405号室で二人
「雰囲気あるね」
”405”と書かれた金属プレート付きの扉を開くと、白を基調にした高級感のある一室が現れた。目に飛び込んでくるのは、天井からぶら下がるきらびやかなシャンデリアや、金色に白のカバーを被せたランプなどの、高級感あふれる品々だ。
「シャンデリアはプラスチック、ランプの金色はメッキかな?」
「もう、水をさすようなこと言わないでよ」
カオリにバンと背中を叩かれ、僕は軽く笑い返す。
「悪い悪い」
「へぇ。シャワールームまで高そう」
カオリの方を振り返ると、シャワールームはふくらはぎから肩の下あたりまでにスモークがかかったガラス張りだった。シャンプーなんかも高そうな容器に入れられて、雰囲気作りに一役買っているようだ。
「他とおんなじ値段でこれなんだから、得した気分だね」
早くも脱ぎ始めたカオリの背中に話しかける。聞いているのかいないのか、カオリはジーンズをためらいもなく脱いで下着姿になったかと思うと、背中に手を回してブラも外し始めた。
「ねぇ、一緒に入ろ?」
胸のあたりまで伸びた茶髪をさぁと散らして、カオリが振り返る。
「うん」
答えながら、僕も慌てて脱ぎ出した。トランクスとズボンをいっぺんに下ろし、半袖とインナーのシャツもいっしょくたにして床に放る。
脱ぎ終わると、カオリの雪のように真っ白なお尻がシャワールームに入っていくのが見えた。追いかけて、一人分のスペースしかないシャワールームの奥にカオリを押し込む。
「ちょっと」
笑いかけてくるカオリの肩をつかんで抱き寄せ、僕はカオリにキスをした。
ドロドロに溶けていくような、長い長いディープキスだった。
「んっ」
僕の方から唇を離すと、カオリは名残惜しそうに追いかけてきたが、唇はすぐに離れた。残念そうな顔をするカオリのおでこの髪をかきあげてキスをする。
「もう」
照れ臭そうに笑うカオリに、僕も笑いかける。
「洗いっこしよ」
カオリはシャワーがお湯になったのを手で確認してから、背中にかけて流す。
「いいよ」
僕が答えると、視線に気づいたカオリがシャワーのヘッドを僕の顔に向けてきた。
「エッチ」
笑ってごまかし、僕らは互いの体にボディソープを塗りたくった。
「やだっ」
ついでとばかりに胸を揉むと、カオリはくすぐったそうに身を引く。
僕の太ももに置かれていたカオリの手が、僕の足の付け根に向けてすべっていく。股の間までたどり着いたところで、カオリは僕のそそりたつそれを軽くなぞった。
「フフッ」
照れ臭そうにするカオリに、僕はまたキスをする。
今度は一瞬だけで、すぐに顔を離した。
「ねぇ、もっと」
赤くなりながらおねだりするカオリ。ボディソープで泡だらけの身を寄せ合い、僕らは再び深いキスをする。
体は重なり合って、境界線がわからなくなりそうだった。僕と、カオリとの境界線が、少し曖昧になっているようだ。
シャワーで体を流し終え、フカフカの白いタオルで軽く体を拭いて、僕らはベットに飛びこんだ。ベッド脇に置いた缶ビールや酎ハイを飲みながら、体を重ねる。
獣のように貪り合いながら、二人で宙を待っているようだった。僕とカオリを隔てる境界線は完全に溶けてなくなり、区別が付かなくなっていく。
それが最高潮にまで達した時、カオリの中で、僕のシャンパンが弾けた。
覚醒状態になって、頭が冴える。
少しだけあけた窓から冷えた風が吹いて、おりかさなった二人の体の境界線が戻ってくる。
体を起こして、僕が窓側をむいてベッドに腰掛けると、となりにカオリが座った。
僕の肩に頭をのせて甘えてくるカオリの首元に、僕は手を回す。
カオリの、柑橘系の甘いフレッシュな香りがうなじから溢れ出す中、僕はまた、カオリのほっぺたにキスをして、僕の肩にのったカオリの頭の上に、自分の頭を重ねた。