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アウトレット

 アウトレットモールに着いて、車から降りると、唯花さんと、朋美さんが私を引っ張って色々なファッション関連のお店に連れて行ってくれた。


 「燈梨は、パンツ系がメインだけどさ、スカートメインのもあった方が良いと思うんだ」


 唯花さんに言われて、マネキンのように次々と試着させられた。

 私が、パンツメインなのは、少ないレパートリーで、より飽きがき辛いように……と、いうのと、たまたま行ったファストファッションのお店で、チュニックと、パンツの組み合わせを推していて、それが気に入ったからだった。


 いくつかの店舗を回ってみて、着ているうちに唯花さんと、朋美さんが見合わせて頷いている組み合わせがあって、2人のおススメを全て回った後で、もう1度そのお店に戻った。


 「燈梨、さっきここで着たコレ、どう思う?」


 と、唯花さんに訊かれ


 「うん。イイ感じで気に入った」


 と、答えると


 「よし!じゃあこれ買おう」


 と、言われ、次の瞬間、朋美さんがそれを持ってレジに向かっていった。


 「え!?え!?なんで?」

 「なんでっ……て、この間、燈梨の誕生日に私ら、何もあげてないしさ。ちょっと遅れたけど、誕生日のプレゼント」

 「そんな……悪いよ」

 「別に、私ら、あげたくてあげてるんだしさ、友達に誕生プレゼントあげて、なんかおかしい訳?」


 唯花さんに言われて、私が黙っていると


 「いいんだって、燈梨。今回、燈梨が来るって聞いた時から、私とトモの中で決めてた事だからさ。貰ってやってよ」


 と、唯花さんは言いながら、私の背中をポンポンと叩いてきた。

 私は、唯花さんを上目遣いで見ながら


 「ホントに買って貰っちゃっていいの?」


 と、訊くと、唯花さんはニッコリしながら頷いたため


 「ありがとう。唯花さん、朋美さん」


 と、朋美さんがレジから戻ってくるのを待って、改めて言った。

 2人はニコニコしながら、頷いていた。


 今度は、フー子さんに連れられて、靴とサングラスを見て回った。

 靴に関しては、私は家を出てからずっと1足しか持っておらず、今回改めてフー子さんから指摘を受けたのだ。運転に向いていない……と。


 ドライビングシューズなどというものもあるが、普段履きもするという観点から、フー子さんのおススメは、軽量で柔軟性のあるスポーツシューズだった。

 サングラスに関しては、フー子さんに限らず、みんなが持っていた方が良いと言っていた。


 「サンバイザーがあっても、隙間から入ってきたりするし、サンバイザー降ろすと、視界が狭まるからね」


 と、言われて、スポーツサングラスを色々見ていて、自分にフィットしたものを選んだ……ところ、靴と一緒にフー子さんにひったくられ


 「燈梨、これは、あたしとミサキからの誕生プレゼントってことで」


 と、言われた。

 私は、その時全てを悟った。今回、私がやって来ることが分かった段階で、みんなは私にプレゼントをしようと決めていたのだ。

 ならば、変な遠慮は、逆にみんなを困らせるだけなので、私は、フー子さんが戻ってくるのを待つと


 「フー子さん、ミサキさん、ありがとう」


 と、満面の笑みで言った。

 すると、フー子さんが


 「そうだぞ燈梨ー。変に遠慮なんかしないで、貰ってやってくれよー。ウチらの間では、誕生プレゼントなんて、自然にみんなやってるんだからさ」


 と、言って嬉しそうにしていた。


 目的の物を入手したため、あとはみんなから、どんなお店が流行っているかを訊いたりして、アウトレット内をあちこち散策した。


 そして、沙織さんが話していた模型屋さんにも行った。

 プラモデルも品ぞろえが豊富だったが、モデルガンや、ラジコン、フィギュアなど、趣味の物なら何でも揃うようなラインナップで、物凄く興味深いお店だと思った。


 プラモデルを見ていたのだが、店内にある鉄道模型のディスプレイには、思わず目が釘付けになってしまった。

 線路沿いの街の建物や、車などがバラエティに富んでおり、そのどれもがこの店内で売っているものだというのが、私にとって、信じられない感じだったが、すぐ後ろの陳列棚には、ありとあらゆるビルや家、お店や駅舎のディスプレイが売っていて、私にも街のジオラマが作れると思うとワクワクしてしまった。


 すると、沙織さんが言った。


 「燈梨、これに興味あるなら、今度フォックスの地下室に行ってごらん。射撃場の奥に鉄道模型のディスプレイ、作ってるから」

 「マジ?」


 沙織さんはニッコリして頷いた。

 そして


 「ミニッツって言って、小さめのラジコンカーね。コイツのコースもあるから。本体は、前に舞韻が新しいの買って、放り出していったのがあるから、それで遊んでればいいと思う」


 と、そのミニッツが並んでいる場所で、私に説明してくれた。

 見てみると、ボディが着せ替え出来るため、その日の気分で、全く違ったタイプのボディにできるのが楽しそうだと思った。そして、そのボディも結構精密で、集めても楽しいと思わせてくれた。


 プラモデルより、一回り小さいので、結構屋内でも楽しめそうなのもミソだな……と、思って眺めていたら、背後から沙織さんが声をかけてきた。


 「やっぱり興味湧いてきたでしょ」

 「うん」

 「私も、近々何か買うから、帰ったら一緒に遊ぼうか」


 私は、頷いて、後ろを見るとみんながいた。

 唯花さんが、私を見ながらニヤニヤして


 「燈梨~。やっぱり興味あったか。実は姉さんも持ってるから、今度、ソイツを持ってきて一緒に遊ぼうぜ!ちなみに姉さんのマシンは黄色いエボだ」


 と、言うと、フー子さんが


 「唯花より、あたしの方が速いんだからな」


 と、噛みついたが、ミサキさんに


 「フー子は、フライングスタートでユイに勝ったんでしょ!そもそも、私より遅いから」


 と、言われて


 「そんなことないやいー!」


 と、ブーたれていた。

 私は、色々なボディがあるのを見て、凄く面白いと思うと同時に、自分だったら、どんなボディを選ぶかを考えながら、今度はミニカーや、プラモデルのあるエリアに行った。


 正直、ひょんな事で、作る楽しみを覚えてから、私はプラモ道にハマってしまったように思う。あれ以降、どうしても作りたい衝動に駆られているのだ。

 それを訴えると、唯花さんが言った。


 「それは、プラモ道のジャンキーだね~。オリオリに騙されて、引きずり込まれたか~」


 そして、それを見ていた朋美さんから


 「そうなったら、その衝動があるうちに第2弾、3弾と作っていく事で、衝動も抑えられるし、作品のクオリティアップも出来るし……だよ。燈梨ちゃん」


 しかし、以前と違って明確な目的が無いため、何を作っていいのかで悩んでいると


 「特になにが……ってのが無ければ、メジャーにスカイライン、RX-7、フェアレディZあたり、スポーツ系じゃなければ、シーマとか、クラウンとかのセダン系ってのもアリ。今は、変に改造車のキットじゃなくて、この辺のオーソドックスなモデルで腕を磨くのが良いと思うよ」


 と、言われて、私は、以前の乗り比べで気になったRX-7のプラモを購入した。

 模型屋さんというところは、とっても楽しく、このまま何時間でもいられそうだと思ってしまった。

 私で、こうなのだから、コンさんがやってきたら、1日中でもいたくなるのではないか……と、思うが、それは仕方が無いと思うし、もし、そうされたとしても、私なら何も言わずに許してしまうだろうと思う。そんな場所だ。


 外に出て、駐車場へとみんなについて歩いていると、唯花さんが


 「燈梨~。FD3Sのプラモ買ったの?どんな感じに仕上げるの?色は決めたか?」


 と、訊いてきた。

 私は、特に細かくは決めていなかったので


 「前に少しだけ乗せてもらった黒いのを再現しようかと……」


 と言うと、前を歩く沙織さんが、一瞬だけぴくっとしたように見えた。


 すると、先頭を歩いていたミサキさんが、みんなの方へと向き直ると止まって


 「みんなに報告があるんだけど……」


 と、言うと、その場の空気が緊張したものになった。


 「桃華が、免許を取って、車も買っていたの」


 と、私とミサキさんしか知らない事実を、ここでカミングアウトした。

 すると、一瞬、空気が止まったかのようにみんな黙り込んでいたが、フー子さんが


 「なんだよ桃華ー!なんでウチらに黙ってんだよ。隠しやがって、マジ性格悪」


 と、言ったのを皮切りに、唯花さんが


 「桃華、なんで乗って帰ってこなかったん?で、クルマなに?……隠してるってことは、よほど凄いヤツとか?」


 と、言い、更には朋美さんが


 「でもさ、桃華、向こうでは、免許も車も必要ないって、言って取らなかったんじゃなかったっけ?」


 と、矢継ぎ早に桃華さんを囲んで、質問責めになっていた。

 みんなにもみくちゃにされた桃華さんが


 「ラパンSS」


 と、絞り出すように言うと、その場が一瞬だけシーンとなり、次の瞬間、フー子さんが


 「なんだよ桃華!なんでそんなもの買ったんだよ、そんなに隠すから、どんな凄い車かと思っただろ」


 と、茶化すと、唯花さんは


 「桃華、色なに?画像は?画像はあるの?何か困ってる事とかないの?」


 と、桃華さん目線の心配をし、そして朋美さんはそれを眺めていた。……恐らく、桃華さんのキャパを超える質問量が来ているので、静観視しているのだろう。


 案の定、桃華さんは何も喋らずに黙って携帯を差し出した。

 そこには、黒いボディのラパンSSが写っていた。


 フー子さんが、画像をスクロールして


 「おいー!10万キロ走った古い軽に30万なんて、ぼったくりじゃねーの?」


 と、言ったが、唯花さんが


 「いや、ラパンSSは1世代で消えたのに人気あるから、引き合いが強いの、しかもマニュアルは特にね。30万でなんて普通は手に入らない」


 と、それを打ち消した。

 それを訊いて、少し嬉しそうな表情になった桃華さんに、唯花さんが訊いた。


 「ところで桃華、リアワイパー、どうしたの?」

 「え?」

 「『え?』じゃない。リアワイパーが外されてるんですけど、もしかして、外されてた事にも気付いてなかった?」


 私は、改めて画像を見た。

 唯花さんは、後ろから撮った画像を見ていたのだが、確かに、この車のリアワイパーは外されて、取り付けてあった基部のネジ山には、サイコロの形をした飾りが取り付けられていた。


 「これ、うるさい修理工場持ち込んだら門前払いだよ。それに、これって後ろの車に向けて『私は後ろなんか見て運転してませ~ん』って、言ってるのと一緒だから、変な車に絡まれる率がほんの少し上がる」


 すると、様子を見ていた朋美さんが


 「桃華は、向こうで免許取って、取り立てだからアレだけどさ、雪国育ちの私らからしたら、リアワイパー外すとかマジあり得ないんですけど……だよ」


 と、援護射撃をすると、桃華さんはシュンとして下を向きながら


 「……でも、私、クルマ詳しくないし……」


 と、小さな声で言っていた。

 すると、いつの間にかどこかへと電話をしていた唯花さんが、通話を終えて戻ってくると


 「仕方ない。みんな、お昼食べたら行くよ」


 と、言った。

 

お読み頂きありがとうございます。


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