当たり前でしょ。さっきの吸盤の跡の会話とか、一見不倫関係にある男女の示し合わせのようだけど、全くそんなことないからね? あくまであなたの彼女を無用に心配させたくないってだけだから」

「はい」

「でも、自分で言っといてなんだけど、この確認も浮気臭いわね」

「でもただの戦闘訓練ですから」

「そうよ。そもそもあなたが彼女持ちのくせに、私とあわよくばワンチャンなんてキモい下心見え見えだから、変な空気というか、誤解されそうなシチュエーションに見えちゃうのよ。あなたの恋人に恨まれたらいい迷惑だわ」

 リーセルがいつもの冷たい瞳でハリクを見下し、吐き捨てるように言う。

「いえ、それは決してないです! そんなつもりは!」

 ハリクが首を振って本心を言う。

「チンポあんなにビンビンにさせときながら言っても説得力ないのよ。さっきすぐプールから上がってこなかったけど勃起冷ましてたんでしょ? ロールしてる最中、ずっと固い感触当たってたわよ。口でどんなに誤魔化しても、体は正直なのよ」

「違う違う、あれは違うんです。健全な男性なら、どうしてもその気がなくても身体的に反応してしまうことってあるんです! これはもう自然な現象でしょうがないんですよ!」

 必死に弁解するハリク。

「……あっそ、まあ、そういうことにしといてあげる。でもホントにきしょいわね。あなたみたいなきしょい男と付き合ってくれてる彼女さん、大事になさい。いるならもっと早く言いなさいよ」

「はい。すみませんでした。本当にただの戦闘訓練だと思っていたもんで。あえてカミングアウトする必要性を感じなかっ……」

「だからこれはただの戦闘訓練じゃないの。じゃあ本当は何だっていうの?」

 リーセルがハリクの言葉を途中で遮り、言葉を被せる。

「いや、ただの戦闘訓練です」

「そうよね?」

「はい」

 結局、休憩の後は、もう水の中には入らなかった。ハリクだけローブに着替え直し、プールサイドで槍の訓練を軽くして終わってしまった。

 まるでアリバイ作りのように取って付けたような訓練で、どこまで意味があったかは分からない。

「じゃあ、今日はこの辺で終わりにしましょう。お疲れ様」

「お疲れ様です。ありがとうございます」

 今日のところはこれで訓練を終え、ハリクはスキュラーケン家の立派な屋敷を後にした。

 当初はリーセルが「仕事の後と非番の日、最低でも週二回はマンツーマン指導」と言っていたが、今回の一回のみで、二度とリーセルがハリクを屋敷に招くことはなかった。

 後日、リーセルから、貴族街に入る為の通行証を返すように言われた。これが修業の終わりを暗に物語っていた。

 ハリクは、一回しか使わなかった、スキュラーケン家の紋章とリーセルのサインが書かれた、貴族街ゲートの通行証をリーセルに返却した。

 結局、数日後に吸盤の跡が自然と消えるまではアイリと会うこともなく、リーセルは上司として、これまでと何ら変わらない日々は続いていった。


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