第66話 和解への糸口
しばらくは、ユーシン達は住民への食糧の配給や炊き出しの作業を手伝った。インフラが破壊され、自宅で煮炊きも出来ない住民達は、何十日かぶりでの温かい食事にありついたのだった。食材を手当たり次第に放り込んだような、ユーシンには名前も分からない煮物料理だったが、ここの住民の口には合ったようだ。皆一様に、幸せそうな笑顔を見せて食べている。
ノノは負傷者の手当てで大忙しだ。ニコルや「ユラギ」兵にも手伝わせて、次々に患者を診ていた。
丸一日もそんな作業に費やした事で、ようやく当面の空腹と負傷への処置が終わり、住民達のほとんどは引き上げて行った。半壊状態の家屋での生活に戻ったのだ。「ユラギ」兵により、宙賊の遺体の収容も始められ、その他の異臭のもとになるものの片づけなど、生活再建に必要な事が、一つ一つ実施されて行った。
だが、役場建物に残った住民代表は、不安の色を隠せずに、「ユラギ国」軍兵士を問い詰めていた。
「当コロニーの食糧生産システムや、各種のインフラシステムは、全て破壊されてしまっている。それらを復旧させてもらう事と、復旧されるまでの食糧や医療等の支援の継続が無いと、我々の生活は成り立たない。今の『ユラギ国』に、それをやるだけの余裕があるのだろうか?『ヤマヤ国』からは十分な支援が期待出来るのだろうか?」
役場建物にある会議室で、住民代表のそんな問いかけに、兵は返事に窮していた。とてもイエスと答えられる状態では無い。両国の状況では、この住民の要求に答える事は、どう考えても不可能なのだろう。だが、はっきりノーとも言えるはずがない。そんな事をすれば、住民による暴動も起きかねない。
「上層部と相談して、善処します。」
といった、あいまいな返答に終始するしか無かった。
「善処って・・本当に、大丈夫なのか?このままでは我々は全員、餓死の憂き目を見るのだぞ。」
不安と不満をその顔いっぱいに溢れさせて、兵に詰め寄る住民代表だが、兵からは安心出来そうな反応は引き出せない。宙賊から解放されたとはいえ、彼等の受難は、まだ終わらないようだ。
「もし『ユラギ国』にも『ヤマヤ国』にも、我々を支援する力が無いとしたら、我々はどうすれば良いのだ?このままここで、死に絶えて行くしかないのか?せっかく宙賊から解放されたというのに、結局は命長らえる事は出来ないのか・・」
絶望に満ちた呟きも漏れた。安心できる言葉など聞けそうになくても、これでは住民代表も、帰るに帰れない。帰って住民達に、何と説明すれば良いのか、そんな想いからか代表達は、色良い返事の出来ない兵士達の前に、不安気な顔を曝して居座り続けるしか無かった。
会議室に、重苦しい沈黙が立ち込める。話し合いを傍聴していたユーシンは、それまでは部外者だからと発言を控えていたが、たまらなくなって口を挟んだ。
「あなた方は、機構軍の援助はそんなに嫌なのですか?機構軍を頼りさえすれば、そんな問題は、たちどころに解決するのに?過去のわだかまりで、ここまで危機的な状況でも、機構軍に心を許す事ができないのですか?」
「機構軍?機構軍というのは、かつて『ユラギ国』を裏切った、極悪非道の武装集団の事だろう。そんなものが、当てになるというのか?」
住民代表は、怪訝な顔でユーシンを見つめる。
「違う!機構軍は極悪非道なんかじゃない。過去に『ユラギ国』を裏切ったのも、機構軍の極一部の不心得者であって、多くの機構軍兵士は、銀河の平和の為に命を懸けて戦っている。俺の知っている機構軍将兵は、誠実で正義感のある、信用できる人達ばかりだ。」
ユーシンの脳裏には、ブルーハルトが、ガリアスが、そして今は無きアドリアーノが浮かんでいた。彼らが極悪非道との間違った評価を受ける事は、ユーシンには耐えられない。
「そうなのか?本当なのか?それは。我々も、機構軍に関しては人伝にしか聞いた事は無く、その実態は確かめようも無いのだ。しかし、君が、我々の為に色々と骨を折ってくれた君がそう言うのなら、機構軍というものに頼ってみたい。今の我々は、御覧の通りに藁をもすがりたい状況だ。君が、機構軍は信用できる、というなら、我々もそれを信用するさ。」
思いがけない柔軟な反応に、ユーシンが返ってびっくりした。
「そうなんだ。一般市民レベルじゃ、機構軍への拒絶反応も、それほど頑ななものじゃないんだ。国の上層部の人間だけが、頑なに機構軍を拒否しているだけなのかな。」
「それはまぁ、そうだろう。機構軍に裏切られたというのは何十年も前の話だからな。国の実権を握る族長会議のメンバー等は、その記憶を鮮明に留めているだろうが、我々はそうでもないからな。」
若い兵の1人が、ユーシンの問いかけに答えた。
「もう一回、掛け合って見る必要があるな。サムダージュやプキキニに。まあ、最終的には『族長会議』ってのに、機構軍を容認してもらわなければ、いけないんだろうけどな。」
「我々からも族長会議に、機構軍への救援要請を願い出てみるよ。」
「我々も上官を通じて、意見の具申をしてみよう。」
住民代表も兵士達も、そう言った。当面の行動目標が定まると、先行きは相変わらず不透明でも、人は活力を取り戻すものらしい。住民代表は、足取りも軽く帰って行った。
ユーシンも急いで「キグナス」を目指した。取りあえずは、サムダージュに直談判する事から始めるつもりだった。
だが、「キグナス」に戻るや否や、「ヤマヤ国」艦隊旗艦に行くようにと、副船長のチェリオから言われた。バルベリーゴは既に、そっちにいるらしい。同じ第3惑星の軌道上の、別のコロニーに停泊している「ヤマヤ国」艦隊旗艦に、シャトルで向かったユーシン。
同じくリング状のコロニーの中心にある港湾施設に、旗艦は係留されていた。シャトルを降りてからは、「ヤマヤ国」軍兵士に案内され、旗艦の中にある会議室にユーシンは通された。
無重力空間中だが、会議は平面のテーブルを囲む形で行われていた。参加者たちは、ベルトによって強引に、同一平面上に縛り付けられている。
「おお。来られた。来られた。ユーシン殿、お待ちしておりました。」
ヤモカーケスに挨拶されたユーシンは、その口調や物腰が、やけに丁寧な事に少し違和感を覚えながら、指定された席に体を固定した。
「我らが英雄殿のお出ましだ。早速、本題に入ろうか。」
「ヤマヤ国」艦隊司令長官のタケマヤルが言った。
「何だよ、英雄って、気持ち悪いなぁ。」
当惑したユーシンは、タケマヤルの隣に座を占めているバルベリーゴの方に、思わず目をやった。ユーシンから3人挟んだ席にバルベリーゴが居て、その向こうがタケマヤル、更にその向こうにヤモカーケス、サムダージュが続く配置だ。
「例の『コーリク国』の伏兵に対するお前の対処が、えらく高い評価を得ているみてぇだなぁ。」
バルベリーゴは、何が愉快なのか、ニヤニヤしっぱなしでユーシンにそう言った。
「は?」
ユーシンは未だに状況が呑み込めない。
「うむ、実に感服いたした。」
タケマヤルがユーシンに向かって話し始めた。「伏兵の存在を見抜いた慧眼、迷わず敵前に飛び込む勇気、氷塊の水蒸気爆発を利用した戦術、小さい氷塊に百発百中でプロトンレーザーを命中させた射撃精度、そのどれをとっても、眼を見張るものがある。それに、そもそも『ウォタリングキグナス』の参戦をバルベリーゴ船長に進言してくれたのも、君だそうじゃないか。それら、君のしてくれた全ての事に、我等は感謝してもしきれるものでは無いし、驚愕を感じてもいるのだ。」
ヤモカーケスも口を挟んで来た。
「そうですとも。『ウォタリングキグナス』の参戦が無かったら、あの4隻の伏兵に我々は、どれだけ甚大な被害を受けていたか分からない。壊滅的打撃か、もしかしたら連合艦隊の全滅も、有り得たかもしれない。あの4隻の戦力分析、そして、あの4隻を撃退した後に『イヌチヨーナ星系』から逃げ出した『コーリク国』軍戦力等を検証した結果、我々は大変危険な勝負に打って出ていた事を思い知らされた。そして、『ウォタリングキグナス』の参戦が無ければ、悲惨な結末になっていた、と結論付けられたのです。」
再びタケマヤル総司令官が話し出す。
「それに君は、我らが仕掛けたツキノカの誘惑にも屈っしない、清廉な意志の強さをも見せてくれた。」
「え?じゃあ、ツキノカさんに裏で指示していたのは・・」
「ああ。この際正直に言おう。私がツキノカに、『キグナス』の若い船員を誘惑して、『アマテラス』の設計図を盗み見る様に指示したのだ。」
と、白状したタケマヤル。その隣で、ヤレヤレと言いた気な表情のバルベリーゴ。
「“重ね着作戦”も、総司令官の差し金ですか?」
「重ね着・・?いや、それはよく分からんが・・」
首を傾げたタケマヤルは、話を続ける。「まぁ、とにかく、我々は君に絶大な感謝と尊敬の念を持つに至った。君が来る前までの話し合いで、その事に意見の一致を見たのだ。付いては君に、我が連合艦隊の特別参謀の任に就いて頂きたい。」
「ええ?参謀・・・!? いや、俺、操船見習いだから・・」
「ああ。もちろん普段は、『キグナス』に乗船して、操船見習いとしての業務に付いていてもらって構わない。ただ、重要な判断を要する局面では、常に君の意見も聞かせてもらってから、判断を下すようにしたいというだけだ。」
「ええ?いや・・そんな・・ええ・・?」
驚きで、ロクに言葉も紡げないユーシンを差し置いて、話は進んで行く。
「『ユラギ国』の方々も、その事に異存はありませんな。」
ヤモカーケスが言った。
「うむ。コロニーに到着するや否や、住民の事を気にかけ、彼らを支援する行動に出た彼の姿にも、我々は感銘を受けている。戦闘で見せてもらった彼の能力に加え、コロニーに着いてから見せてもらった彼の誠実さからしても、彼の特別参謀就任に、我々『ユラギ国』に異存はない。そうだな、プキキニ。」
サムダージュがそう返答し、最後に、隣にいるプキキニに視線を向けた。
「はい。私も機構軍と同盟関係にあるという事で、『キグナス』クルーにも僅かにではありますが、不信感を持っていました。が、この共闘が始まってからの『キグナス』クルーの働きぶり、特に、ユーシン・マグレブ殿の様子をサムダージュ情報官から聞くに及び、考えを改めました。私も彼の特別参謀就任に、賛成致します。」
満足気に「ユラギ国」の者達の意見を聞き終えたタケマヤルは、ユーシンに向き直って言った。
「こういう事だ。引き付けて頂けるかな?ユーシン・マグレブ殿。」
「ええー・・」
ユーシンはまた、思わずバルベリーゴを見た。
「やっとけ、ユーシン。」
船長に命じられれば、否やは無かった。
「じゃあ、まあ、やるよ。」
「そうか!引き付けてくれるか。有り難い。」
タケマヤルの言葉と共に、会議出席者達から拍手が起こった。ひとしきり響き渡った後、タケマヤルは気分を切り替えるかのように、声を改めて言った。
「では、早速、作戦会議と行くか。予測される『コーリク国』軍の侵攻に、どのように対抗するかだが・・・」
「そんなの、後だろう。」
ユーシンは即答した。
「ええ?」
ヤモカーケスが疑問の声を上げる。「それを最も危惧しておられたのは、ユーシン殿では?あなたの危惧を受けて、この議題での会議を開催する事になったのですが。」
「確かに、『コーリク国』軍が侵攻してくる可能性は高いし、それは重大な脅威だけど、その前に、『イヌチヨーナ星系』の人々の生活を再建しなくちゃ。ボロボロの市民を後に背負っての闘いじゃ、連合艦隊も力を発揮出来無いだろう。『コーリク国』軍が全力で攻めてくるなら、こっちも総力戦になる。活力を回復した市民の、全面的な協力を得なければ、絶対に勝ち目はない。まずは、市民の生活再建に全力を上げないと。」
「・・そうか。そうだな。」
ユーシンの発言に頷いたタケマヤル。「確かに、兵が飢えてしまっては、闘いも何もないが、この『イヌチヨーナ星系』にはもう、ロクに食料も、食料を生産する手段も、残っていないのだからな。市民すら食べていけないのに、そこに駐留する軍の兵が食べて行けるわけがない。」
「しかし、『イヌチヨーナ星系』の住民を食べさせて行くだけの食糧をかき集めて、ここに輸送して来る余力など、今の『ユラギ国』には・・」
サムダージュが、苦々し気にそう言うと、
「我等『ヤマヤ国』も、直ぐには、それだけ大量の食糧や輸送手段は、用意できませんな。」
と、ヤモカーケスも伏し目がちにそう言った。「敵を迎え撃つどころか、市民を食わせる事もできんのか、我等は。情けない事だ。」
「この期に及んでも、まだ機構軍に頼るのは嫌なのか?『ユラギ国』は?」
そう言って、ユーシンはプキキニを見た。彼が「ユラギ国」の中でも、機構軍拒絶派の急先鋒であるとの認識からだ。
「その事だが、ユーシン殿は、機構軍が信頼に足る組織だと、確信を持っているのか。」
探るような上目づかいで、プキキニはユーシンを見て来た。
「もちろんだ!」
力強く、きっぱりと言い切ったユーシン。「確かに、機構軍も大きな組織だから、その中には良からぬ心根を持った人間もいる。俺もそんな奴に、酷い目に合わされそうになったことがある。」
「イリノア星系」での出来事を思い出しながら言ったユーシン。
「だが、信用できる人だって、間違いなくいる。『ユラギ国』再建の為に、誠実に熱意をもって取り組んでくれると、自信を持って約束できる人が、機構軍には間違いなくいる。」
「あの、ブルーハルトとかいう者も、そうか?」
プキキニは尋ねた。「サムダージュ情報官から、君と彼の通信記録を見せてもらった。彼に関しては、信用できるという印象を持った。私も、機構軍将兵というものは会った事も、見た事も無かったので、あんな誠実味の溢れる人物が、機構軍の大佐という重職を務めているなんて、我が目を疑う想いだった。」
「ああ!ブルーハルト大佐は、絶対に信用できる人だ。俺が保証する。あの人に任せておけば、『ユラギ国』の再建は間違いないよ。」
「そうか。・・やはり我々は、考えを改めるべきなのかも・・しかし・・支援は本当に得られるのか・・?」
ユーシンの真っ直ぐな視線の前で、プキキニは迷いを見せる。ユーシンやブルーハルトを疑う気にはなれないのだろう。だが、長年聞かされてきた機構軍への悪評は、彼の中に強固にこびりついている。簡単に結論を下す事は出来ないのだろう。
「とりあえず、話してみようよ。ブルーハルト大佐と。」
そう言ったユーシンは、バルベリーゴに視線を移した。「オヤジ、大佐との直通回線はあるんだろ?その・・例の任務があるから。」
「キグナス」が機構軍の臨時戦闘艦である事は、一応まだ秘密だから言葉を選んだユーシンだった。
「ああ、俺達は機構軍に要請を受けて臨時戦闘艦を宣言してるからなぁ。大佐との直通回線も、設定してあるぜぇ。」
(言って良いのかい!)
せっかく言葉を選んだのが無駄になったと、ユーシンは内心で、地団太を踏んだ。
「総司令官殿、ちょっと通信装置借りるぜぇ。・・と言っても、向うは忙しいからな。今、出れるかどうか、分からんぜぇ。」
タケマヤルの返事も聞かずに、バルベリーゴは手元のコンソールをいじり出した。それで通信装置を操作できるようだ。タケマヤルは黙ってそれを見守っていた。操作を始めてから、1分程の待ち時間はあったが、ブルーハルトは通信に応じたようだ。全員の席の前に一つずつある小さなモニターに、ブルーハルトの顔が映し出された。
「シュルベール・ド・ブルーハルト宇宙保安機構軍大佐ですが・・ああ、バルベリーゴ船長・・・ユーシン君もいるのか。」
ブルーハルトの眼が上下左右に動き、そしてようやく見つけたという感じで、2人の名を呼んだ。会議出席者全員の顔が、ブルーハルトが見ているモニターには縦横に整列されて表示されているようだ。
「大佐。今、『イヌチヨーナ星系』にいるんですけど、宙賊の被害からの復興が、『ユラギ国』や『ヤマヤ国』だけでは難しい状況なんだ。もし、機構軍に依頼したら、支援してもらえるんですかねえ。」
余りに砕けたユーシンの話しぶりに、会議出席者の中には不安気な顔を見せる者もいた。失礼な振る舞いで、ブルーハルトの機嫌を損ねる事でも危惧したのだろう。
「おお、それは願っても無い事だ。兵力の方は、知っての通りあちこちに取られていて、今すぐは送り出せない状況だが、民生部門は余力がある。食料や医療や教育・産業の復興に関する支援は、いつでもできるように準備してある。『イヌチヨーナ星系』が宙賊の被害にあっている事は知っていたから、そちらの人口や文化や技術水準に関する情報は集めておいて、要請があり次第、すぐにでも送り出せる体勢になっている。3日もあれば、そちらに届く状態だよ。」
このブルーハルトの言葉に、プキキニは思わず叫び出す程驚いていた。
「何と!まだ支援要請もしない内から、これまで同盟を拒み続けて来た我等を支援する準備を、既に整えていたというのか!」
「機構軍への『ユラギ国』の不信感は」
ブルーハルトは真っ直ぐな視線を送りながら話した。「我ら機構軍の不徳の致すところです。我々の裏切りが、我々の支援の手を、あなた方に届かなくさせた。今日の『ユラギ国』の現状には、機構軍にも責任があると私は考えている。だから、救いを求められれば直ぐに応じられるようにしておくのは、当然の事なのです。」
会議室は沈黙に包まれた。ブルーハルトの誠実さへの、感嘆の沈黙だ。
「このような男が、機構軍にはいるのか。それなのに、我々は、何も知らないまま、機構軍を拒み続けていた。」
「そうそう。良く知りもしない相手を、一方的に拒絶したり否定したりなんて、するもんじゃないって事だよ。ちゃんと正面から向き合って話してから、好きとか嫌いとか、信用できるとかでき無いとか、そういう判断を下さないとね。」
ユーシンの話しぶりは、会議という状況をすっかり忘れてしまっているかのように、砕けたものだった。
「私も、ひと言良いですか?」
そんな言葉と共に、ブルーハルトを押しのけるように、画面の半分をシャラナの顔が占領した。
「しゃ・・・シャラナ殿!」
驚きの声を上げたのは、プキキニだった。「ヤマヤ国」の者達は、既にシャラナを見ているので、それほど驚きはしない。
「まぁ、プキキニ殿ではありませんか。お久しぶりです。」
(そうか、シャラナさんは「ユラギ国」から「ヤマヤ国」に嫁いだから、「ユラギ国」に知り合いがいても不思議はないのか。)
ユーシンが内心でそう呟いている間に、シャラナは話し出した。
「プキキニ殿は、未だに機構軍への不信感をお持ちなのですか?私は今、機構軍の保護下にあります。皆さん、大変親切に接してくださいますよ。何一つ不自由のない生活を、提供して頂いております。特に、こちらのブルーハルト大佐は、御自宅で、私共の部屋を提供して下さいまして、親身に対応して下さっています。プキキニ殿。私の言葉を『ヤマヤ国』の族長会議に届けて下さい。機構軍を拒否してはなりません。信じるべきです。過去のわだかまりを捨てて、機構軍の力をお借りする事が、『ユラギ国』の平和と発展には不可欠です。」
「おお!シャラナ殿まで、そうおっしゃいますか。あなたは族長会議にも、未だに大きな影響力をお持ちだ。・・分かりました。族長達は私が説得します。あなたの言葉もあれば、説得は可能でしょう。機構軍の支援を受け入れましょう。まだ族長会議の承認は得ていませんが、私が責任を持ちます。今すぐ支援をお願いいたします、ブルーハルト宇宙機構軍大佐殿!」
言い終わった後、ちらりとユーシンを見たプキキニは、少し照れたような笑いを浮かべた。
「承知いたしました。『ユラギ国』が再び機構軍に信頼を寄せて頂けた事、心より嬉しく思います。二度とこの信頼を裏切らぬよう、心して復興支援に当たります。では、私は急ぎますので、これで。」
最後はあわただしく、通信は終わった。
「あれだけ機構軍を拒んでいた私が、なんとも、軽薄な様を曝してしまって・・お恥ずかしい。だが、後悔はしませんよ。機構軍の支援を受け入れた事には。」
プキキニは言った。
「そんな事より、族長達の説得だろう。独断先行で事を決めてしまったのだから、覚悟がいるぞ。私も手伝う。早速、族長達に連絡を取ろう。」
サムダージュはそう言うと、プキキニと連れ立って、会議の面々に軽く会釈をした上で、その場から飛んで行った。急いで出て行ったという意味では無く、文字通り無重力の中を飛翔したという事だ。
「これでひとまず、一件落着かな?」
タケマヤルが言ったが、ユーシンは首を振った。
「やっぱり、『コーリク国』への対策も急務ですよ。『イヌチヨーナ』復興が優先とは言っても、復興と同時に、やっておくべきことはたくさんある。」
「なるほど、拝聴致しましょう。連合艦隊特別参謀殿の見解を。」
タケマヤルにそう言われ、ユーシンは遠慮なく、自分の意見を展開して行った。
今回の投稿は、ここまでです。今週の投稿も、ここまでです。次回の投稿は、 '17/9/23 です。
「ユラギ国」と機構軍の和解が、あまりにもとんとん拍子で進んでしまいました。あれだけ深刻だったわだかまりが、そう簡単に解消するものか?と思われた読者様もおられたかもしれませんが、政治的な説得なんてものに行数をつぎ込んでも退屈な話になると思い、多少リアリティーを犠牲にしても手短に進めてみました。ユーシンやブルーハルトが信頼を勝ち取ったことがきっかけになったわけですが、国と国や組織と組織の歴史的な対立なんていうのも、個人レベルの信頼を積み重ねて解決していくものなのかな、などと思ったりします。というわけで、
次回 第67話 復興と防衛と です。
機構軍の支援が、ようやく受け入れられる事になりましたが、「イヌチヨーナ」は復興するでしょうか?「コーリク国」からの防衛はどうなるでしょうか?ユーシンはじめ、「キグナス」クルーは、どうなっていくでしょうか?色々思いを巡らせながら次回を待っていただけると、嬉しく思います。




