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銀河戦國史 (星々を駆る重武装宇宙商船「ウォタリングキグナス」-ヤマヤの虜囚-)  作者: 歳越 宇宙(ときごえ そら)
ヴォーソム星団・キークト星団の章
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第61話 捕らわれた白鳥

「たった3艦で、何が停船命令だぁ、あのバカは。逃げようと思えば簡単に逃げられるし、小型戦闘艦くれぇなら、『キグナス』でも十分に撃破は可能なんだぜぇ。身の程を知らねぇ奴だなぁ。この艦隊は。」

 バルベリーゴの呆れたような発言だ。

「ユーシンの射撃能力を考えれば、中型艦だって、いや、3艦全部を撃破する事も、不可能とは思えんな。」

 ラオも言った。

「艦籍照合終了。この艦隊、『ヤマヤ国』のものだ!」

「何だとぉ?」

 サヒーブの報告に、眉をひそめ、首を傾げたバルベリーゴ。「何だって『ヤマヤ国』の艦が、こんな所にいやがるんだぁ?それに、俺達を拿捕(だほ)しようとしている理由も、分からねぇぜぇ。『UF』と『ヤマヤ国』は友好関係にあるはずだぁ。」

「捕まって見れば、分かるんじゃないか?」

 ユーシンの一言に、一同は口をあんぐりとさせる程、驚いた。

「何言い出すんだ!正気か?ユーシン。」

 武装管制席から、ジャカールが声を掛ける。

「多分だけど、『ヤマヤ国』の艦隊は、俺達を『コーリク国』軍だと思っているんじゃないかな?彼らがここにいる理由も、『イヌチヨーナ星系』の状況を確認しに来たというのが、一番妥当だと思う。」

 説明を受けて、バルベリーゴは納得顔になった。

「なるほど。『イヌチヨーナ』に何かあったってのは、さすがに『ヤマヤ国』にだって分かるはずだからな。奴等にとっても生命線である貿易拠点の状況が、気になって見に来るってのは分かる。そして、宙賊の背後に『コーリク国』がいる事も知っているだろうから、この宙域で見つけた船を、『コーリク国』のものだと思っても不思議はないか。」

「そうであるか?」

 疑問を呈したのはラオだ。「艦籍照合すれば、この船が『キグナス』である事は分かるだろう。それに、『コーリク国』の戦闘艦だと思ったのなら、尻尾を巻いて逃げ出すと思えるのだが、私には。」

 ユーシンは、ラオの方に向き直って話し出した。

「スペースコームの外にある『ヤマヤ国』の軍艦が、スペースコーム専門の『キグナス』のデーターを持っていない可能性もあるし、偽装を疑っているのかもしれない。実際には艦籍の偽装って難しいんだけど、スペースコーム用の宇宙船の事をあまり知らない分、偽装の可能性を高めに見積もってしまう事も有り得る。それに、『ヤマヤ国』軍が『コーリク国』軍に勝てないって言っても、1艦だけで航行している『コーリク国』戦闘艦に、複数の『ヤマヤ国』戦闘艦で挑むなら、十分に勝ち目はある。むしろ、絶好のチャンスと思っても不思議じゃない。」

「何にしても、ユーシンは奴等が、俺達を『コーリク国』の戦闘艦だと思い、敵情収集か何かのつもりで拿捕(だほ)しようとしているって考えているんだな。」

 サヒーブが、ユーシンに質した。

「そうだ。」

「それにしても、捕まってやるって話は無いだろう。何されるか分かったもんじゃないだろ。」

 そう言うジャカールは顔面蒼白だ。そんなに臆病な事じゃ、シャラナに嫌われるぞと言ってやりたいユーシン。

「大丈夫だ。俺達が『UF』の船である『ウォタリングキグナス』だっていう事は、すぐに気付いてもらえるさ。『コーリク国』の艦じゃ無く、友好関係にある商社の船だって分かったら、危害を加えられる心配はない。」

「本当にそうか?大丈夫なのか?逃げた方が良いんじゃないのか?」

 そう言いながら、訴えるような眼をバルベリーゴに向けたジャカール。

「あいつらが『ヤマヤ国』の者なのなら、逃げたり抵抗したりする必要はねぇって事だぁ。抵抗しねぇから、この船に乗り移って来いって、言ってやれば良いぜぇ。」

「オヤジ!それ、臨検を受け入れるって事だろ?大丈夫か?そのまま、捕虜にされたりしねぇか?」

 益々顔色の悪くなったジャカール。

「あっはっは、コイツは良い。シャラナ嬢に続いて、今度はわしらが虜囚となるのか。」

「笑いごとか!ラオ。」

 ジャカールがラオに噛み付いた。

「じゃあ、臨検受け入れを伝えるぜ、オヤジ。」

 そう言って、コンソールを叩き出したサヒーブ。

「本当に?本当に受け入れるのか?今からでも、逃げようと思えば逃げれるだろ。」

「覚悟固めろよ、ジャカール。もう、メインスラスターの火は落としちまったよ。」

 ユーシンは、少し意地の悪い口調でジャカールに告げた。数分後、相手の艦隊から戦闘艇が発進し、「キグナス」へと向かって来た。3艦の砲塔は全て「キグナス」に向けられている。怪しい動きをしたら、一斉砲撃を受けそうだ。

 戦闘艇が「キグナス」に収容される様子を、「う・・うう」と震えるうめき声を漏らしながら、モニター越しにジャカールは見ていた。更に数分後、航宙指揮室に、貫頭衣を腰ひもで縛ったような、見慣れぬ衣服を着た一団がやって来た。見慣れぬと言っても、見覚えはあった。シャラナも確か、同じような服を着ていた。色は違うが。シャラナは濃い紫で、彼等は薄いオレンジだった。

「この船は、『コーリク国』の戦闘艦では無いと、この者達も言っておったが、嘘偽りを言うと為にならんぞ。」

 一団の1人の男が大音声(だいおんじょう)でそう言った。この者達というのは、格納庫からここまで彼らを案内して来た、キムルやギボンズの事を言っているようだ。

「嘘じゃぁねぇさぁ。艦籍照合すれば分かるだろうがぁ。」

 バルベリーゴは穏やかに言い返した。

「彼らの言によると」

 更に男は言った。彼等とはキムルとギボンズだ。「この船は『UF』の持ち船『ウォタリングキグナス』だという事だが、我らは『ウォタリングキグナス』の詳細データーを持ち合わせておらぬので、この船が『ウォタリングキグナス』である事は、確認できない。それに、偽装の可能性もあるので、艦籍照合だけでは信用する事も出来ない。」

「艦籍の偽装なんざぁ、なかなか出来るものじゃぁねぇぜぇ。船の熱源パターンなんぞも、別の船のものをこの船で完璧に再現するなんて技術は、未だにどこにもねぇんだ。」

「それも我々には確認できない。我が祖国『ヤマヤ』と遠く隔たった宙域にどんな技術があるかなど、我々には分からぬのだからな。」

 『ヤマヤ』の男は頑なだった。

「やれやれ、あれも分からねぇ、これも知らねぇじゃぁ、ラチが開かねぇなぁ。あんたらはどうやって、俺達の素性を確かめるつもりなんだぁ。」

 バルベリーゴの問いかけに、男は答えた。

「お前達を全員我が艦に連行し、1人1人取り調べるより他に無いと考えておる。」

「何だよそれ!」

 ジャカールが震える声で反論した。「完全に捕虜扱いじゃないか。それで『UF』の『ウォタリングキグナス』だってのが本当だったら、あんたどうやって責任を取ってくれるんだ。」

「それは、その時になってから考えれば良い。」

 男は淡々と答えた。いや、淡々としている風を装って、その眼の奥に微かな焦りの色があるようにも見受けられる。

「もっと簡単な方法があるぜ。」

 そう言ったのはユーシンだった。「あんた達が絶対に信用するだろう人に証言してもらう。それに、あんた達がそんなに執拗に俺達を調べたがっている理由も、その人を見つけたいからだと思うし。」

「何だと?」

 男は初めて、表情というものをその顔にはっきりと浮かべた。

「シャラナさんを、探しているんだろ?」

「何ぃっ!何故、お前がシャラナ様のお名前を・・!やはりお前達が、シャラナ様を・・」

「慌てるなよ。『イヌチヨー星系』からシャラナさん達を拉致したのは俺達じゃないよ。」

 そう言って血相を変えた『ヤマヤ』の男を制したユーシンは、サヒーブに向き直って言った。

「ワープ通信をブルーハルト邸に繋いで、シャラナさんを呼び出してくれ。」

「もうやってるよ。」

 サヒーブも、男達の服装を見てピンと来ていたようだ。シャラナと同じ『ヤマヤ国』の中でも、ハークナナーイオ伯領の者達なのだろう。そうであるなら、シャラナを探す事に必死となり、なりふりも構わなかったとしても不思議では無い。

「シャラナ様・・シャラナ様と話が出来るのか?本当なのか?」

 さっきまでの無表情が嘘のように、男は取り乱し、焦りと驚きを露わにしている。1分もしないで、モニターにシャラナが映し出された。

「しゃ・・シャラナ様ぁあああ!」

 両手を高々と頭上にかざした、大仰(おおぎょう)な振る舞いを男は見せる。女神の降臨でも振り仰ぐかのようだ。だが、シャラナの見ているモニターには男は映っていないのか、全く気にする様子も無い。

「あらぁ、ユーシンさん。お久しぶりです。お変わりありませんか?と言っても、危険な任務の真っ最中ですものね。平穏という事は無いですわよね。うふふ。」

 親し気にユーシンに話し掛けるシャラナの姿に、男の顔は、キョトンに変わった。

「シャラナさん、俺が今いる船、何ですか?」

「は?うふふ、何をおっしゃっていますの。可笑しなユーシンさんです事。そこは、宇宙商船『ウォタリングキグナス』の航宙指揮室に決まっているじゃありませんか。どれだけの時間をそこで過ごしたとお思いですの?私をここまで運んでくれた大恩ある船でもあります。忘れるはずも、見間違えるはずもありませんわ。」

 それを聞きながら、ユーシンは男に向き直り、そして言った。

「ねっ。言ったでしょ。それとも、シャラナさんの言葉も、信用できませんか?」

「あ・・あわわ・・あうう・・」

 男は、驚きと感激で言葉が上手く紡げないようだ。

「そこに、どなたか、おられるのですか?ユーシンさん。」

 そのシャラナの言葉と同時に、サヒーブがコンソールを操作した。それでシャラナにも、男の姿が見えるようになったようだ。

「あら?ハタマヤケ。ハタマヤケではありませんか。ユーシンさん。『ヤマヤ国』にまでいらしたのですか?『キグナス』で『ヤマヤ国』にまで、行く事が出来るので・・」

 シャラナの質問は、ハタマヤケと呼ばれた男の絶叫で遮られた。

「シャラナ様ああああ!よくご無事でぇええ!うわぁああ、シャラナ様が生きておられたぁああ!」

「これ、ハタマヤケ!見苦しく取り乱すのではありません。ユーシンさん達を驚かせてしまうではありませんか。私なら無事ですし、何一つ不自由のない暮らしをしております。私に付いては、何一つ案じる必要はありません。」

 その横から、ユーシンが顔を突き出して来た。

「ユーシン、顔をその人に近づけなくても、シャラナさんには見えてるぞ、お前の事も。」

 サヒーブが冷静に指摘した。

「あ、そうなのか。えへへ。」

 小さく照れ笑いをして姿勢を戻したユーシンは、シャラナに向かって、再び話し出した。「あのさぁ、シャラナさん。この人達が俺達の事を、『コーリク国』の者じゃないかって疑ってるんだ。だから、証言してくれないかなぁ。俺達が間違いなく『UF』の、『ウォタリングキグナス』のクルーだって事を。」

 それを聞くや、シャラナは目つきを厳しくした。穏やかな笑顔ですら威厳に満ちたシャラナは、厳しい目をするとかなりの迫力が出た。

「まぁ!これ!ハタマヤケっ!ユーシンさんと『キグナス』の皆さんは、私の命の恩人ですよ。私だけではありません。トクワキ殿も家宰達も、この方々のおかげで、今も生きていられるのです。」

「ぅおおおおお!トクワキ様も、ご無事であらせられるのですかぁああ!」

 余りの大声に、ユーシンは迷惑気に一歩退いた。

「そうです。トクワキ殿も私と共に、この方々に救い出して頂いたのです。一旦離れ離れになりましたが、明日こちらに参る予定になっています。」

「そうか。ようやくトクワキさんも『イリノア星系』に到着するのか。」

「はい。そうなのです。」

 ユーシンに向かっては、木漏れ日のごとき穏やかな微笑みを見せたシャラナだが、ハタマヤケに対しては、打って変わって、キッと厳しい目を向けた。

「それに、良くお聞きなさい、ハタマヤケ。『キグナス』クルーの皆様は、『ヤマヤ国』を窮地から救ってくださる目的で、危険を顧みずにそちらへ向かわれているのです。良いですか、ハタマヤケ!ユーシンさんや『キグナス』クルーの皆様に、失礼な振る舞いは断じて許しませんよ!『コーリク国』の者との疑いを掛けるなど、言語道断です!この方々は、私の、そして『ヤマヤ国』の、大恩人であらせられるのです。私に対する以上に、尊崇(そんすう)の念をもって接しなさい。いえ、神のごとく(あが)(たてまつ)りなさい。いえ、もう、神です。この方々は神なのです。『ヤマヤ国』にとっての守護神であらせられるのです。」

「いや、シャラナさん。言い過ぎ・・・」

「申し訳ありませんでしたああああ!」

 ハタマヤケは渾身の謝罪を繰り出した。重力があれば土下座になるのだろうが、無重力だから、空中で丸まっているだけという、間抜けな様を曝している。姿勢が安定しないから、くるくると回転してしまって、謝っているのだか、遊んでいるのだかも、分からないような有様だ。シャラナもモニターの中で、トホホ、と言いたげな様子で、手を額に当てている。

「まぁ、とにかく、俺達が『コーリク国』の者って疑いは晴れたわけだぁ。やっと落ち着いて話が出来る。あんた達がこの宙域にいる理由を、話してもらうとするぜぇ。」

 バルベリーゴが、ハタマヤケの顔を覗き込んで言った。

「ハタマヤケ。この方々に隠しごとはなりませんよ。どんなことでも、ありのままを、包み隠さず申し述べなさい。」

「ははぁああ。何なりと御下問下さい。」

「じゃぁ、シャラナさん。また連絡します。」

「はぁい。さよならぁー、ユーシンさん。」

 顔の両横で、目いっぱい掌を広げた両手を振るというシャラナの天真爛漫な所作に、ハタマヤケは度肝を抜かれている。

 そしてハタマヤケの説明により、『ヤマヤ国』の艦隊が『イヌチヨーナ星系』の様子を見て、場合によっては宙賊征伐の闘いに打って出るつもりで、『ヤマヤ国』からやって来た事が分かった。

 「ヤマヤ国」においては、皇帝の求心力という点でも「ユラギ国」経由でもたらされる地球系文物の輸入が滞っている事が問題となっていたが、ハークナナーイオ伯領においては、もっと直接的に、宙賊の脅威に曝されているとの事だった。

 ハークナナーイオ伯領は、「ヤマヤ国」内でも最も「ユラギ国」に近く、「イヌチヨーナ星系」を占拠した宙賊達がそこを拠点に、連日ハークナナーイオ伯領周辺に出没し、甚大な被害をもたらしているそうだ。

 その為ハークナナーイオ伯領主であるサザ家は、「ヤマヤ」皇帝に「イヌチヨーナ星系」解放と宙賊征伐の軍を出すように、何度も要請して来たが、「コーリク国」の進出を恐れて拒まれて来たらしい。

 一方で、機構軍への救援依頼も、「ユラギ国」への遠慮からか二の足を踏み、進退窮まった状況が続いていたとの事。業を煮やしたハークナナーイオ伯領主サザ家は、同領域の「ヤマヤ国」離脱と「コーリク国」への単独降伏すらもちらつかせ、ようやく「ヤマヤ国」軍の重い腰を上げさせた、という事だった。

 そういったハタマヤケの説明が終わった頃、またラオが報告を入れる。

「また何者かが、近くにワープアウトして来おるぞ。だが、今度は1艦だけだ。質量から言っても、小型戦闘艦であるな。」

「って事は、敵対行動って事はねぇなぁ。連絡用のお使いってところかぁ?」

 バルベリーゴの予測通り、その小型戦闘艦は非武装の連絡要員を収容するように、「キグナス」に要請して来た。

 連絡要員は、「キグナス」の航宙指揮室に入って来るや否や、叫んだ。

「申ぉぉし訳ありません!『キグナス』クルーの皆様。我が『ヤマヤ国』軍の一部隊が、勝手な真似を致しまして、皆様にご迷惑をおかけしましたようで。おい!ハークナナーイオ伯領の者!名は確か・・ハタマヤケとかいったか。この方々に『コーリク国』軍との嫌疑(けんぎ)をかけるなど、何と無礼な振る舞い。この方々は、『ヤマヤ国』王家とも長年の親交厚い『ウニヴェルズム・フォンテイン』の所属であらせられるのだぞ。」

「はい。ヤモカーケス『ヤマヤ国』軍参謀殿。我等もつい先ほど、この船が確かに『ウォタリングキグナス』である事を知るに至り、平身低頭の謝罪を致したところで。」

 ハタマヤケはヤモカーケスにも平謝りの体だ。

「ええい!順番が違うであろう。我等『ヤマヤ国』軍本隊に船籍照合を依頼しておれば、直ぐにでもこちらの船の正体はつかめたであろう。何故ハークナナーイオの部隊だけで、独断先行などするのじゃ。」

「申し訳ありません。仰せの通り、拙速(せっそく)でございました。シャラナさまの御身を案じるあまりに、冷静を欠いておりました。反省しております。」

 それを眺める「キグナス」クルー達には、白け切った空気が漂っている。彼らの怒りを鎮める為の、大げさな芝居にも見えたからだ。

「別にもう、『コーリク国』軍と疑われた事についちゃぁ、何とも思ってねぇからよぉ。いつまでもそんな事引きずるのは止めようぜぇ。」

 バルベリーゴの発言に、ヤモカーケスもほっと胸をなでおろす仕草。それもまた演技じみてわざとらしくはあったが。

「そう言って頂けると、助かります。付きましては、謝罪とお近づきの記しに、我が『ヤマヤ国』軍の本体と合流して頂きまして、我らが旗艦にて歓迎の宴などを催させて頂きたいのですが・・」

「おおっ!宴。」

と、ジャカールは思わず喜びの叫びを上げてしまったが、バルベリーゴは言った。

「俺は宴なんぞより、他国で売り捌けるような『ヤマヤ国』の産物を買い付けて、積み込みてぇなぁ。商船だからなぁ。『キグナス』は。」

「ええ。それはもう。我が艦隊内にも、『ヤマヤ国』の産物は色々と積み込んで来ております。今回はお詫びの印に、何でもすべて無償で差し上げますので、どうぞ商売にお役立て下さい。」

 バルベリーゴの要求に、愛想良く応じるヤモカーケス。

「なんだよ。宴は無しかぁ?」

 残念そうなジャカール。

「いえいえ。お望みの方には、我が国の美味と美酒を存分に振る舞わせて頂きますぞ。」

「美女もいるんだろうな。」

「はいもちろん、絶世の美女をご用意しております。」

との、ヤモカーケスとジャカールの会話。どっちが軍人でどっちが商人だか、分からない。

「随分気前が良いんだなぁ。ただ謝罪や歓迎をする事だけが、宴の目的じゃぁねぇんじゃねぇか?」

 探るような目でヤモカーケスを見つめるバルベリーゴ。

「・・ええ。実は、お願いしたき議がありまして。」

 上目遣いの、媚びるようなものごしの発言だった。

今回の投稿は、ここまでです。次回の投稿は明日、17/9/2 です。

「ヤマヤ国」のハタマヤケやヤモカーケスが、ちょっとコミカルになりすぎてしまったでしょうか?「キグナス」が拿捕されるシーンは緊張感のある感じで描きたかったし、その後のシーンはそこまでコミカルにするつもりはなかったのですが、書く前の考えと書いた後の仕上がりに、ギャップができてしまいます。シャラナも、妙にギャルっぽくなった感じがするし。せめて、新たに登場して来た人たちの立場や関係性等を、ちゃんとお伝えできていればと願う次第です。というわけで、

次回 第62話 異国の夜のアバンチュール です。

説話のタイトルからして、おちゃらけた感じになってしまいました。クライマックスに向けて、緊張感を高めて行かなきゃいけない場面なのですが、どうもこうなってしまう。おちゃらけながらも、緊張感というものを少しでも感じてもらえていれば、いいのですが。

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