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それにしても、私はどうしてあんなに盲目的に皇太子のことが好きだったんだろう?
一回殺されたことと、どれだけ訴えても信じてもらえなかったという裏切られた気持ちからか、今はもう皇太子に対しての好意が全く湧かない。
それどころか、会うのが怖いくらいだ。
皇太子の婚約者である私は月に一回皇太子とのお茶会が義務付けられているから避けるのは難しいんだけど。
そして逆行して3日目が、そのお茶会の日だった。
「お嬢様!起きてください!
楽しみにされてた王宮での王子とのお茶会の日ではないですか!」
朝からアンに叩き起こされて、ベッドから引きずり出された。
「ちょっと具合が悪いみたいなの。
今日は行けそうにないわー」
ふらふらと椅子に座ってぐったりしてみる。
演技なんてしたことないから、思わず目が泳いでしまう。
でも絶対に今日お茶会に行くわけには行かないのよ!
「お嬢様ったら…
そんな仮病がこのアンに通用すると思いますか!
お嬢様のことなら誰よりもわかっているんですよ!」
有無を言わさず、アンがドレスを着せようとしてくる。
やっぱりアンには通用しないか…
でもここは具合が悪いで押し切るしかない!
「ほんとうよ!
本当に具合が悪いの!こんな状態じゃ王子に迷惑をかけてしまうわ!だから行けないの!!」
必死でアンとドレスを引っ張り合いながら言い合いをしていると、ふとアンが考えるように力を緩めた。
「お嬢様…
わかりました。そんなに具合が悪いなら、旦那様にお話ししてきます。どうぞベッドでお休みください。」
急に大人しくなってアンは部屋を出て行った。
アンったらどうしたのかしら。信じてくれたとか?
とりあえず、病人らしくベッドに急いで横になることにした。
しばらくして公爵である父が部屋にやってきた。
「具合が悪いと聞いたよアリア。
大丈夫かい?王子には私から謝罪の連絡をしておくからゆっくり休みなさい。
しかし、珍しいねえ。いつも体調管理も時期皇后の務めと言って完璧であろうとするお前なのに。
もっと肩の力を抜いていいんだよ。」
どこか安心したように笑いながら父は部屋を出て行った。
こんなに優しい言葉を言われたことなんて今まで一度もないから、驚いて思わず起き上がりかけたけど、具合が悪いフリをしていることを思い出して慌てて寝直した。
いつも完璧であることに拘ってきたけど、私が求めていた完璧な皇后の姿は結局なんの役にも立たなかった。
てっきり私が完璧であることを家族も望んでいるんだと思っていたから、本当は今日のお茶会に行かないことをすごく怒られると思っていたけど。
もしかして、私の思い込みだったのかも。
なんだか心が温かくなるような気がした。