第60話 自滅的拒絶反応
キプチャクやバルベリーゴの問い掛けに、目を伏せて答えるサムダージュ。一瞬だが、軽く唇を噛む仕草を、ユーシンは目の端に捕えていた。
「そこまで追い込まれているなら、機構軍を頼れば良いじゃないか。過去にどんなわだかまりがあるか知らないけど、国を滅ぼしてまでこだわる事じゃないだろう。今からでも同盟を締結して、救援を乞えば良いんだ。その仲介くらいなら、俺達『UF』がいくらでもしてやるぜ。」
「うむ。話というのはその事なのだ。こんな状態に至っても、我が国の最高意思決定機関である族長会議では、大半が機構軍への救援依頼には否定的なのだが、もし仮に、救援依頼をしたとして、どういう事になるのかを知っておきたかったのだ。機構軍への直接の問いかけも、わが国の現状では憚られるので、あんた達半軍商社に聞いてみるのだが。」
「機構軍は、救援を依頼すれば、直ぐに兵を派遣して来るさ。」
ユーシンはきっぱりと言った。「そんな事分かってるだろう?今までも、何度も地球連合と同盟するように勧告があったはずだ、機構軍から。同盟を結んで『ユラギ国』を守ってやれるようにしようって、働きかけて来ただろう?機構軍は。」
「うむ。そうだな。そしてそれを我々は拒み続けて来たから、今更、急に同盟を締結したいと言い出しても、そんな虫の良い要請は容れられないのではと思ってな。」
伏し目がちなまま、口の端だけで嘲笑気味の笑いを浮かべるサムダージュだ。
「断り続けたのは『ユラギ』っていう国家の上層部の、面子へのこだわりだろ。でも今、機構軍が介入しなければ悲惨な想いをする事になるのは、『ユラギ』の国民じゃないか。機構軍は、国家が面子の為にした事を理由に、そこの民を見捨てたりはしないよ。」
熱を込めて話したユーシン。
「そうか。機構軍は動いてくれそうか。その意見を持って行けば、少しは族長会議を説得できるか。・・だが、やはり、そう簡単には覆らないだろうな。」
サムダージュの声には、やはり祖国へのいら立ちのようなものが聞こえる。
「当然だっ!」
背後から、今まで沈黙を守っていた男の声が轟いた。「我が国が、かつて機構軍に受けた凄惨な裏切りを想えば、たとえ国が滅びに至るとも、機構軍の救援など乞うわけにはいかないのだっ!」
無機質な声色で叫んだのは、向かって左側に立つプキキニと呼ばれた痩身の男だった。
「大きな声を出すな、プキキニ。」
と言って宥めたのは、隣の恰幅の良い男、チャンゴンだ。
「たとえ国が滅びてもって、じゃあこのまま、『イヌチヨーナ』の人々を見殺しにするの?それじゃぁ『ユラギ』っていう国が『ユラギ』の国民を裏切る事になるんじゃないの?過去に何があろうと、今は機構軍に頼る以外に道は無いじゃない。」
プキキニの発言には、ニコルも憤りを露わにした。
「お前達のような、よそ者には分からないのだ。我等『ユラギ』の民の、機構軍への怒りと恨みの根の深さが。」
「御覧の通り」
サムダージュは苦笑を浮かべて言った。「我が国の機構軍への拒絶反応は、まだまだ簡単には拭えない状態なのだ。このプキキニだけじゃない。族長会議の連中はもっと頑固だ。若い連中の間には、機構軍に頼るべきだという意見も徐々に増えて来てはいるのだが、大勢を覆す日は遠そうだ。」
「そんな日は来ませんぞ、サムダージュ閣下」
低く抑えたプキキニの声だが、微かな震えが興奮を現している。「機構軍に頼る事だけは、どんなことがあっても許されないのです。祖先が味わわされた屈辱を、忘れないで頂きたい。」
サムダージュは深い溜息を付く。
(きっとこんな感じで、機構軍容認派と拒絶派が、永遠と平行線をたどる議論を続けているのだろうな。)
そう内心で呟いたユーシンは、ふと思い立った事を尋ねた。
「その族長会議に参加している人達は、宙賊に襲われたりはしないのか?」
「当然だ。」
プキキニが即答する。「わが国でも最も高貴な方々だ。『ユラギ国』においても宙賊被害の少ない、安全な『ジュチーエ星系』におられる。」
「そうか。じゃあ、その族長会議の連中が宙賊の脅威に曝されるようになれば、手のひらを返したように機構軍に頼るかもしれないな。」
「な・・何を!小僧。我らが族長様がたを愚弄する気か!? 」
「落ち着け!プキキニ。」
ユーシンに食って掛かろうとするプキキニと、それを押しとどめたチャンゴン。
「ガキィ、頭に来るのは分かるが、あんまり挑発するんじゃねぇよ。」
バルベリーゴはユーシンに釘を刺した上で言った。「『ユラギ国』の事は『ユラギ国』」が決めれば良い。機構軍に頼らねぇってこだわりを抱えたまま滅んで行くのも、『ユラギ国』の自由ってぇもんだぁ。俺達一介の商社が口を挟む事じゃぁねぇ。」
ユーシンに釘を刺した割に、バルベリーゴの発言も、「ユラギ国」への皮肉がたっぷりだ。
「滅びを望んだりなど・・するものか。・・ただ、機構軍だけは・・」
口の中でボソボソとつぶやくプキキニ。
「だが、『ヤマヤ国』が機構軍に救援を依頼するのは、妨害してくれるなよ。『ヤマヤ国』が機構軍のいる宙域に使節を派遣しようとしたら、『ユラギ』領を通してやって欲しいし、機構軍部隊が『ヤマヤ国』に向かう場合もそうだ。てめぇらが機構軍に頼りたくねぇのは良いとして、『ヤマヤ国』を道連れにするこたぁねぇだろう。」
既に、機構軍の調査チームが『ヤマヤ国』に向かおうとしている事は、彼等には伏せておく事に、バルベリーゴはしたようだ。
「『ヤマヤ国』か・・。」
考える目でサムダージュが語り出した。「彼の国には、何度も救援の依頼はしておるのだが、常に機構軍に通報しろとか、機構軍と同盟を結べとか言って来るのだ。機構軍が参戦して来るならば、自分達も出兵して良いとも言って来た。」
「どいつもこいつも、機構軍、機構軍と・・。」
プキキニの唸るような呟き。
「そりゃぁ、まぁ、そうだろう。『ヤマヤ国』の軍も、『コーリク国』軍とまともにやり合ったら、勝てそうにねぇんだろ。機構軍は銀河最強だ。そして、同盟関係にある国の窮地には、必ず駆けつける。頼るのが当然だろう。」
「そうだ。頼らない『ユラギ』が阿呆なんだ。」
と、キプチャク。いつもの機構軍嫌いはどこへ行ったのか。
「『ヤマヤ国』が直接機構軍に救援を依頼しようとした場合に、族長達がどういう反応を見せるかは、よく分からん。機構軍がユラギ領を通るのは、良い顔はせんだろうが、『ユラギ国』の軍に機構軍を押しとどめる力など有るはずは無い。救援依頼を受けたからには、機構軍は何としてでも駆けつけるのだろう?」
「ああ。万難を排して駆けつけるさ。」
ユーシンが応じた。
「ならば是非も無い。不満を胸に、機構軍が『ユラギ国』領を通過するのを、指をくわえて傍観する事になるのだろう。」
「まぁ、それで良しとするかぁ。」
バルベリーゴのその言葉に、ユーシンも同感だった。調査チームが緊急に派兵の必要ありとの結論を出せば、機構軍は「ヤマヤ国」に向かう事は可能というわけだ。調査チームが、まだしばらく「ヤマヤ国」は大丈夫だと言うなら、それはそれで良い。
「『ヤマヤ国』が直接機構軍に救援依頼をしようという動きは、今まで見せていないのか?」
ユーシンはサムダージュに尋ねた。
「そうだな。直接機構軍に使節を派遣したいといった申し出は、今の所無いな。我々に対して、救援要請してはどうかと提案して来るだけだな。」
(という事は、「ヤマヤ国」の方は、まだそこまで深刻な状態では無いのか?地球系の文物の輸入は滞っているのだろうが、それが国の体制に影響して来るのには、それなりに時間がかかるのかも。)
「いずれにしても」
サムダージュがまとめに入るように話し出す。「もし『ユラギ国』が機構軍に救援依頼をしたら、機構軍には駆けつけてもらえるのだな。その事だけは、族長達に報告しておこう。あまり期待は出来ないが。」
「ええ。機構軍に頼る事は、あり得ません。」
主張を曲げないプキキニ。
「かわいそうねぇ。『イヌチヨーナ』の人達。今、こうしている間にも、宙賊の制圧下で苦しんでいるんでしょ。毎日人が殺されているかもしれないし、女の人達だって、酷い事されているかも・・」
「うう・・」
ニコルの言葉に呻くプキキニ。それを想像する事は、彼にも苦痛を伴うと見える。
「あなたの知り合いの誰かが、『イヌチヨーナ』にいたりとかはしないの?」
隙有りと見たか、ニコルはたたみ掛けた。
「う・・うう、それは」
「いるのね。そうでしょ。その人を救いたくはないの?少しこだわりを捨てて、機構軍に頼れば、その人も救い出せるかもしれないのよ!」
「う・・うう・・」
プキキニの眉間には、深い皺が刻まれ始めた。
「止めねぇかぁ、ニコル。」
バルベリーゴが割って入る。
「だって、もう少しで考えが変わりそうなのよ。」
「この男を言いくるめても、しようがねぇだろうがぁ。族長って連中が、決定権を握ってるんだからよぉ。」
「そっか・・」
「じゃあ、俺達はそろそろ行くとするぜぇ。ここにゃぁ、あんまり積み込める品物もねぇようだが、少しでも積めるもんは積んで、『テトリア国』に引き返すとするぜ。こっちは商売で来てるんでなぁ。」
そう言って立ち上がるバルベリーゴ。
「ああ。手間を取らせて済まなかったな。貴重な情報、感謝する。」
サムダージュも、ユーシン達が通りやすくなるように、立ち上がって席を空けた。
「あんた達」
プキキニが、突如口を開いた。「あんた達が、一緒に闘ってはくれないか?」
「はぁ?」
バルベリーゴは呆気にとられた顔。
「あんた達の船『ウォタリングキグナス』が参戦してくれるなら、族長がたを説得して、『ユラギ国』軍に『イヌチヨーナ』奪還作戦を決行させるように、説得は出来ると思うのだ。『コーリク国』軍の進出を恐れて、今は手をこまねいているが、『ウォタリングキグナス』ならば、『コーリク国』の戦闘艦とも互角に渡り合えそうだから、あんた達が参戦するとなれば、『ユラギ国』軍も動くと思う。」
「おいおい、俺達はただの商船だぜ。それに、たった一隻の船が参加した位で、どれ程の戦力増になるんだ。」
バルベリーゴの言葉にも、プキキニは食い下がって来た。
「いや、我が『ユラギ国』軍と『ウォタリングキグナス』が共闘すれば、何とか活路は開けるはずだ。貴船の武勇ならば聞き及んでいる。船首に装備されたプロトンレーザーなどは、銀河でも最大級の出力だとか。『コーリク国』の戦闘艦を、敵の射程圏外から撃破する事も可能だ。頼む、我等に力を貸してくれ。」
プキキニは頭を下げた。ニコルの言葉が、相当効いているのか。
「あのなぁ、俺達に頭を下げるくらいなら、何で機構軍に救援依頼出来ねえんだよ。」
キプチャクが呆れ顔で言う。「俺達も半分は機構軍みたいなもんなんだぜ。半軍商社っていうくらいだから。」
実際今は、秘密裏にではあるが、「キグナス」は機構軍の臨時戦闘艦を宣言しているのだ。
「機構軍は・・。それだけは・・・。私は、私達は、父からも祖父からも曾祖父からも、機構軍に煮え湯を飲まされ、極限の苦しみを味わわされた話を、何度も何度も繰り返し聞かされて育って来たのだ。この心に刻み込まれた機構軍への拒絶反応は、どうやっても拭えないものとなってしまっているのだ。だが、まだ一応商社を名乗っているあんた達なら、半軍とは言え、機構軍の正規兵では無いあんた達なら、我等の拒絶反応も、まだ抑えが利く範囲に留まるのだ。」
プキキニの必死の訴えに、心を動かされ無いわけでも無いユーシン達ではあったが、バルベリーゴは落ち着いた声色で言った。
「そうは言われてもなぁ。悪いが、『ユラギ国』軍ってのは、俺は、軍隊以前のオモチャみてぇなもんだと思ってるんだ。宙賊だけならいざ知らず、『コーリク国』軍の前じゃぁ使い物にはならんだろうぜぇ。まともに使えるのは、『キグナス』の『アマテラス』だけって事だ。『アマテラス』たった一本で、『コーリク国』軍の何十本もの砲塔の前に飛び出させるほど、ウチのガキ共の命は、軽くはねぇんだよ。」
プキキニは沈黙した。
「オモチャみたいなもんか・・。その言葉に、反論も出来ないのが実に情けない。が、事実だ。『アマテラス』の半分の出力のあるビーム砲ですら、我が軍には一つも無い。対戦闘艇用のレーザー銃に毛が生えた程度の砲を、戦闘艦に据え付けてるだけだ。」
そう言った後、プキキニを振り返り、沈黙を続けているのを見て取ったサムダージュは、改めてバルベリーゴに言った。
「引き留めて悪かったな。もう、行ってくれ。大事な商売があるんだろ。」
バルベリーゴは何も言わず、一度も振り返らず、その場を立ち去った。ユーシン達も後に続く。さっきニコルの言った、「こうしている間にも『イヌチヨーナ』の人々が殺されている」という言葉は、今度は彼らの胸に重くのしかかって来る事になった。
「俺達が参戦しても、『イヌチヨーナ』は救えねえって思ってるのか?オヤジ。」
サムダージュ達に声が聞こえない位置にまで達すると、キプチャクはそう問いかけた。
「そりゃぁ『コーリク国』がどのくらいの戦力を『イヌチヨーナ』に繰り出して来るかによるなぁ。連中は大型戦闘艦を、少なくとも3つか4つは持ってるだろうが、・・そうだな、ユーシンのガキの、馬鹿みてぇな射撃能力を考慮に入れても、大型艦は1艦とやり合うのが精一杯だろうな。2つ3つと来やがったら、勝ち目はねぇ。」
「途中まで参戦して、大型艦が2つ以上出てきたら、すぐ逃げるってのはダメか?シャラナさんの生まれ故郷の命運がかかってるんだ、少しくらいは何かしねえと・・」
なおも食い下がるキプチャク。
「そんなに上手く行くか、バカたれぇ。戦闘なんてぇもんはなぁ、一度おっぱじまったら、抜き差しならねぇ事になるもんなんだよ。『ユラギ国』軍だけが味方じゃぁ、クルーの命を預けるには危険が大きすぎるぜぇ。そうだろぉ?ユーシン。」
「・・そうだな。もし『ユラギ国』が滅んでしまったら、『UF』にも大損害だから、命を懸けてでも救援するってのは『UF』の従業員としても筋は通るけど、勝ち目が全く無いんじゃなあ・・。」
彼らは「キグナス」に戻り、積荷の選定と買い付けを始めたが、半日もかからない程、買うべき品はここには無かった。深刻な程に、物流は滞っている。族長達が安全な所にいるといっても、物資の不足が深刻になれば、やはり国の存続は厳しくなるだろう。いっその事、「ユラギ国」が早く滅んでしまった方が、そこに住む人達自身が機構軍に救援を依頼できるようになるかもしれない。
「イヌチヨーナ星系」周辺に、難民船を見つける為の無人偵察機をばら撒いておいて、そういった動きを見逃さないようにしておくという作戦を、ブルーハルトに提案してみようかと思ったユーシンだった。
「キグナス」がここに到着してから出立するまで、2日と要する事は無かった。
去る時も、4日間たっぷりと通常航行をして、十分に「ユラギ国」の“臨時港”と距離を取ってから「キグナス」はワープした。接近する時よりは減速の必要が無い分、所要時間は短かった。
虹色の光と滴型の光と共に、「キグナス」が最初のワープを終えた時に、通信探索席に着いていたラオが、厳しい声色で告げた。1回のワープでは、まだ「ユラギ国」の領域から出るには至らない。ここはまだ、「ユラギ国」内だ。
「巨大質量が『キグナス』近傍にワープアウトしようとしておる!複数の戦闘艦の可能性があるぞ。」
(「コーリク国」軍の艦隊に見つかったか!)
ユーシンはそれを予期した。皆が同様の事を覚悟した顔だ。これまでの経緯を考えても、「コーリク国」が「キグナス」に敵対的な行動に出て来る事は十分に考えられる。そして、国家の正規軍の戦闘艦艦隊に襲撃されれば、いくら重武装とはいえたった一隻の商船である「ウォタリングキグナス」など、ひとたまりも無い。勝ち目など、万に一つも無いかもしれない。だが、
「総員、戦闘配備!」
バルベリーゴは下令した。もし襲って来るのならば、何もしないでやられてやる事も無い。それに、圧倒的に優勢な敵程、油断して隙を生じるものだ。最後まであきらめる必要は無い。そしてその隙は、早速現れた。
「近傍に出没の戦闘艦は3艦。『キグナス』を包囲する形でワープアウトして来るぞ。」
「はぁ?何で3艦なんだ?」
ユーシンは首を傾げた。宇宙空間で包囲陣を敷くなら、少なくとも4つの戦力が必要だ。3つなら面でしか囲めない事になり、その面と直交する方向に、逃げ道が出来てしまう。立体的な包囲には、少なくとも4つの頂点を持つ三角錐を形成しなければならない。
そのために、例えば機構軍なども、あらゆる次元の編成で4や5という数字が出て来る。戦闘艇の最少単位は4隻だし、一小隊は5つの戦闘艦を有している。一中隊は5個小隊、一大体は4個中隊からなる。それもすべて、敵を包囲するのには4つ以上の方向から敵を囲まなければ、逃げ道が出来てしまう事に由来する。
なのに、今回の敵は3艦だ。その3つの戦闘艦が構成する面に直交する方角に逃げれば、まず逃げ切れる。この銀河で「キグナス」より速い船は、機構軍しか持っていない。
ちなみに、ワープで逃げる事は出来ない。今ワープアウトしたばかりの「キグナス」は、今から5時間かけてスペースコームの状態観測をしないと、ワープアウトポイントを特定できず、危険どころか絶望的なワープとなってしまう。
それに、ワープインメソッドを開始してからは、船は完全に無防備な状態になる。あらゆる索敵能力が使えなくなるし、自由な操艦も出来ない。外部装甲なども脆い状態になっている。数メートルくらいの金属片がコツンとぶつかっただけでも命とりだ。本来宇宙艇攻撃用で、分厚い装甲を持つ艦船には効果の無い散開弾での攻撃でも、十分に撃破可能となってしまう。敵を前に、そんな無防備な状態を曝す事は出来ない。よってワープを、ある程度の接近を許してしまった敵からの逃亡の手段には、使えないのだ。
「出没した艦隊の打ち分けは、中型戦闘艦1、小型戦闘艦2。」
「出没艦隊から通信だ!」
ラオの報告に続き、彼の隣の席でサヒーブが叫んだ。「停船命令を発して来ている。抵抗や逃亡を企てるのなら、攻撃し、撃破すると脅迫しやがった!どうする?オヤジ。」
航宙指揮室の全員の視線が、バルベリーゴに注がれた。
今回の投稿は、ここまでです。今週の投稿も、ここまでです。次回の投稿は、 '17/9/1 です。
「ユラギ国」の機構軍への拒絶反応は、ものすごく頑なですね。機構軍の一部幹部の裏切りで「ユラギ国」の将来を担うべき若者が辛酸をなめさせられたという話がずいぶん前に出ましたが、この「ヤマヤの虜囚」編ではあまり深く立ち入らないです。ま、軍事組織っていうのは、ちょっとした失態で大きな恨みを買いやすい存在だということです。武力集団ですから。「キグナス」に一緒に闘ってほしいなどと、ムシの良い申し入れは断りましたが、少し後ろ髪が引かれているユーシン達です。どうなるでしょうか?というわけで、
次回 第61話 捕らわれた白鳥 です。
「ユラギ国」の心配をする前に、「キグナス」の心配をしないといけない事態になっていました。複数の戦闘艦による停船命令です。そして「キグナス」は捕まってしまうようです。あっちもこっちも、なり行きを見守って頂きたいです。




