第1話 消火活動任務1
この作品は、ハーネイト遊撃隊 星の守護者の世界で活動するとある会社のお話です。ハーネイトと親交のある発明家 ゼペティックス・ハイマン・ロジャーとその部下たちが繰り広げる活動の記録です。
「人を殺める兵器を、人を救う道具に生まれ変わらせる。(ロジャー)」
地球から遙か離れた、と言うより別の次元にある星。アクシミデロ星と呼ばれる所はDGという武器輸出製造組織の脅威にさらされていた。魔獣殺しの異名を持つ伝説の解決屋、ハーネイト・ルシルクルフ・レ―ヴァテインとその仲間がDGと激闘を繰り広げている中、彼らとは別の方向から、DGを追う集団がいた。
その名は「民間救助会社 ゼペティックス」人を殺める兵器を転用し、人を救う道具に改造することを理念とし、それらを使いこなす人たちが集まる会社。工場と移動基地を兼ねる古代文明の超遺産が一つ、巨大人型移動要塞「グランドタイタン」に乗り、世界を股に今日も人命救助を行う。
「ヴィーダル・ティクス神話」の万人を助ける神、ゼペティックスの様に。
ここはアクシミデロ星の赤道付近にあるダイゴン洋。広大な海が広がり、所々に幾つか島が見える。といってもこの世界の海は真水で構成されており、地球とは勝手が大きく違う。そんな不思議な海の洋上。そこに巨大な機械の塊が浮かんでいた。いや、一見がらくたのように見えるが。実はこれこそが噂に聞く民間救助会社の移動基地なのである。
通称ゼペティックス。それは兵器を転用し人を助ける道具に変える者たちが集う集団。世界各地で起きる災害や事件に苦しむ人々を救うために動いている彼らだが、実はDGと呼ばれる武器製造組織について追っている集団の一つである。創立者で代表取締役の発明家、ゼペティックス・ハイマン・ロジャーは同じくDGを追うハーネイト・ルシルクルフ・レ―ヴァテインの友人の一人であり、協力関係でもあり、今は少し距離は置いているが共にDGを潰すため動いていた。
「今のところ特に何もなしか。まあいつもこうだといいんだが。」
ハイマンは移動基地の最後部に存在する司令室にある、専用の椅子に座り、机に脚をかけて休憩を取っていた。何もない時もあるものだなと思いつつ、本来ならそれが一番と考えるロジャー。しかしその静粛も突然終わる。部屋の外から走る足音がしドアがバタンと開く。すると一人の女性がハイマンのところに駆け寄る。
「ハイマン社長大変です!ルードルブの沿岸部にある燃料保管基地で火災が発生、何人か負傷者がいる模様です。」
ハイマンは少し眠たそうな顔をして、
「分かった。すぐにヘリ部隊を派遣しよう。ファティにすぐに出撃してくれと伝えてくれ。俺は消火弾道ミサイルを発射するために座標を定める。ルードルブか。あのでかい備蓄基地なら届くな。」
と社員にそう命令を出す。そして彼も起き上がりすぐさま管制室に急ぎつつ無線で誰かに連絡を取る。
「分かりました。すぐに伝えます。」
女社員はすぐに司令室を出ていった。
彼女の名はルテシア・ハルシオン・フィオナ。ロジャーの秘書として、そしてヘリ部隊の指揮官でもあるが、ファティにいつも振り回されている。かつてハイマンの作った道具に助けられて自身もそのような人の役に立ちそうな物を作りたいと思い入社した。黒髪のショートポニテと赤縁のメガネが特徴的であり、ハーネイトと縁がある人物。ロジャーは彼女の義理の父であるが、ハーネイトの方がいいといつも言っている。彼女にも秘密が隠されているというらしい。
ハイマンは艦内無線で火器管制官のアーディーンに連絡を取る。
「アーディーン、聞こえるか。」
「おうよ!ばっちし聞こえるぜ。どうしたんだハイマンよ。」
無線から聞こえる男の名はアーディーン・ロルド・ファルセンという。工場の製造責任者にしてグランドタイタンでは砲撃戦と近接格闘を行うワイルドな男である。ハイマンの考えに興味を持ち所属していた軍を辞めてこの会社に入った。一見ガサツに見えるが戦術を練ることが得意で、12騎というチェスに似たボードゲームでは世界大会で優勝するほどである。ハイマンとは軍人時代に偶然出会った仲で口は悪いが、彼のことをよく分かっているよき理解者である。
「ルードルブの沿岸部で火災が発生している。今から火災発生場所の座標を送るから消火弾道ミサイルの発射準備をしてくれ。」
「もういつでも撃てるぜ。後は座標を打ち込むだけだ。」
「さすがだな。発射の方は任せたぞ。」
「言われなくてもよ。」
アーディーンの陽気な声に安心し、ハイマンは通信を切ると女社員の言った場所の座標特定を始める。キーボードを華麗に叩き的確に目標の座標を入力していく。
そのころ、基地上部の甲板では例の女社員と一人の長身の女性が話をしていた。
「何だい、あたしたちの出番だと?」
「そうです、ハイマン社長から出撃命令がでてます。ルードルブ沿岸部の油田で火災が起きています。消火ミサイルを搭載してください。」
「分かったよ。今準備するから待ってな。」
女パイロットはすぐに自身の部屋に戻り、手早く慣れた手つきでパイロットスーツに着替えて甲板に戻った。。彼女はウィンディアと呼ばれる可変戦術ヘリコプターのパイロットにして隊長のファティ・ジェニスという。彼女は元機士国の軍人だったがある問題で責任を取り軍を去りここにいる。外に出てヘリコプターのある格納庫へ向かうとパイロットスーツを着た男がファティに話しかけてきた。
「ようファティ、今日も忙しいな!」
「まあそうね、そういうあんたも忙しそうね。」
「今日は麻薬を輸送している集団を制圧してきたところだしな。まあ忙しいな。」
「今から任務だから、話はこれぐらいで。」
「ああ、頑張れよ。」
ファティはヘリコプターに乗り込むとすぐに発進し行った。今さっき話していた男はフューリオンカスタムのパイロット、レイジ・アスハロ・ケーンというもので隊のエースである。彼はファティと同時期に入社していて、ファティとは長い付き合いである。
「さあ、行くよ!」
ファティはヘリに乗り込むとハッチをすぐに閉めヘリを離陸させ目的地まで飛んでいった。それに続き他の機体も空に順次上がっていく。
「座標入力完了、アーディーン!発射してくれ!」
「分かった。消火弾道ミサイル・ファイアイレイザー発射!」
アーディーンはミサイル発射ボタンを押す。すると移動基地の後方左舷から、巨大なミサイルが2発放たれる。それは大量の爆煙と轟音を発しながらすぐに上空へ消えていった。
「発射はうまくいった、ハイマン。」
「のようだな。後は着弾するのを待つだけだな。っと、ファテイ聞こえるか!」
「何よハイマン、どうしたの?」
「今イレイザーを発射した。あと5分ほどで着弾する。一応巻き込まれないように現場近くで待機してくれ。」
「あいよ!後少しで現場に到着する。」
現場のルードルブまで基地から350キロほど離れているが、ファティの乗っているウィンディアはジェットヘリ(上昇はプロペラ、加速はプロペラを畳みジェットエンジンで動く)と呼ばれる代物で、ヘリでありながら時速5~800キロはたたき出せるものである。
「あと10秒で着弾!9・8・7・6・5・4・3・2・1・着弾!」
ハイマンの言葉と同時に油田上空から2発のミサイルが落ちてきた。それを遠くからファティたちは確認した。するとすぐに上空100メートルほどで弾頭が炸裂し、大量の泡状の消火剤が空から散布された。その一撃は強力で、何十台もの消防車の放水でも収まることのない火の勢いは瞬時に収まった。あとは周辺に火が少しくすぶるだけである。
この弾道ミサイルこそ、技術の粋を集めた消化弾道ミサイル・ファイアイレイザーである。彼の開発した消火剤・ケルミクスを効率よく散布できるように工夫された弾頭により、火の勢いが強すぎて近寄れないところでも遠距離から安全に消化できる。他にも亜種として一時間ほど範囲内領空から雨を降らせ続けるレイニーダウンと言うミサイルもある。
「ミサイル着弾、9割消火完了!引き続き残りの火を消してくれ!」
「あいよ!さあ後始末をするぞ!」
ファティは他のヘリのパイロットにそう言うといち早く現場に飛び、消火ミサイルを使い残りの火を消し始めた。
「す、すげえ。あの一撃で殆どの火が、消えた。」
「やはりうちらの技術力はすごいな。」
他のヘリパイロットはミサイルによる消火の現場を見てそれぞれ感想を言う。
「ほら、ボサッとしてないで早く火を消すんだよ!」
ファテイの喝で全員急いで消火活動を行う。慣れた動きで残り火を着実に消していき、30分後には消火活動は完了し、ヘリは順次帰投した。
「いつもすげえな、ハイマン。あのイレイざーはよ。まさかあの消火剤をミサイルとして打ち込むなんざ発想がすげえな、ガハハハハハ。」
「そういえば救助隊は向かっているのか?アーディーン。」
ハイマンは笑うアーディーンに確認をとる。負傷者の救助も、活動の一つである以上素早い手配が求められるからだ。しかし抜かりのないアーディーン。
「ちゃんとトランスポーターを1機向かわせている。医療班も乗せている、それとルドルフもな。」
「そうか、ならばいい。」
「しかし何故火災が起きたんだろうなあ?」
「まあ施設の老朽化か点検をさぼったか、調査しないとわからないな。」
ハイマンは長年の老朽化から施設内に燃料などが漏れ、それが何らかの拍子で引火したのではないかと考えた。
「ハイマン社長、消火完了しました。作戦は成功です。」
「よくやった、帰還してくれ。」
「ハイマン社長、油田会社の社長、ジンヴェル様から通信です。」
ルテシアは通信をつなぐ。
「私はジンヴェルだ。そなたらの活躍、感謝する。あのままだったらさらに被害が拡大していただろう。社を代表して感謝の意を述べる。」
「私たちはただ仕事をしたまでです。これからも事故に気をつけてください。」
「わかった。本当にありがとう。」
ジンヴェルからの通信が終わるとハイマンは艦長席に座りディスプレイに映し出される情報を見ながら確認していた。
「今回も無事でよかった。しかしハーネイトは今頃何をしているのだろうな。あの解決屋がいなければ、田舎でくすぶっていただろうな私は。」
そう考えるロジャー。しかしそんなとき、携帯から電話がかかる。その声を聴いた彼は、せわしなくまた席から立ち上がり、部屋の外に出るのであった。
短い一話だけですが昔のを編集し投稿しました。余力があれば、続きも書いていきたいです。