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非情の……

 その夜は、みんなで別荘へと戻った。


 別荘に到着すると、みんなが驚いたのは、桃華さんがやって来ていたことだ。

 どうやら凄く珍しい事らしい。……そう言われてみれば、唯花さんが、河原で、桃華さんは何処に誘っても理由をつけて行かない……と、言っていたように思うし、みんなの画像とかを見せてもらうと、大抵4人か、沙織さんを入れた5人で撮ったものばかりで、私は、今日、桃華さんは、みんなが名前を呼ぶまで、誰だか分からなかったほどなのだ。


 「桃華、いいのかよー?ここに泊まっても、母ちゃんにお尻ペンペンされないのかよー」


 と、フー子さんが意地悪く言うと、桃華さんはフー子さんの首を絞めながら


 「やかましい!ぷーこのくせに、私はガキじゃないんだから!!」


 と、喚いていたので、私は、そばにいた唯花さんを見ると、唯花さんは


 「桃華の家って、ムッチャ厳しくってさ。街を出歩いたりとか、外泊とかさせてくれないんだよ。高校の頃、オリオリに買い物連れてって貰って、カラオケ寄ろうって時にも、桃華だけ帰っちゃったし」

 

 と、教えてくれた。そして、朋美さんが


 「ちなみに、ウチらの中で、免許持ってないのは桃華だけ。みんなで取りに行った時も、唯一、来なかったからね。しかも、1年の頃、風子とユイが原付の免許持ってる事、チクったのも桃華」


 と、言うと、それまで、桃華さんにやられていたフー子さんが、むくッと立ち上がると、逆に桃華さんに掴みかかり


 「お前かー!!ウチらの免許のこと、生活指導にチクったの!お前のおかげで、あたしら職員室に正座させられたんだぞ!!……唯花、やっちまおう!!」


 と、言うと、唯花さんも頷いて、桃華さんにかかっていった。


 「嘘よ!トモが、嘘言ってるんだ!!」


 と、叫んだが、朋美さんは冷静に


 「今更噓つく訳ないでしょ。私、1年の時、クラス委員だったから、よく職員室に出入りしてたんだけど、桃華が、風子とユイと、あと男子1人が免許持ってるって、生活指導のタコ田にチクってるの聞いてたからね」


 と、言うと、フー子さんと唯花さんの怒りに着火し、桃華さんは、2人に揉み倒されていた。


 「こんの~!チクリスト桃華めぇ~、どうしてやろうか?」

 「唯花!コイツ、ふん縛って天井から吊るしてやろうぜ!」


 唯花さんは頷くと、桃華さんを床に押し倒し、フー子さんを見ると、無言でクイッと頷いた。すると、フー子さんはドタドタ駆けだして


 「オリオリー。縄かなんかない?桃華を天井から吊るしてお仕置きするからさー」


 と、沙織さんに訊くと、沙織さんは


 「あんたらー!いい加減にしなさいよ。これから夕飯の準備なのに、そんな事してる暇ないでしょ!」


 と、言った。すると、フー子さんは


 「ちぇー!オリオリは、裏切り者の肩持つのかよー!サイテーだ!」


 と、言ったが、直後に沙織さんが


 「あたしは、夕飯の準備を手伝いなさいって言ってるの。お仕置きするな、とは言ってない。分かる?」


 と、言うと、ニッコリして


 「分かった!」


 と、言って夕飯の準備に入った。


 今日の夕食は、地元牛のしゃぶしゃぶがメインに、私以外の人はお酒が入るため、おつまみ系が幾つか用意されていた。


 私も、ご飯は軽めに済ませて、おかずとおつまみをつつきながら、お茶で皆の雑談の輪に入って行った。……とは言っても、前半は、沙織さん、朋美さん、ミサキさんの3人と私だけで、フー子さんと唯花さんは、食事が終わると、桃華さんを捕まえてロープでぐるぐる巻きにした上で、寝室に連れて行ってしまったので、前半の女子会は、静かなものとなっていた。


 「燈梨ちゃん。明日はさ、アウトレットに行こうよ。折角だからさ、こっちで流行ってる所にも顔出しておいた方が面白いと思うからさ」


 と、朋美さんに言われて、私は、頷くと同時に、本格的にアウトレットに行くのは初めてなので、ちょっと不安な気持ちも出てきたが、それが表情に出ていたようで


 「大丈夫、大丈夫。ウチらが、おススメのところ、案内するからさ。結構ファストファッション系とか、アウトレット品とか多いからさ、安くて良いものがあるんだよ」


 と、フォローしてくれた。

 ミサキさんと話していた沙織さんが、話し終わった朋美さんに尋ねた。


 「アウトレットにプラモ屋が入ったってホント?品揃えはどう?」

 「結構、色々あるよ。ラジコン屋さんもあるから、退屈しないと思う。私も、この間、唯花と行った時、鉄仮面のプラモ買ったしね」


 と、話していた。私も、この間、コンさんにプラモデルを作った一件で、ちょっとプラモデルの楽しさというものが、分かってきてしまったので、ちょっとそのフレーズに惹かれるものがあり、明日がちょっと楽しみになった。


 すると、ドタン、バタンと、いう音と振動、更には


 「やめてー!助けてー……むぐぐぐ……うーううー!!」


 と、言う叫び声がしたので、そちらの方を見るとフー子さんと唯花さんが戻って来た。

 唯花さんが開口一番言った。


 「や~、お待たせお待たせ。これで、チクリスト桃華は片付いたし、明日はどうするの?」

 「明日は、アウトレットの後、ショッピングモールに寄ってこようと思うんだけど」


 と、ミサキさんが答えると


 「いいねー!1回燈梨と、服見たりとかしたいと思ってたんだよねー」


 と、喜んでくれた。

 そして、フー子さんが


 「燈梨~。折角だからサングラスとか、シューズとかも安いから見ておいた方が良いと思うぞ。グラサンは車に乗る時にあった方が良いからね。あたしが、エスコートしちゃうからさ」


 と、言ってくれたので、私は


 「うん」


 と頷くと、明日が本当に楽しみになった。

 2人は、私の反応に心底満足そうな顔をすると、ビールに手を伸ばして、飲み干すと


 「かぁ~!生き返るぅ~!!」

 「いやぁ~!姉さん。このために生きてるって感じがするねぇ!」


 と、おじさんのようなリアクションをしていた。

 そして、2人は、ハイボールとチューハイをそれぞれ手に取って、おかずとおつまみをつつきながら、飲み始めた。

 沙織さんが


 「あんたら、桃華どうしたの?」


 と、訊くと、フー子さんが


 「あの裏切り者、全身揉みまくってお仕置きしてやった。さすがに天井からは吊るせなかったけど、奥のクローゼットに電気消して閉じ込めてやった!」


 と、言った。

 ミサキさんと、沙織さんは、それを訊いて奥の部屋に見に行ったが、フー子さんから


 「あいつにエサを与えないでよ!」


 と、言われ、苦笑していた。


 すると、しばらくして、奥の部屋から


 「フー子!いくらなんでも可哀想よ!」


 と、いう沙織さんの声と共に、ミサキさんと桃華さんが戻って来た。

 桃華さんは、ロープでぐるぐる巻きにされているのは、さっきと同じだが、スカートは履いておらず、腰から股にかけてロープで、ふんどしのように、T字に締められて、辱められ、上半身も、無理矢理脱がそうとして、ブラウスがぐちゃぐちゃになって、ほぼ脱げていた。

 口は、ガムテープで塞がれていたのだが、顔中に落書きがされていて、2人の怒りの大きさが伺える状態になっていた。


 「そう?まだ下着脱がせてないだけ、ありがたく思って欲しいね。ついでに、花火にも参加させてやらないから!」


 と、一本調子で淡々と言うフー子さんには、いつもとは違った静かな中に大きな怒りが現れていた。すると、唯花さんも


 「そうだよ!コイツさ、全然謝りもしないでさ、マジムカつくんですけどー!!」


 と同調して怒りの態度を隠さなかった。


 2人の態度に本気を見た沙織さんは、桃華さんを連れて、もう一度奥に引っ込み、ミサキさんは、フー子さんに


 「フー子。許してあげようよー」


 と、上目遣いで言うと、フー子さんは


 「ミサキさ、アイツのことになると、すぐかばうけどさ、今回はアイツが悪いんだからね!」


 と、言うと、唯花さんも


 「そうだ、ミッキー。アイツに甘いんだって、ウチらさ、職員室に半日正座させられた上に、1週間、職員室の掃除させられて、その後で反省文書かされたんだから。その間、アイツったらさ、知らん顔してアウトレットのグランドオープンのイベント行ったり、繁華街行って買い食いしたりしてさー。マジムカつくんだもん!」


 と、すっかり怒り心頭で、手が付けられなくなってしまっていた。


お読み頂きありがとうございます。


少しでも続きが気になる、見てみたいかも……と、思いましたら、評価、ブックマーク等頂けると活力になります。


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