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狼の詩  作者: ゆうなぎ
狼編
28/44

第十三夜‐前 

 二〇××年 七月十三日

 

 「父さん、ちょっと狩りの練習をしてくる!」

 目線の少し下に以前よりもさらに大きくなった青年コルンがいました。

からだだけを見れば、もう立派な大人です。体毛も子どもの頃とは違い、明るい灰色と白の二色に染められていました。

 「あ、わたしも、わたしも行く!」

 そこに娘アイルがやってきます。

 彼女もやはりコルンと同じ体毛をしていて、ふたりは見分けがつかないほどそっくりでした。けれども、やはりからだはコルンの方が大きく、目つきもどこか鋭さを感じます。人間の私にはほとんど分からないほどの差です。

 ただ、コルンのからだがより大きいといっても、並外れたアトルほどではなく、彼の目線からすると、ふたりの子どもはまだまだ小さいような気もするのでした。

 「もうお前たちも大きい。群を離れる時も近づいているのかもしれない。だが、気を付けるんだ。このあたりには人間もいるからな」

 「分かってるよ、父さん。もう子どもじゃないんだ」

 「コルンはともかく、私がしっかりしてるから大丈夫よ、父さん」

 「なんだって、アイル!」

 「なによ!」子どもたちがにらみ合っていると、

 「こらこら、いつまでも喧嘩するのね、あなたたち」

 と、アトルの背後から声がします。もちろん、アルバの声です。

 「父さんの言うことをちゃんと聞きなさい。生き残るには勇敢さだけじゃ足りないわ。臆病さも慎重さも、みんな必要」

 「あーもう、父さんも母さんも心配しすぎだよ。ちょっとそこらで狩りをしてくるだけだって」

 そうして、空が明るくなりはじめる頃、ふたりの子どもたちは狩りの練習をしに森へと入っていきました。

 「大丈夫かしら」アルバが心配そうにもらします。

 「いつものように帰ってくるさ」

 アトルは妻の首もとに頬を寄せ、勇気づけます。

 「そうね、そうよね」

 「あの子達も大きくなったんだ。群を出る日も近い」

 「そうなったら寂しくなるわ」

 「一度巣立てば、子は親の元には戻らない。でも、それまでは一緒だ。それに、俺には君がいる」

 「じゃあ、私にはあなたがいるわね」アルバが微笑むと、

 「その通りさ」アトルも微笑み返しました。

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