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「私が殿下の婚約者となったのは、5年前の神官様のお告げを受けて当時そのお告げに該当する色彩を持つ令嬢で皇太子殿下と家格・年齢共に一番釣り合うのが偶々私であったためですね。
つまり皇太子妃としての役割をきちんとこなせる能力があり、春色の色彩を持つ令嬢でかつ私よりも影響力の強い方が現れたら、私は簡単にこの立場を失います。」
「…そうだな。」
半ば諦めのような気持ちで話せば、皇太子は静かに頷くだけで私の言葉を否定しなかった。
「ですから私は今まで努力を重ね自身の能力を示し続けてきました。しかし、思うような評価を受けることはできていません。」
「君の公爵令嬢としての能力は高く評価している。」
その言葉に小さく笑みを漏らす。
「ありがとうございます。しかし、社交界で自分がなんと言われているかはわかっています。私の瞳と髪色は紫に黒と春色と称すには暗すぎますし、性格も明るく社交的で温かみのある人間性とは言えません。これでは、春色の乙女に相応しくないと皆に言われていても仕方ありませんわ。」
前回の人生でも、“春色の乙女“には相応しくないと陰でずっと言われ続けていた。
その噂を払拭したくて、皇太子妃としての確かな立場が欲しくて、さらに自分にも他人にも厳しく結果を求めるようになり、皇太子に愛を求めるようになった。
結局その行動が全て裏目に出て、黒百合令嬢なんて呼ばれて処刑までされた。
「5年間、殿下の婚約者としてふさわしいよう努力してきましたが結果がこれですもの。私は皇太子妃の器ではないのだと気がついたのです。きっと私が社交界デビューする頃には、時期皇太子妃として素晴らしい人間性と能力を持った美しい令嬢が現れることでしょう。」
実際に私の社交界デビューの日に美しいフェリチータが現れて、国中が彼女が春色の乙女だと沸きたった。
流石に今が2回目の人生で未来がわかるなんて言えないので、曖昧な言い方になってしまう。
「そうか。それで、君は私との婚約を破棄したいと考えているのか。」
一番の望みを的確に言われて、一瞬息が止まる。
「…その通りです。」
小さく頷けば、皇太子は苛立ったように髪をかきあげ小さくため息をついた。
「私の考えを正直に言えば、君の不安は分かるがそんなことで皇室との婚約を破棄しようなんて馬鹿げていると思う。君に対する貴族間の悪評も努力次第で払拭可能だろうし、それをしたいというのなら多少協力してもいい。それに、君よりもふさわしい令嬢が今更現れるなど、ほとんどありえない可能性だろう。」
話にならないと呆れたような視線を向けられる。
彼の言いたいことは良くわかる。私も皇太子の婚約者としての教育がほとんど終わって、時期皇太子妃目前の今になって、私よりふさわしいと言われる令嬢が現れるなんて思っていなかった。
「殿下の仰っていることはよくわかります。ですので、今直ぐ婚約破棄してほしいとは言いません。私が成人する18歳までに私よりふさわしいと言われる令嬢が現れなければ、私は皇太子妃として精一杯国のために努めると約束します。しかし、もしふさわしい令嬢が現れた場合は私との婚約を破棄し、この件に関してゼタ公爵家の者を罪に問わないと保証してください。」
「君よりもふさわしい令嬢がいることを確信しているような口ぶりだな。」
私の望みを聞いて、彼は探るような視線を向ける。
確信しているが理由を話してもきっと信じてはもらえないだろうから、私は曖昧に微笑んでおいた。
「君が何を望んでいるのかはわかったが、不安だからと自分の代わりを見つけてまで皇妃になるのが嫌になったのか? 以前の君は熱心に取り組んでいる様子だったが。それに、僕に対する態度が変わったことにも疑問が残る。」




