第76話 劇的な撃破
「いったい、何の魔法を使っているんだ、彼等は?加速も減速も転進もしないのに、なぜ一発も当たらないんだ?」
サムダージュ、呻く。
「やってるんだよ、奴等は。加速も減速も転進も。ただ、余りにも僅かなスラスター噴射と軌道変更だから、こちらのセンサーで検知出来ないだけだ。」
と、バルベリーゴ。
「そんな小さな動きだけで、あれだけの猛攻を避けきれるなんて、最初からどこに撃って来るか分かってでもいない限り、絶対無理じゃないか。」
ユーシンはまたバルベリーゴに食って掛かる。
「分かってるんだろうぜぇ、どこにレーザー射撃が来るか、奴等にはよぉ。」
「何で分かるんだ?」
「そりゃぁ、奴等が『1-1-1』だからに決まってるぜぇ。」
「何故そんな、小さな動きしかしないんだ。わざと危険を冒さなくても。」
「噴射剤を節約してんだよ。少しでも長く、戦闘を続けられるように。」
混乱でグルグル回っているような状態の、ユーシンの目に映るモニターの中で、「1-1-1」を示すレーダー反応が、敵戦闘艇群を通り抜けた。そのまま敵戦闘艦に殴り込むようだ。4隻が大型艦を、それ以外の10隻程が2・3隻ずつ一組となって、それぞれ小型戦闘艦を狙う構えだ。「1-1-1」の接近を知ってから、敵艦隊は密集状態に陣形を変じていたから、「1-1-1」は大きな軌道変更を要しなかった。
戦闘艦からも、レーザー射撃が猛然と繰り出されたが、当たらない。高速を維持したまま「1-1-1」は「コーリク」の艦隊を飛び過ぎて行った。それと同時に、敵艦から巨大な火柱が吹きあがった。
大型戦闘艦からは4つの火柱が上がった。4隻の「1-1-1」の戦闘艇全てが、対艦ミサイルを命中させたようだ。そして、4つの火柱は大型戦闘艦の装甲に亀裂を走らせ、その亀裂と亀裂が繋がり、やがて大型艦は、前半分と後ろ半分が分離し始めた。艦体が、真っ二つに割れたのだった。
ユーシンが奇襲攻撃で敵大型戦闘艦を撃った時には、12発を命中させても大破させるには至らなかったのに、今、「1-1-1」は、たった4発で敵の艦体を真っ二つにして見せたのだ。
敵艦の構造を熟知し、どこに弾薬や噴射剤が積んであるか、どこの装甲が弱いか等を、計算し尽くした上での攻撃なのだろう。いや、あれこれ考えをめぐらさなくても、百戦錬磨の経験から、どこを撃てば良いかは、ひと目敵艦を見れば分かるのかもしれない。
敵の小型戦闘艦4艦も、あるものはハリネズミのように多数の火柱を吹き上げ、あるものは四分五裂に砕かれ、次々に大破して行った。モニターの中で、一斉に崩壊して行く5つの敵艦の姿に、ユーシンは、敵に起こった事であっても恐怖の念を持たずにはいられなかった。
別のモニターに目を転じると、後続組の「1-1-1」戦闘艇が、敵戦闘艇群とのドッグファイトを展開する様が映し出されていた。敵戦闘艇群の位置で運動量を相殺し切り、ドッグファイトに持ち込むために、後続組は早めから減速を実施していたらしい。
敵戦闘艇は、百隻くらいはいると見える。対する「1-1-1」」は十数隻だ。普通なら、勝負にならない。多勢に無勢。取り囲まれ、四方八方から滅多打ちにされて撃破されるのが、当たり前の展開だ。
だが、四方八方からレーザーを撃ち込まれる展開は予想通りでも、それが一向に命中しない、というのは予想外だ。撃っても撃っても当たらない。「1-1-1」戦闘艇が、それほど激しい動きをしているとも見えないのだが、何故だか当たらない。敵がわざと、ぎりぎり外れるように撃っている、としか思えない。「1-1-1」が攻撃を躱している、という印象すら持ち得ない。ただ、当たらないのだ。何故だか分からないが、敵の攻撃が、全く当たらないのだ。
ほとんどは、ただ飛び回っているだけの「1-1-1」が、時々レーザーの光条を迸らせる。そのたびに、確実に敵戦闘艇は爆散する。無駄撃ちは一度も見られなかった。撃てば確実に、敵を葬っていたい。当たらない敵のレーザー射撃が20回ほど続く毎に、命中する「1-1-1」の射撃が発せられる。
そして、それぞれがバラバラに、各個に動き回っていると見える「1-1-1」なのだが、突如一斉に散開弾を撃ち放ったりもした。複数の敵味方が入り混じる乱戦状態では、普通、味方に当たることを恐れて、散開弾攻撃などはしないものだ。敵味方がある程度離れて対峙している時に使う武器が、散開弾なのだ。
だが、「1-1-1」は、乱戦において散開弾を使った。しかも、何を合図にしたのか分からないが、通信で連絡を取り合った兆候も見られないのだが、同時に、一斉に、散開弾を放った。そしてその攻撃は、10隻程の敵を4つ以上の方向から立体的に取り囲んでの、飽和攻撃だった。飽和攻撃とは、避けるべき隙間が全て埋められている攻撃だ。どの方向にも逃げ道の無い、絶対不可避なものだ。
約十個の閃光が、同時に、暗黒の宇宙を白く染めた。一網打尽というやつだ。金属片が味方に当たるなんてヘマも、犯さない。「1-1-1」の全ての戦闘艇が、その一斉攻撃のタイミングや散開弾の軌道を、承知していたという事になる。
その後も「1-1-1」は、各戦闘艇がデタラメに飛び回り、敵の無数のレーザー照射を掻い潜り、時々撃ち返して撃破する状態を続けたかと思うと、また突如、何の前触れも無く一斉攻撃を仕掛け、10隻程の敵を、同時に爆散させるという攻撃を、繰り返した。
一斉攻撃に参加する戦闘艇の組み合わせも、毎回違う。組み合わせの定まった4・5隻が連携しているのならば、まだ理解は出来る。が、十数隻いる「1-1-1」のどの組み合わせが、次の一斉攻撃を仕掛けるかは、全く予測できなかった。
通信は一切使っていなかった。何かしらの合図を取送り合っている兆候も、見て取れない。だが、一斉攻撃の際には、寸分のずれも無く、同時に、散開弾が放たれる。敵の約10隻が、見事に包囲され、逃げ道を奪われる。僅かな射線のずれでもあれば、逃げ道が出来るのだが、計ったように正確な射撃だ。全ての「1-1-1」戦闘艇が、一つの意思のもとにコントロールされているかのようだ。
各個での乱闘と、一糸乱れぬ連携攻撃の繰り返しは、敵戦闘艇の数を見る見るうちに削って行った。気が付くと、全滅も間近だ。
「コーリク国」軍は、新たな戦闘艇部隊を送り出して来た。後方に控えていた空母から、発進して来たようだ。
その敵部隊に、先ほど戦闘艦5隻を撃破した「1-1-1」戦闘艇が襲い掛かった。ようやく元の運動状態を打ち消して、引き返して来る事が出来たのだ。彼等も同様の戦闘を見せた。バラバラに動き回ったかと思うと、突如の連携攻撃。合図も何もなく、一糸乱れぬ一斉射撃。敵は、計ったように包囲攻撃の中心にいて、10隻程が一網打尽になった。
100隻対十数隻でも、全く勝負にならない。「1-1-1」が圧倒した。
後続組の十数隻は、その隙に敵戦闘艦を狙った。レーザー射撃による必死の抵抗も虚しく、敵は、中型戦闘艦2艦と小型戦闘艦1艦を大破させられた。
「凄い。何という強さだ。たった30隻かそこらの戦闘艇で、あの大艦隊を向こうに回し、一方的に押しまくっている。まさに無敵だ。最強軍団だ。ユーシン殿の言った事は、大げさでも思い込みでも、何でも無かった。掛け値なしの事実だ。彼等『1-1-1戦闘艇団』は、この銀河で、最強の戦力なのだな。」
サムダージュは喘ぐようにそう言った。
「驚きました。こんな事があるのですね。こんな人達がいるのですね。最強軍団とその戦いぶり、信じがたいものではありますが、まぎれも無い事実。直に目の当たりにしたのですから、受け入れざるを得ない。」
ヤモカーケスも、表情を失った顔で呟いた。
「オヤジ!『キグナス』を前進させよう。俺達も参戦しなきゃ、『1-1-1』がやばいぞ。」
「何言ってるんだ、ユーシン。圧倒的に優勢じゃないか『1-1-1』は。」
言い返して来たのは、ジャカールだった。
「散開弾は、そろそろ撃ち尽くした頃だ。対艦ミサイルも、もう残っていないだろう。レーザー銃だけが残る武装だ。敵はまだ、何百隻もの戦闘艇を繰り出して来られるし、戦闘艦も10艦以上が健在だ。いくら『1-1-1』でも、これ以上はやばい。」
「そうだなぁ。弾切れじゃぁ、いくら強くても、どうしようもねぇかぁ。」
と、バルベリーゴ。
「我が方の全艦隊で、総攻撃しましょうか?」
ヤモカーケスが口を挟んで来たが、
「いや、『キグナス』だけで良い。悪いけど『1-1-1』と『キグナス』のコンビの前じゃ、『ヤマヤ国』と『ユラギ国』の戦闘艦は、返ってお荷物だ。」
ユーシンの言葉に、一瞬不服そうな顔を浮かべたヤモカーケスだったが、大きなため息ひとつで気持ちの整理を付けたように、表情を切り替えて行った。
「確かに、あの闘い振りを見せられれば、その言葉も受け入れざるを得ませんね。『キグナス』の闘い振りも、この目で見て来ましたし。分かりました。『キグナス』だけで、前進しましょう。」
ヤモカーケスからタケマヤルにも連絡が行き、「キグナス」以外は静観する事が決まった。
「『キグナス』発進!」
マルコが操船を担当していた。
「1-1-1」は、全戦闘艇が再び一つ所に集結し、敵戦闘艇部隊との乱闘を繰り広げている。が、散開弾攻撃はもう繰り出してはいない。敵戦闘艦に向かう気配も無い。やはり、撃ち尽くしたのだ。どれだけ凄い腕を持っていたとしても、レーザー銃だけでこれだけの大群を相手にし続けて行くのは、無理と思えた。
「敵小型戦闘艦2艦が、戦闘艇同士の乱闘エリアに進出しようとしているわ。」
アニーが告げた。
「散開弾も対艦ミサイルもねぇ状態で、戦闘艦と戦闘艇の連携攻撃を仕掛けられたら、いくら『1-1-1』でも、やべぇだろうなぁ。」
「キグナス」も乱戦宙域への距離を詰める。敵戦闘艇の一部が、「キグナス」目がけて殺到して来た。
「出るぞ、オヤジ!」
通信装置から聞こえた声はアデレードだ。「『1-1-1』の前で、良いところを見せるチャンスだ。」
「無理するなよ、アデレード。」
言ったのはユーシンだった。「お前は、ファランクスの意志も背負ってるんだぞ。あいつの分も、お前が『1-1-1』に入って活躍しなきゃいけないんだ。アドリアーノ少尉の想いだって、お前は背負ってる。ここで死ぬなんて、出来ないんだぞ。」
「分かってる。死なないなんて、当たり前だ。少尉とファランクスの気持ちを受け継いだ俺が、そう簡単に死ぬわけがあるか。」
「行って来い、アデレード。散開ミサイル発射に続いて、宇宙艇団発進だぁ!」
バルベリーゴ、下令。
敵小型戦闘艦のレーザー銃が火を噴き出した。「1-1-1」に浴びせられるレーザーの光条が、倍増した。当たらない。が、当りそうだ。でも、当りそうで、当たらない。レーザーが当たって爆散するのは、常に敵戦闘艇だ。だが、いつまでこれが続くか。レーザーのエネルギー源も、スラスター用の噴射剤も、無限には無い。無駄なスラスター噴射も、レーザー射撃も、一切なかった「1-1-1」だが、それでもいつかは、無くなるのだ。
敵戦闘艇は、散開弾や迎撃に出た「キグナス」の宇宙艇を、何隻かが掻い潜り、「キグナス」に肉薄する。「キグナス」のレーザー銃も火を噴く。管制担当はジャカールだ。
「まだか!ユーシン。『1-1-1』も『キグナス』も、早くしねえと、持たないかもしれないぞ。」
コンソールを叩きながら、ジャカールが叫んで来た。
「敵艦を黙らせるだけなら、ここから撃っても良いけど、今は、それだけじゃだめだ。敵艦隊に、退却を決断させなきゃいけない。敵が、恐れをなして退いて行くような、衝撃的な印象を与える一撃にしなきゃいけない。『アマテラス』の恐怖を、この一撃で敵に植え付けなくちゃいけない。」
「確かに、あの小型戦闘艦だけを黙らせても、後ろに幾つも控えているんだからなぁ。黙らせるだけじゃ無く、退かせる一撃にするにゃぁ、相当迫力のある撃破を演出しなきゃぁ、ならねぇよなぁ。」
ユーシンの意見に、バルベリーゴも賛成した。
「もう少し近寄って、もう少し狙いを定めて。」
撃ち抜く場所や角度で、戦果は大きく違って来る。ユーシン達が12発当てた敵艦は大破しなかったが、「1-1-1」が4発当てた敵艦は真っ二つになった。その事からも明らかな様に、敵艦のどこにどんな損傷を与えるかで、戦果も、その攻撃の印象も、全く違うものになる。そして、今「1-1-1」を支援するには、強烈なまでに劇的な撃破が求められるのだ。
敵戦闘艦は、散開弾攻撃まで始めた。乱戦エリア内の「コーリク国」軍側戦闘艇が減ったので、味方に当たる事を恐れずに打てるようになったのだ。しかも、対艦ミサイルを撃ち尽くしたと気付いた敵艦は、遠慮なく「1-1-1」に肉薄して攻撃を加える。猛烈な火力だ。後方の空母からも、新手の戦闘艇が繰り出してきている。戦闘艇と戦闘艦で、2方向からの散開弾攻撃も可能な体勢だ。2方向から散開弾を浴びせかけられれば、いくら「1-1-1」といえど、躱し切れるとは思えない。
「くっそぉー。あの戦闘艦・・」
かつての部下であるガリアスを追い詰める敵戦闘艦に、バルベリーゴも憤りをあらわにし始めた。「攻撃されねぇと思って、調子に乗っていやがるぜぇ。ユーシン、まだかぁ?」
「・・・よし。これでいいはずだ!」
コンソールの上で、ユーシンの指が躍動した。「行くぞ!撃つぞ!」
同じくコンソールを操りながら、敵戦闘艇の迎撃に大忙しのジャカールが、顔を向ける事も無く叫ぶ。
「やれぇ!ユーシン。見せてやれ、白鳥のゲンコツ!」
「思い知らせろぉ、ユーシン!銀河最強のプロトンレーザーの威力を!」
バルベリーゴも絶叫。
「『アマテラス』、発射ぁっ!」
宇宙が切り裂かれた。「キグナス」船首より迸る光の濁流は、虚空にすら傷跡を残すかと思えるほどの眩しさと鮮烈さで、彼我の距離を直線で結んだ。プロトンレーザーの光条は、敵小型戦闘艦を突き刺し、突き進み、突き破り、反対側から飛び出した。光の剣に串刺しにされたかのような光景を、敵小型戦闘艦は曝す事になった。
その、レーザーが開けた穴から、巨大な炎と光の柱が、艦の全長の数倍にも及ぶ規模で吹きあがる。艦の至る所に亀裂が走り、そこからも火柱が上がる。内部から湧き上がった光の圧力に押されるように、艦全体が膨張し、亀裂は広がり、亀裂が増え、火柱は数も勢いも上昇の一途だ。そして遂に、艦は光に飲み込まれた。
巨大な光球のみが、虚空に浮かんでいた。その光の中で、艦を構成していた物体は全て、命あったものも、そうでないものも、原子のレベルにまで還元・分解された事だろう。数百万トンもの金属も、塵一つ残さず、励起された原子のプラズマに姿を変えただろう。
光球の消えた後の宇宙空間には、そこに何かがあった事すら忘却してしまいそうな程、何も無かった。跡形も無く消え去る、という言葉が、これ以上は無い程に具現化された。
サムダージュもヤモカーケスも、口をポカンと開けたまま、言葉も無い。
「もう1艦も仕留める!」
ユーシンが決然と宣言。「『アマテラス』、発射!」
閃光が走り、艦は貫かれ、新たな光球の出現が、そこにあった全てを消去した。モニターの中の光球にすら圧力を感じ、見るものは少し、のけ反った。
「お、恐ろしい威力ですな。『アマテラスマークⅢ』」
震える声で、ようやくヤモカーケスは言葉を絞り出した。
「敵艦隊、後退を開始!」
2艦の消滅は、敵に恐怖を植え付ける事に成功したようだ。相当な加速重力の苦しみに耐えてでも、この場を一刻も早く立ち去ろうと、敵戦闘艦はスラスターを全開にした。
「やるもんだなあ」
通信装置からそう言って来たのは、ガリアスの声だ。「あんなにド派手な戦闘艦の撃破は、俺達でもめったに見れるもんじゃないぜ。あっはっは」
壮絶な戦闘を繰り広げた直後とは思えない、ガリアスの朗らかな笑い声が、「キグナス」の航宙指揮室に響いた。
「笑ってるけどよ、大丈夫なのか?あんたら。ギリギリの戦闘だったじゃないか。」
「ギリギリィ?何の話だ。俺達はまだまだ、全然やれたぜ。」
そのガリアスの言葉が、強がりなのか、本気なのか、もはやユーシンにはさっぱり分からない。
「『キグナス』の宇宙艇1隻、被弾!」
「え?」
安心した直後のその報告に、また背筋が凍りつくユーシン。「アデレードか?」
「何で、俺なんだよ!」
アデレードの元気そうな声が響き、胸をなでおろすユーシン。「俺じゃないし、被弾した宇宙艇も、小破で済んだ。パイロットは無事だし、『キグナス』まで自力で帰り付けそうだ。ただ、着艦が少し、難しそうだがな。」
「予約は入れてねえが、俺達も、どっかに宿を取りたいんだがな。」
ガリアスの言葉だ。
「そうですね。タケマヤル総司令官と相談し、『1-1-1戦闘艇団』の収容先を確保致しましょう。」
ヤモカーケスが受け合った。
「敵はこのまま、『コーリク国』にまで逃げ帰ってくれるのかしらね?」
アニーが、誰にともなく問いかけた。
「いやぁ。そんなに甘くはねぇだろうなぁ。オールトの海の仮設基地で体勢を立て直して、また攻めて来るんじゃないかぁ。」
「まだ続くのかよ、戦争は。もういい加減、うんざりだぜ。」
ジャカールは天井を仰ぎ見て言った。
「もう、お前達は戦争しなくてもいいんだぜ。後は、俺達プロに任せろ。」
通信機の向こうから、ガリアスが割り込んで来た。
「なんだよ。まだ繋がってたのかよ。」
呆れるユーシンは言った。「『1-1-1』だけじゃ、どうにもならないだろ?どんなに強くたって、敵を全部片付けられるほどの弾薬は、積み込めないんだからな、戦闘艇30隻程度じゃ。」
「そんなもん無くても、何とかできるのが『1-1-1』なんだよ。次に奴等が攻めてきたら、俺達だけで対応するから、『キグナス』も『ユラギ国』軍も『ヤマヤ国』軍も、絶対に手を出すんじゃねえぞ。」
ガリアスはきっぱりと言った。
「そ、それは。これは、我が祖国を守る闘いだ。我々が手を出さない、なんてわけにはいかないでしょう。」
「『1-1-1』の目の前で、機構軍以外の誰かが敵にヤられる方が、“そんなわけにはいかない”事だ。俺達が全滅する前に、あんた達が敵の攻撃を受けるような事は、無いようにしてもらいたい。」
勇敢なのだか理不尽なのだか分からない、ガリアスの言い分だ。
「まあ、その件は、タケマヤル総司令官も含めた、作戦会議の席上で、話し合いましょう。我々だけで、決められることではありません。」
ヤモカーケスのその言葉で、その話は終わった。
(本当に、また来るのだろうか、「コーリク国」軍は?)
ユーシンは思った。(もし、また来るようなら、余りにも必死すぎるな、「コーリク国」は。もうすでに、「コーリク国」軍もボロボロの状態なのに。なぜそこまで執拗に、「イヌチヨーナ星系」制圧を、いや「ユラギ国」や「ヤマヤ国」を滅ぼしての、「キークト星団」征服にこだわるのか。やはり、背後勢力の影響か?)
そんな考えに沈んでいる時に、ドーンという大きな衝撃が、「キグナス」全体を揺らした。
「敵の奇襲かぁ!? 」
バルベリーゴは血相を変えて叫んだが、
「事故だ!宇宙艇が、着艦に失敗した!さっき被弾したやつだ。」
通信装置からの、コロンボの声だ。
「何ィ!パイロットは?」
「・・・無事だ。パイロットは軽いけがで済んだ・・だが・・、」
そこで言い淀むコロンボ。
「だが、何だ。どうした?何があった?コロンボ。」
問い詰めるバルベリーゴ。
「宇宙艇格納庫近くに詰めていた、メンテナンス要員が1人・・・危ないかもしれない。」
沈黙が訪れた。詳しい状況が分からない。現場も混乱しているようだ。通信機からは、物音ばかりが響く。雑音だけを聞かされる時間が、しばらく続いた。胸騒ぎが、果てしなく募る時間だった。
「ユーシン・・」
突如、通信機から彼の名を呼んだのは、ニコルの声だ。「・・ユーシン・・、トアが・・トアが・・」
「え?」
意表を突く名前に、言葉を失うユーシン。助けを求めるように、バルベリーゴを見る。
「行け、ユーシン。行って、見て来い。」
ユーシンは駆け出した。
(トアが?なんだそれ?どういう事なんだ?)
今回の投稿は、ここまでです。今週の投稿も、ここまでです。次回の投稿は '17/10/27 です。
「1-1-1」の活躍をメインにした説話でした。これまでの戦闘シーンとのメリハリを効かせて、「1-1-1」というのが、この時代においてどういう存在だったのか、ということが感じ取れるような書き方ができていれば、いいなあと思っているのですが、なかなか難しいです。戦闘シーンは、リアリティーやスピード感や迫力というものを出したい、と思ってはいたのですが、それも、ものすごく難しかったです。いかがでしたでしょうか?というわけで
次回 第77話 戦争の終結 です。
「1-1-1」の活躍と「アマテラス」の痛撃により、とりあえず「コーリク国」軍は後退しましたが、まだ戦争は終わりません。もうひと踏ん張り、頑張らなければなりませんが、誰が、どんなふうに頑張るでしょうか?あと、トア。覚えてますか?トア。ユーシンに告白し、サヒーブと付き合ったトアです。思い出しつつ、次回をお待ちください。




