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今日は濃い紫のドレスを身につけて宮殿へと向かった。
いつも通りガゼボに向かえば、珍しく皇太子が先に来ていた。
「帝国の若き獅子、皇太子殿下にご挨拶申し上げます。」
挨拶すれば「ああ。」とそっけない返事が返ってきて、座るように促される。
「ゼタ公爵令嬢は、最近ドレスの趣味が変わったな。」
「そうですね。落ちついた色の方が似合うかと思いまして。」
じっと探るように見つめられて、思わず視線を逸らしてしまった。
「そうか。前のドレスも良く似合っていたと思うが。」
嘘だと思う。私がどんなドレスを着ていたかなんてきっと覚えてもいないくせに。
「…ありがとうございます。」
なんとか微笑んで、そう返した。
皇太子と会うと嫌でも前世を思い出してしまう。
馬鹿みたいに彼が好きだったあのときの私を。
「ドレスと言えば、そろそろ私の成人の日の礼服を考えないといけないんだ。婚約者として君も一緒に入場してもらうから、色を揃えようと思うんだが何色がいいか希望はあるか。」
「そうですね。皇太子殿下が成人を迎えられるおめでたい日ですから、真紅や金色のような派手な色合いが良いのではないかと思います。」
そう答えると、皇太子は少し驚いたように目を見開いた。
なんとなく、彼の考えていることがわかる気がする。
今まで彼の婚約者として公の場に立つことが何度かあったが、その際必ずと言っていいほど私は彼の瞳の色か髪色に似た色のドレスを着ていたからだ。
どうせ今回も、藍色か水色と答えると思われていたんだろうな。
この国では公の場ではお互いの瞳の色や髪色に似ているのものを婚約者同士で身につけることが多い。
それが、婚約者との仲の良さをアピールするのに一番簡便だし牽制の意味も兼ねてデザインなども合わせることがほとんどだ。
もちろん絶対のルールではないし、彼ははあまりそう言ったことを気にしない人だから問題はないはず。
婚約破棄しようとしてるのに仲の良さなんてアピールする必要もないし、デザインさえ似せておけば入場の時に浮くことはない。
「・・・ところで、しばらく舞踏会やお茶会に参加していなかったと聞いているが、どう過ごしていたんだ?」
じっと見つめられると、重圧に冷や汗が噴き出た。
冷たい氷のように澄んだ水色の瞳を、真っ直ぐに見つめ返して答える。
「領地で家族とゆっくり過ごしていました。最近、王都で過ごすことが多かったので、家族が恋しくなってしまったのです。」
にっこり微笑めば、彼は面白そうに口角を上げた。
「そうだったか。家族を大切にするのは良いことだ。しかし時期皇太子妃として社交界にも馴染んでおいて欲しいものだな。」
「…かしこまりました。」
今のは、領地に引き篭ってないで社交界の手綱を握っておけと釘を刺されたのよね?
微笑みながら了承しつつ、絶対にやらないわと心の中で答えておいた。




