地下と朝
朝が来た。
昨夜は、いつものごとく飲んだみんなが暴れて、私は強制ターゲットにされて大変だった。
昨夜の他のターゲットは、朋美さんで、私と2人でもみくちゃにされてしまった。
いつもは、暴れた後、リビングでグダグダとしてしまうのだが、昨夜は、沙織さんが
「リビングで寝るんじゃないの!最後にお風呂入りなさい!!」
と、言っていたため、全てが終わってからお風呂に入ったのだ。
別荘のお風呂は、師匠のこだわりの岩風呂で広く、3人で入れるため、私は唯花さん、朋美さんと一緒に入った。
お風呂で、唯花さんから、昼間の話について
「燈梨。よく決心したね、偉いぞ。勉強なら唯花姉さんに任せとけー!」
と、言われて、私は自分の決意をみんなが応援してくれていることを感じて、心が強くなるのを感じた。……ただ、朋美さんと2人で私の胸を揉みながら話していたので、緊張感がまるでなかったのだが……。
お風呂から上がった後、沙織さんは、師匠の寝室を片付けて全員分の布団を敷いてくれており、みんなで一緒の部屋に寝た。
折角だから、みんな一緒の方が良いだろうと沙織さんが気を遣ってくれたのだ。私を真ん中にして、沙織さんを含めて全員が寝ても、余裕があるほど師匠の寝室は広かった。
部屋に入って、例のクローゼットを発見したフー子さんが
「ここが、燈梨が裸で縛られて、罠で殺されそうになったって場所だね」
と、中を探索しようとして、他のみんなも続こうとしたため、沙織さんが
「探検は明日!もう寝なさい!!」
と、一喝した。すると、フー子さんが
「ちぇー、オリオリのけちんぼ」
と、悪態をついたため、沙織さんが
「そんなに今、中が見たいなら、フー子をあの時の燈梨と同じ格好にして放り込んでやるぞ!」
と、言ってフー子さんを捕まえようとしたため、このメンバーで集まった中では、最も静かに寝ることができた。
前回泊まった時と違って、私にお酒も入っていなければ、私をいじり倒して寝させてくれない人もいなかったため、私は、ゆっくり眠ることができた。
朝食は、唯花さんとミサキさんが作ってくれた。
どうやら、4人の中で、食事当番を決めているようで
「明日の朝は、風子とトモだからな」
と、確認していた。
朝食後、フー子さんから掴まれて
「燈梨ぃ。寝室奥のクローゼット探検しようぜぇ~」
と、引きずられるように連れて行かれた。
みんなも、それに続いて入ってきて、広くはないクローゼットの中は満員になった。
あの日は、杏優が火を放ったせいで、壁が煤けていたが、すっかり直されて綺麗な状態になっていた。
「燈梨、どこに縛られてたんだよぉ」
フー子さんが訊くので
「この辺りに、鉄パイプに両手と両足広げた状態で縛られて、座らされてた」
と、答えると
「こういう感じ?」
と、フー子さんが真似てみて訊いた。……そして
「おおー!!ホントだ。こうやって縛られてると、ここから出られないよー」
と、言うと、ミサキさんが諫めた。
「フー子!燈梨ちゃんに嫌な事、思い出させないの!本当に殺されそうになったんだから!」
「燈梨。ゴメン」
フー子さんは、謝罪して、私の格好の真似はやめたが、好奇心が勝って探検は継続された。
奥まで進んで行き
「なんか、このクローゼットって部屋みたいだよね。電源取るところがあったりしてさ」
と、言った。
正直、私も疑問に思っていた。あの時は、殺されるかもしれない恐怖に、そこまでゆっくり考えていられなかったが、免許取得で、半月以上、ここに泊まっていた際に、毎日のように掃除に入ってからはその疑問を持つようになっていた。
すると、沙織さんが背後から現れて言った。
「ふっふっふー!このクローゼットはね。何を隠そう……武器なんかを作る部屋だったの」
「ええーーー!!」
私を含め、みんなが驚いたが、私には、そう言われて思い当たることがあった。
あの日、杏優が火を放ってすぐに、スプリンクラーが作動して、油に着火したはずの火は、すぐさま消火されて延焼しなかったのだ。
それは、元々、ここが武器製造所だった、と考えれば納得がいく。
武器の製造所だからこそ、強力な消火設備が必要だったのだ。
「そして、万一、入口が延焼した時や、襲われた時のために、奥には、地下への隠し扉があるのよ」
と、沙織さんが続けると、フー子さんが
「おおー!かっけえー!!どこどこ?」
と、興味津々で、唯花さんと一緒に我先にと隠し扉の場所を探し始めた。
そこに沙織さんが、例の仕掛けの穴に、ハンドルらしき棒を差し込んで、リズミカルに動かすと、前回と同じようにスーッと階段が姿を現した。
「オリオリ!凄いよ!小説でしか出てこないような仕掛けがあるよ!」
唯花さんが興奮気味で言うと、沙織さんは
「普段は、部外者立入厳禁だけど、今日は特別に入れてあげるから。但し、勝手にあちこち触るんじゃないわよ!」
と、言うとみんなを連れて下に降りた。
下に降りると、みんな興奮気味だったが、特にフー子さんと唯花さんが顕著だった。
「すげーよ唯花。秘密の地下室があるよ。きっと、ここには武器がたくさん隠してあるんだよ」
「風子、この壁の向こうが怪しい。きっとこの音からして相当厚い壁だから、射撃場に違いないよ!」
と、言い合っていた。
私の後ろでは、ミサキさんと朋美さんが、セラーの棚からワインを次々に手に取って
「美咲、凄いよ!年代別にあるけど、同じ種類で、年代の違いだけでこんなに集めてるなんて……」
「オリオリ、今晩、少し飲んで良い?」
と、ワインで盛り上がっていた。
「いいけど、バカみたいにガバガバ飲まないでよ!高いんだから!!」
沙織さんは言うと、セラーを抜けて、その隣にあるテレビのある部屋へと進んで行った。
コンさんの記憶が戻った、思い出の部屋だ。
そこを見た4人の驚きようは凄かった
「凄い!家庭用で、こんなデカいテレビと、本格的な音響システムを置いてるなんてさ……」
唯花さんが立ち尽くして言うと、朋美さんが
「ここで、バンド演奏してもいいんじゃね?壁の吸音設備がスタジオ並みだよ」
と、素直に感動していた。フー子さんは
「この辺で、こんなテレビ売ってるところあんのかな?」
と、違う切り口で驚いていると、ミサキさんが
「きっと、東京とかで買って運んできたんでしょ」
と、分析していた。
そして、遂に隣の射撃場と武器庫に到達した。
そこでのみんなの興奮は、想像以上のものだった。
沙織さんは、見るだけだと最初は言っていたが、みんなからあまりにも触らせて欲しいと言われて、最初に沙織さんのチェックを受けて、弾丸が入っていない事を確認してから……と、いう条件付きで触ることを許可せざるを得なくなった。
みんなは、思い思いの銃を手に取り、構えてみたり、撃鉄を引いてみたり、ブローバックさせてみたり……と、やっていた。
後でミサキさんに訊いたところによると、元々は、興味は無かったのだが、唯花さんが好きであることが発覚して以降、サバゲに一緒について行ったりしているうちに、みんなも徐々にハマっていくようになったそうだ。
そして、最後は満足そうに
「やっぱり、本物の重量感と、重厚感は違うねぇ~!」
と、興奮しながらも恍惚の表情を見せる唯花さんが印象的だった。
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