第70話 侵略軍の襲来
「俺は正直、逃げ出したいくらい怖いよ。」
そう話し始めたのは、キプチャクだった。「でも、この闘いを生きて乗り越える事が出来たら、イイ女がいっぱい寄って来る気がするんだ。」
一同に短い笑いが起こった。
「そのチャンスに賭けて死ぬんなら、後悔なんて無いな。」
笑いが収まるのを待って、キプチャクはそう締め括った。その隣で、ノノも口を開く。
「あたしも怖い。凄く怖い。皆、怖いよね。戦争するんだもん。でも、死んでも後悔しない自信はある。皆と一緒に闘った結果だっら、後悔しない。」
ノノの隣にはサヒーブがいた。
「大切な人を守る為だったら、どんなに怖くても逃げるわけにはいかないし、それで死んだとしても、悔いは無いよな。」
サヒーブの言葉を聞いて、「それは、ノノの事なのか?トアの事なのか?」との疑問を持った者は大勢いたかもしれないが、誰も口にはしなかった。
「シャラナ様の為でもあるんだ、『イヌチヨーナ』を守る事は。命を捧げる覚悟はある。」
そう言ったのは、「シャラナ様派」の急先鋒のジャカールだ。
「若けぇ奴等は威勢がいいなぁ。年寄り連中も、ここで死んだとしても、今更、後悔はしねぇか?」
「あっしゃっしゃ。わしが何べん死にぞこなって来たと思うておるのじゃ、バリーよ。若いもんに、何度も先に逝かれ、おめおめとこの老体を生き永らえさせて来たのじゃ。ここで、こんな年寄りが逃げ出したら、先に逝った若いもん達に笑われるわい。」
笑い声に紛らせたようなドーリーの発言だったが、その目は笑っていなかった。溢れんばかりの悲しみが、そこに宿っているように、ユーシンには見えた。
「もう、怖いなんて感覚も無くなったわ。何度も死闘を乗り越えて来たし、多くの仲間の死を見て来たし。でも死ぬんだったら、若いコ達にちゃんと未来を託してから死にたいわね、あたしは。」
「そうね、死ぬかどうかより、若いコの未来が開けるかどうかの方が、大事よね。」
並んで立っているキムルとアニーが、顔を見合わせてそう述べ合った。
(年寄り連中って問いかけたのに、この2人が発言しなくても・・・)
ユーシンは内心でそう呟いた。が、この2人の年齢を、彼は知らなかった。もし知ったら、ひっくり返るだろう。
「よぉし!死んで後悔する奴は、誰もいねぇんだな!よぉく分かった!それじゃぁ、行くとするか。防衛の最前面へ!」
そして「キグナス」は、オールトの海の外縁部を目指した。そこでは、「ヤマヤ国」と「ユラギ国」の兵達が忙しくしていた。
住民からも多数の志願兵を得たので、彼等を鍛えて戦力とし、それを組み込んだ新たな防衛体勢を構築する必要がある。「イヌチヨーナ」を立体的に取り囲んでいる、オールトの海の球体表面を、鉄壁の防衛面とするのだ。防衛線では無く、防衛面だ。地上での二次元の戦争では、防衛線が築かれるが、三次元の宇宙での戦争では、防衛面が構築されるのだ。
志願兵には、女子供も多数含まれていた。年端もいかぬ少年少女を戦争に投入する事には、ユーシンは心痛を禁じ得なかったが、もし万が一「コーリク国」の征服を許した場合の彼等の行く末を慮ると、それも致し方が無い、と自らに言い聞かせるのだった。それに、そう思っているユーシン自身も、「キグナス」初乗船から一つ齢を積んだだけの、16歳の少年だった。
志願兵たちの主な仕事は、無人探査機や無人攻撃機のオペレートだ。無人探査機は、人の手のひらに収まる位の小さなもので、それが数百万個、オールトの海の中にばら撒かれており、広大なオールトの海の中とその外側を監視しているのだ。敵の接近を確実に察知する為だ。
無人攻撃機も、数万個がばら撒かれている。幾つかの弾種のミサイルとレーザー銃を装備した、直径2m程の球体だ。無人探査機が敵を捕えたら、まずは無人攻撃機がその敵に殺到し、攻撃する事になる。
ほとんど全自動で活動するので、これらのオペレートは志願兵の少年少女でも可能なのだ。それらから送られて来るデーターを精査して、異常があれば報告するとか、メンテナンスの為に、プログラムに従って基地に戻って来たそれらの、パーツ交換などの作業を実施するとかいった事が、彼等の仕事になる。
オールトの海の最外縁から少し奥に入り込んだところに、防衛拠点基地が、何百とある。巨大な岩塊を選び、内部をくりぬいて建造したり、小さめの岩塊を幾つか周囲に配した人工建造物を設置したりしたものだ。それらが、志願兵達の仕事場になる。
簡単な補給やメンテナンスは、最外縁の岩塊に設営された最前面簡易基地でもできるが、補給やメンテの内容によっては、拠点基地でしかできない。最前面は正規兵が、後方の拠点基地は志願兵が、概ね担当するという体勢だ。
志願兵達は皆、祖国を守る必死の防衛戦である事を理解しており、真摯に取り組んでいた。ユーシン始め、「キグナス」クルー達も何度か彼等との合同訓練の機会に、志願兵達の意識の高さを目の当たりにした。下は10代も前半の幼顔の者から、上は70歳を過ぎた高齢者まで、別け隔ても無く、決して楽では無い労務にも、積極的に励んでいる。
死の危険も、誰もが熟知していた。恐怖を、誰もが感じていた。恐ろしさに夜も眠れぬという者も、幾人もいた。それでも、祖国を失うわけにはいかない。「イヌチヨーナ」を、奪われるわけにはいかない。宙賊による占拠の時のような思いは、二度と御免だ。そんな気持ちに突き動かされ、彼等は恐怖を乗り越え、戦争に立ち向かおうとしているのだった。
岩塊表面から、基地に接近して来た戦闘艇等に補給用ホースを伸ばして行くという、宇宙空間に出て行う作業などは、訓練からして命懸けだ。無数の天体が漂うオールトの海といっても、岩塊表面から肉眼で視認出来る天体などは、一つも無い。最大長数十㎞という天体でも、何万㎞も先にあれば、肉眼では見えないのだ。オールトの海の天体密度などとは、そんなものなのだ。そのような目印の乏しい宇宙空間で、戦闘艇を見つけて補給ホースを伸ばして行くというのは、決して簡単でも安全でも無い作業なのだった。
だが志願兵達は、死の恐怖をその顔に張り付けながらも、弱音一つ吐くことなく、それに取り組んでいるのだ。それを見た「キグナス」クルーの覚悟とやる気は、嫌が応にも高まった。もはや他人事では無かった。「イヌチヨーナ星系」防衛は、彼ら自身の問題と認識されていた。助っ人としての参加では無い。当事者としての闘いだ。そんな想いを、クルー達は強めていた。
オールトの海の中には、タキオントンネルが網の眼のように張り巡らされていて、どの方向から敵が攻めて来ても、直ぐにそこに戦力を結集できる体勢は出来ている。そのタキオントンネル網をつかって、所定の位置に所定の戦力を即座に集合させるといった訓練も、「ヤマヤ国」軍と「ユラギ国」軍に「キグナス」も参加した上で、何度も実施された。
復興は、おおむね成し遂げられた。防衛体勢も構築できた。そして、いよいよ、「コーリク国」侵攻が間近に迫って来た。
「まだ、派遣戦力の編成は出来ませんか?」
通信装置に向かって、ユーシンは問いかけた。
「やはり、機構軍内に浸透している、背後勢力の影響力を排除しなければ、編成作業は進まないようだ。色々なところで、思いもよらない邪魔が入り、作業が遅々として進まない。」
通信装置の向こうで、ブルーハルトは、苦悩の色を浮かべた。
「何とか時間を稼いでみますが、やはり、機構軍の参戦無しには、『コーリク国』の進攻を凌ぎ切る事は難しいと思います。」
「無理はしないでくれ。危ないと思ったら、『イヌチヨーナ』を放棄することも、迷わないでくれ。時期は分からないが、機構軍が必ず奪還して見せるから。」
「はい。分かっています。」
そう言って通信を終えたユーシンだが、心の中で呟きを漏らした。
(「イヌチヨーナ」の放棄って言われてもなあ。住民を連れて逃げ出せって事だろうけど、適に包囲された星系から、この人数を逃げ出させるのも一苦労だぞ。機構軍にもらった、移動型コロニーを使う事になるんだろうけど、攻撃を受けたらどうしようもないだろうな、あんなでかいものは。)
防衛の準備と意欲は、最高潮に達した。星系内の産業活動が滞る程の人員が、オールトの海の外縁部に張り付き、敵の進攻を待ち構えた。皆が寝る間も惜しむほどに、訓練を反復して習熟を期し、メンテナンスなどにも念を入れた。こんな状態は、長くは維持できない。星系内産業も、いつまでも停滞させていては、それこそ継戦能力に支障を来すし、寝る間も惜しむ様な活動を、長期間維持していられる人も、そうそういるものでは無い。
そんな、長期間は維持できない、準備と意欲が最高潮に達している状態の所に、「コーリク国」軍は侵攻して来る事になった。この最高潮のタイミングに、敵の進攻が合致するか、しないかは、戦況を大きく左右する事になるだろう。
ユーシン達の奇襲攻撃により、防衛軍側は、最高潮のタイミングに合致するように、「コーリク国」軍の進行を仕向ける事に成功したのだった。
「『コーリク国』軍の進軍開始を、無人探査機が捕えたみたいよ。」
「キグナス」の航宙指揮室で、アニーからその報告を受けたユーシンは、「ヤマヤ国」艦隊旗艦に向かうシャトルに乗り込んだ。バルベリーゴも一緒だ。
オールトの海の外縁部で訓練に勤しんで来た「キグナス」だったが、敵の進軍間近との報を受けてからは、「イヌチヨーナ星系」の最外殻に位置する第5惑星の衛星軌道上にいた。居住者はいない無人惑星だが、軌道上には、数基のコロニーから成る大規模な後方支援基地が建設されていた。
「ヤマヤ国」艦隊旗艦で、作戦会議が開かれた。ヤモカーケスによる敵情報告から始まる。
「侵攻して来る敵の戦力を報告します。敵第1兵站からの部隊を第1侵攻軍、第2兵站からのは第2侵攻軍といった要領で、便宜上の命名をさせて頂きました。」
そう前置きして話し出した、ヤモカーケスによると、「コーリク国」軍戦力はこうだ。
第1侵攻軍、大型戦闘艦2、中型戦闘艦3、小型戦闘艦5、空母3
第2侵攻軍、大型戦闘艦1、中型戦闘艦3,小型戦闘艦5,空母2
第3侵攻軍、大型戦闘艦1、中型戦闘艦2,小型戦闘艦5,空母3
第4侵攻軍、大型戦闘艦1、中型戦闘艦2、小型戦闘艦5、空母2
対する「イヌチヨーナ星系」防衛艦隊の戦力も、ヤモカーケスによって報告された。
「敵の第1侵攻軍に対抗する部隊を第1防衛隊、第2侵攻軍に対抗する部隊を第2防衛隊という要領で命名しました。」
その説明の後に語られた戦力は、以下の通り。
第1防衛隊、大型戦闘艦1、中型戦闘艦1,小型戦闘艦5、空母2
第2防衛隊、大型戦闘艦0、中型戦闘艦1、小型戦闘艦4、空母2
第3防衛隊、大型戦闘艦1、中型戦闘艦1、小型戦闘艦4、空母1
第4防衛隊、大型戦闘艦1、中型戦闘艦1、小型戦闘艦4、空母1
「数の上では、同じ位なのかと思っていたんだがなあ、『コーリク国』軍の方が、ずいぶん多いんだなぁ。性能の差を考えると、相当厳しい防衛戦になるぜぇ、これは。」
そんな感想をバルベリーゴが述べた通り、侵攻軍と防衛隊は、どの組み合わせを見ても、戦闘艦の数は「コーリク国」軍側が優勢であった。各艦の火力や機動力も、「コーリク国」の方が上だから、戦力差はかなりのものだ。
その不利を補い得るのは、オールトの海という天体群の中に潜ませてある戦力だ。戦闘艇においても、敵軍は空母等で運んできた分だけしか使えないが、防衛側は空母に積載しているものに加えて、オールトの海の中に築かれた防衛拠点基地に控えている分もある。
「キグナス」は、どの防衛部隊にもカウントされておらず、遊撃艦として、戦況に応じてどこにでも出ていく可能性があるとされた。当面は、第5惑星の衛星軌道上で待機だ。
「敵は予測通り、全ての兵站基地から同時に出撃し、足並みをそろえるように進撃して来ています。兵站基地からある程度の距離を取り次第、一斉にワープして、『イヌチヨーナ星系』に肉薄して来るものと思われます。」
報告するヤモカーケスの顔には、緊張の色が見て取れる。これほどの規模の戦闘は、経験が無いのだろう。それに、「ユラギ国」と「ヤマヤ国」の存亡を賭ける闘いでもあるのだ。今ここに集結している戦力が撃破されれば、「ユラギ国」にも「ヤマヤ国」にも、「コーリク国」に対抗し得る戦力は残されなくなる。
いずれ機構軍の支援が得られるはずだとは言っても、彼等は未だ、機構軍の戦力というものをその目でしかと見た事は無いのだ。全幅の信頼を寄せる気持ちにもなれないだろう。よって、「ヤマヤ国」軍にとっても、「ユラギ国」軍にとっても、この「イヌチヨーナ星系」防衛戦は、絶対に負ける事は出来ない闘い、と認識されているのだった。
「敵はどう出る?」
タケマヤル総司令官が、会議出席者全員を見回すようにしながら、誰にというでもなく問いかけた。
星系攻防戦に関する経験はもちろん、知識ですら持ち合わせの無い面々は、進んで発言する気にはなれない様子だ。
「まずは、星系からの人や物の出入りを断ちたいはずです、敵は。こちらを孤立させることが、敵の作戦の第一歩になると考えます。」
発言したのはユーシンだった。彼にも、もちろん、星系攻防戦の経験などは無かったが、機構軍の豊富な戦闘データーの中には、幾つかの実例が見受けられたのだ。半軍商社の従業員という立場と、守るべきものを守れる力が欲しいと念じた意思が、彼の脳裏にその戦闘データーを焼き付けていたのだ。
「で、どうする?」
タケマヤルは更に問いかけた。
「まずは、無人探査機を、『イヌチヨーナ星系』を球状に取り囲むように展開するでしょう。その為に、敵はこちらからある程度距離を取ったところにワープアウトし、探査機の射出作業を実施する。星系内に向かって進行して来るのは、その後かと思います。」
「探査機射出後は、直ぐにこちらに攻撃を仕掛けに来るという事か?」
「はい。そう思います。星系外にこちらが設営している、タキオントンネルターミナルを探し出し、破壊するという作業を実施する可能性もありますが、今回敵は、それは割愛すると俺は考えます。奴等は事を急いでいるし、戦力的優位から、星系外での戦いにもつれ込む可能性など、想定していないと思うからです。」
タケマヤルは小さく頷いたあと、すぐさま言葉を繫げた。
「ならば、敵のワープアウトを確認し次第、オールトの海の中の、敵に最も近い位置に、こちらの防衛部隊も展開させた方が良いという事か。」
今度はユーシンが小さく頷いた。
「いきなり、星系内にワープアウトして来るなんて事は、無いのでしょうな。」
そんな問いを漏らしたのは、プキキニだった。
「そうしてもらえると、こちらとしては助かるよ。」
応えたのはサムダージュだった。「星系内には数百万の無人攻撃機を配してあって、どこにワープアウトしようとも、ワープアウト直後の無防備状態を突いて攻撃できる体勢になっている。」
「無人探査機の射出作業を妨害するべく、こちらから打って出るという作戦は取れませんかな?」
と、チャンゴンも発言をした。
「戦闘艦の数も、各戦闘艦の性能も適の方が勝っている状態では、我々はオールトの海という地の利を生かせる場で闘わざるを得ない。唯一『キグナス』だけが、敵戦闘艦に性能面で対抗し得る我が方の戦力だが、『キグナス』は切り札として取っておきたい。しょっぱなに投入して失うような事にでもなったら、目も当てられんからな。」
タケマヤルはそう説明して、チャンゴンの提案を退けた。
「敵のワープアウトは、確実に補足できますか?現状、復興支援に訪れる多くの宇宙船が、『イヌチヨーナ星系』近郊にワープアウトして来ています。敵艦のものでないワープの兆候に振り回されて、こちらの戦力に無駄な動きが出ないようにだけは、注意したいところです。」
とユーシンが、ヤモカーケスに視線を向けて問いかけた。
「敵艦隊の出撃の報を受けた時点で、民間船の往来にはストップをかけました。現時点で既に、ワープアウトの兆候は、『イヌチヨーナ星系』近郊のどこにも検出されていないはずです。」
「そうですか。ならば安心ですね。ですけど、そうとなれば、敵の包囲を前に、既に我々は、孤立している事になる。継戦能力を保持する為の物資が全て、星系内で賄えるわけでは無い以上、我々も無駄のない闘い方をしなければいけませんね。」
ユーシンはそう言いながら、会議参加者たちに釘をさすような視線を送った。復興が完了し、生産能力の高い星系を背後にしての闘いだからといって、何でも無制限に補給されて来るわけでは無い。各部隊を率いる司令官たちには、それをわきまえて戦闘を展開してもらう必要があった。
食料や資材など、ほとんどの継戦上必要な物資は、「イヌチヨーナ星系」で生産できるのだが、ミサイルのセンサー部品の一部や、戦闘艇の構造材となる希少金属は、外から持ち込まなければならないものもある。備蓄もあるが、無限では無い。それらはほんの一部だから、ともすれば忘れてしまいがちだが、忘れてもらっては困るので、ユーシンは釘を刺しておいたのだ。
その後は、ヤモカーケスから各種必要物資の備蓄状況などの報告や、それに対する各部隊司令官からの質疑応答等が繰り広げられていたが、そこに連絡が入る。
「敵艦隊、ワープの兆候を示しています。ワープアウトポイントの特定が、完了しました。」
「ヤマヤ国」艦隊旗艦の通信仕官からの報告で、会議参加者たちは一斉にベルトを外して、シートから離れた。無重力空間中に、彼等の体は舞い上がる。
「諸君!では、直ちに、担当宙域に急行してもらいたい。武運を祈る!」
タケマヤルはそう声高に叫び、額に手を当てて会議参加者たちに敬礼を見せた。
「行ってまいります、総司令殿!」
「あなた方『ヤマヤ国』軍の健闘を祈ります!」
「君達『ユラギ国』軍もしっかり頼んだぞ!」
そんな挨拶の言葉が一しきり飛び交った後、次々と会議室を出て行く参加者達だった。無重力空間を飛翔して行く多くの人影を見送った後、引き続き席に身を固定させたままのユーシンは「ふうっ」と一つ溜息を付いて、同じく席に身を固定させたままのバルベリーゴを見た。バルベリーゴは、キッっと口を真一文字に引き結び、前方にある壁を睨み据えている。
「戦争だな、とうとう。」
と、ユーシン。
「始まっちまいやがったなぁ、ガキィ。」
と、バルベリーゴ。
遊撃部隊の「キグナス」は当面待機なので、今は彼等だけが、やる事が無いのだった。ついに戦争が始まったとの緊張と興奮の中、特にやるべきことが無いというのは、それはそれで、精神的には辛いものがあるのだった。
今回の投稿は、ここまでです。今週の投稿も、ここまでです。次回の投稿は '17/10/6 です。
今回も、「イヌチヨーナ」の防衛体制とかを事細かに書いたので、面倒くさい説話だったかもしれません。最前面には正規兵を出し、民間の志願兵は少し下がった位置で無人攻撃機等のオペレートとかいう状況は、今後の戦闘の展開に関わる部分なので、一応、覚えておいて頂きたいです。老人や若年者も大勢いる事なども、忘れずにおいて欲しいです。そして、彼我の戦力差、「キグナス」の役割、色んな状況を踏まえたうえで、星系攻防という大規模戦闘を目撃して頂きたいです。というわけで、
次回 第71話 総力戦第1ラウンド です。
「コーリク国」も、かなり必死になっているらしい、ということも、念頭においてください。お互い必死です。その上での総力戦です。これまでになかった規模での戦闘になります。ご期待ください。




