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第49話 宙賊の奇策

「オールトの海の中の、宙賊に占拠された宙域の奪還の為に出撃した機構軍部隊から、敵情に関する詳細な情報が届いたわ。」

 アニーが、ディスプレーに示されたデーターを目で追いながら報告した。ブリーフィングから2時間程が経過していた。

「宙賊がこの宙域に現れるタイミングが分かりそうな情報は、あるか?」

 バルベリーゴは問いかけた。

「敵はオールトの海からは、タキオントンネルで進発したようね。方向も、こちらに向かっているみたい。同宙域で発見されたタキオントンネルのターミナルを解析した結果だから、信頼できる情報だと思うわ。『キグナス』周辺宙域でタキオン粒子が観測されなかった事からすると、タキオン粒子の照射強度を相当に絞って、私達よりかなり手前で超光速移動を止めたのね。」

「敵の数は分かるか?」

「オールトの海に残されていた設備の様子から分析して、百数十隻くらいってことよ。」

「つまり、第一段階として、俺達のだいぶん手前の宙域に百数十隻の戦闘艇を超光速で送り出し、一旦そこに集結して、その後一斉にこちらに攻め込んで来るという事だなぁ。」

「途中まではタキオントンネルを使ったのだとすると、ここへの到着も早まるはずね。それでも、未だに敵の姿が観測されないって事は、敵は時間をかけて、相当大規模で組織的な攻撃の態勢を整えているのかも。先頭の敵は、こちらの索敵範囲外で背後にも回り込んで、球状に包囲するように位置取っているかもね。その上で、全部隊が一斉にに掛かって来る、なんてことも有り得そうね。」

 武装管制席に着いていたキムルが、そんな見解を示した。

「そんな攻撃されたら、防ぎ切れ無いんじゃないか?大丈夫なのか、『キグナス』は。」

と、キムルの隣でジャカールが不安そうな声を上げた。

「そう心配するなぁ!『キグナス』だけで闘う訳じゃぁねぇ。機構軍の戦闘艦だっているんだぁ。しかし、それにしても遅くねぇか?敵の進攻は。途中までタキオントンネルで来たのなら。もうとっくに敵の姿が見えても良いはずなんだがな。」

「機構軍戦闘艦『スターサウリー』のガリヴァルド艦長から通信。」

 アニーと共に、通信探索席に着いていたマンダンガスが報告した。「無人偵察機を幾つか、前方の、敵が集結していると見られる宙域に送り込んだそうだ。敵の規模や陣形を確認しておくつもりらしい。」

 大きく頷きながら、それを聞いたバルベリーゴ。

「そうだな。まずはそれをしっかり確認しねぇと、こっちも的確な対応は出来ねぇな。」

「無人偵察機なら、結果が出るのにも時間はかからないだろうね。」

 ユーシンは呟いた。人が乗っていない事に加え、小型で軽量な無人偵察機は、大きな加減速が可能だから、素早い偵察が可能なのだ。10分もしない内に、再び「スターサウリー」から連絡が入り、マンダンガスが伝える。

「前方宙域で発見された敵戦闘艇は、20隻ほどらしいぜ。それらが10隻程ずつで固まって、右上の方向に移動して行ったらしい。」

 上下というのは、地球連合勢力下の人々に共通で使用されている、銀河基準面とそこから導かれる銀河標準上下に準拠したものである。「キグナス」は今静止状態だから、乗組員に感覚的な上下は存在していない。

「何ぃっ!オールトの海には百数十隻の戦闘艇がいたはずなんだろう。それで今、前方宙域に20隻しかいねぇって事は、後のは全部、俺達の横か背後に回り込もうとしているって事かぁ。」

「取り囲んで攻撃しようとしているとしても、正面に1隻も残っておらんというのは、いびつな包囲の仕方じゃのう。」

と、ドーリーは首をかしげて言った。

「横か背後から仕掛けて来る敵の方が多いって事か。こちらの布陣の、一番弱そうなところに、一番大量の戦闘艇を注ぎ込んで来るのかもしれねぇなぁ。そうなると、『シルバーベース』か『スペースカヤック』が狙われる事になるか・・」

 バルベリーゴは考える顔で言った。

「『キグナス』を中心に、上下に機構軍戦闘艦、左右に本来民間商船の臨時戦闘艦というのが、俺達の布陣だから、右か左に一番多くの敵戦闘艇が回り込んでいるって言う事か?」

と、ユーシンが応じた。

「主力を俺達の背後に陣取らせておいて、戦況の推移を見ながら、わしらにとって一番不利なところへ、その主力をぶつけて来るという作戦も、考えられるぞぃ。」

と、ドーリー。

「オヤジ、『スターサウリー』からまた通信で、我々臨時艦隊から見た全ての方角に、無人偵察機を放ったそうだ。数十機の無人偵察機が、球状に臨時艦隊から広がって行ってるらしい。」

 また、マンダンガスが報告を入れた。

「そうだな。敵が包囲を掛けた上で攻撃して来るなら、どの方角にどれくらいの敵がいるかは、知っておかないとな。」

 納得顔のバルベリーゴだったが、その後にもたらされた報告には、困惑を露わにした。

「無人偵察機からのデーターでは、敵影無しとの結論になったらしい。」

「どう言う事だ?」

 報告したマンダンガスに、バルベリーゴが問い返す。「どの方向にも、敵がいねぇってことか?」

「今の所、敵影は補足されてないみたいだ。思いの他遠くにいるのかな?包囲しようとしてる事が絶対にばれないように、物凄く遠い距離から回り込んでいるとか。」

「無人偵察機に捕捉されないくらいに、遠くにいるって事かぁ?」

 マンダンガスの推測にも、バルベリーゴは納得いかないようだ。「包囲をばれないようにって言ったて、俺達に近づかなきゃあ攻撃は出来ねぇし、近づこうとすれば、偵察機に捕捉されて俺達に位置を知られる事になるんだ。包囲している事を知られねぇように、そんなに遠くから回り込むって言うのも、筋が通らねぇような・・」

「宙賊の事じゃから、そこまで深くは考えておらんのじゃないか?」

 ドーリーは言ったが、

「深く考えてないとするのなら、やっぱり、既に敵影を補足出来ているくらいの距離で、包囲して来るはずじゃないのかな。今の偵察機の位置からでも補足できないくらい遠くから回り込んで包囲しようとしている意味は、余計に分からない。」

と、マルコが応じた。

「不気味ね。」

と言ったのは、キムルだ。「何をしようとしているのかしら、宙賊は。」

「っていうか、どこに行ったんだろう?宙賊共は。」

 ジャカールも首を傾げた。

「俺達の周囲で、レーダーで捕捉可能な範囲にどんな天体があるか、データー出してくれないか。」

 ユーシンがアニーに依頼した。

「かなり遠く、右上後方に、ラグランジュ点に捕捉された岩塊群があるわね。大きいものでは最大長10km位の岩塊が、数百個密集して漂っているわ。」

 主星や惑星等の重力と遠心力が絶妙なバランスで釣り合っている場所があり、ラグランジュ点と呼ばれる。そこには天体が捕捉されるのだ。

「そこに敵戦闘艇がいたとしたら、偵察機で探知できるのか?」

 ユーシンは重ねて聞いた。

「それは無理ね。千m位の大きさでようやく検知可能なくらいの距離だから、10mも無い戦闘艇は発見出来ないわ。」

「敵はそこに集結して、身を隠そうとしているって言うのかぁ?ガキィ。」

と、バルベリーゴは問いかけたが、考えに沈んだままのユーシン。

「・・何の為に?」

 しばらくユーシンが答えずに沈黙していると、ドーリーが疑問を差し込んで来た。「そんな遠くにある岩陰に、一旦身を潜める事に意味があるとは思えんぞ。そこからこちらを目指して攻撃隊を仕向けたとしても、遠すぎて奇襲攻撃にも何にもならんのじゃないか?」

「そうね。敵が来る方角が変わるだけで、間に障害物があるわけでも無いから、敵の接近は探知できるし、こちらは十分な準備をして迎え撃てるわ。敵がまとまってかかって来てくれるなら、包囲攻撃を仕掛けられるよりむしろ、楽なくらいね。」

 キムルもそう言った。

「その岩塊群から、直接、中空浮遊都市『ソリアノ』に向けて、戦闘艇を送り出したりしたら・・」

「何だとぉ!」

 ユーシンの発言に、衝撃を受けたようなバルベリーゴの反応だ。「俺達を素通りして、いきなり『ソリアノ』を撃つってか!それは考えなかったが、あり得る作戦だぁ。そんな事になっちまったら、最悪だぞ。数百の戦闘艇に『ソリアノ』への接近を許したとなると、民間人の被害も免れねぇぜぇっ!民間人を人質に取って、とんでもない要求を突き付けて来る事も有り得る。おいマンダンガス!『スターサウリー』のガリヴァルド少佐にこの事を伝えろ。今すぐにだ!」

 マンダンガスがコンソールを操作し始めてから1分もしない内に、航宙指揮室正面のモニターにガリヴァルドの姿が映し出された。

「バルベリーゴ元少将、そちらの見解を伺いました。後方に見える岩塊群を利用した、我が臨時艦隊を素通りしての『ソリアノ』の直接攻撃の可能性、我等も恥ずかしながら、全く予期しておりませんでした。が、これを実施されれば、大変深刻な事態になります。当方でも検証しましたが、事前に件の岩塊群に資材や設備を運び込んでおいたと仮定すれば、十分実施可能な作戦であるとの結論に達しました。」

「そうかい。」

 ガリヴァルドの発言に頷いたバルベリーゴは言った。「敵がこの作戦を実施しようとしているなら、何が何でも阻止しなきゃならねぇぜ。」

「もちろんです。我々が来もしない敵を待っている間に、『ソリアノ』が襲撃されて民間人に犠牲が出るなどという事は、絶対にあってはなりません。どんな犠牲を払っても阻止しなければ。つきましては、そちらにお邪魔しているメーメルク少尉と話をしたいのですが。」

 バルベリーゴは後ろを振り返り、目で合図を送った。そこにある医療要員用シートで、ノノの隣の席に体を固定していた少尉は、ベルトを外して壁を蹴り、バルベリーゴの傍に漂い出て来た。

「メーメルクです、少佐。」

「うむ。少尉、聞いての通りだ。君の部隊の36隻全艇で、件の岩塊群に急行してもらう。現地の状況は全く不明であり、大変危険の大きい任務だが、もし敵がここを中継拠点として『ソリアノ』を目指すつもりなら、何としてもその作戦発動前に、この中継拠点を潰さなければならない。」

 メーメルクに向けられるガリヴァルドの眼差しを、ユーシンは見つめた。命を危機に曝す事になるような命令を、部下に告げる者の苦悩や勇気を、そこに感じた。

「かしこまりました、少佐。如何なる犠牲を払おうとも、『ソリアノ』には1隻の戦闘艇も向かわせません。命と引き換えにしても、阻止して見せます。」

 そう言ったメーメルクは、バルベリーゴに向き直って言葉を続けた。

「お聞きの通りです。今回は私自身も出撃いたします。では、失礼します。」

 そしてメーメルクは、航宙指揮室を出て行った。

「しかし」

 ドーリーが考える顔で話し出す。「もし仮に、宙賊共がわしらを素通りして行くというのが、間違いだったり欺瞞(ぎまん)だったりしたら、事だぞい。機構軍戦闘艇が36隻も出払ってしまったところに、一斉攻撃を仕掛けて来たりしたら、今度は一転、わしらこそが危険に陥る事になるでのう。」

「あっはっは。確かに、戦力の下がったところに敵襲を受けるんだから、不利にはちげぇねぇが。まぁ、何とかなるさ。」

「私も、それは何とか出来ると考えています。」

 ガリヴァルドもモニターの中で、胸を張って言った。「たとえ、メーメルクの部隊がいない所に、百隻以上で包囲攻撃を仕掛けて来たとしても、宙賊の戦闘艇ごときが相手なら、十分に立ち向かえると確信しております。」

(確かに、ただの宙賊相手ならそうだろう。)

 ユーシンは心の中で呟いた。(だが、今回の敵はただの宙賊じゃない。前の戦闘でファランクス達を追い詰めたような、腕利きのパイロットが多く含まれた敵だとしたら、36隻もの戦闘艇を欠いた状態で、本当に対処し切れるかどうか・・。もし俺の予測が外れていたら、俺が味方を窮地に陥れる事になるのかもしれない。)

 「キグナス」に積載されていた16隻と、「シルバーベース」「スペースカヤック」に積載レていた10隻ずつの、合計36隻のメーメルク指揮下の機構軍戦闘艇が、臨時艦隊後方にある岩塊群目指して、虚空を突進して行った。

「36隻で、100隻以上の敵を相手にする事になるのか?」

 ジャカールが不安気に声を上げたが、

「そんな事にはならないはずよ。」

と、キムルがなだめるように返した。「私達に見つからない様に岩塊群に回り込もうとするのなら、敵は相当たくさんの噴射剤を使って移動しなければいけないから、武装は取り外し、その分噴射用タンクを増設しているはず。岩塊群に着いたら、そこに前もって運び込んであった武装を、改めて装着するつもりなのでしょう。つまり、岩塊群に到着するまでは、敵戦闘艇は戦力にならないって事。」

 それを聞いても、まだジャカールは不安そうだ。

「じゃあ、もし敵が、メーメルク少尉の部隊よりも先に岩塊軍に到着し、武装の装着を終えてたら、少尉の部隊は絶体絶命になるっていう事か。」

「それもねぇはずだぜぇ。」

 今度はバルベリーゴが応じた。「タンクを増設したって、この距離を回り込んで移動するんだ。大きな加速は出来ねえ。直線で動くんじゃ無しに、方向転換しながらの移動なんだ。方向を変えるのに噴射剤が食われて、スピードは全然出せねぇはずなんだ。一方でメーメルクの部隊は一直線に、しかも俺達の艦隊から、電磁カタパルトやビーム照射での後押しを受けて向かってるんだ。敵がタキオントンネルから出て直ぐに岩塊群を目指していたとしても、メーメルク達の方が断然早く、そこにたどり着くはずだぁ。」

「確かに百隻の敵と闘う事にはならないけど、敵があの岩塊軍にどんな装備を送り込んだかは分からないからな。やはり危険な任務だよ。」

と、ユーシンはぼそりと言った。

「そうじゃのぉ。」

 ドーリーはそれに頷いた。「こういう作戦をやるからには、敵は事前に、わしらに気付かれんように岩塊群に、色々な物を送り込んどるはずじゃが、前に使った誘導ミサイルみたいなもんも繰り出してきているかも知れんからのぉ。それらの対処に手間取っておる間に、百隻の戦闘艇に武装の装着を許してしまったりしたら、最悪の場合、全滅も有り得るのぉ。」

「ちょっとドーリー!不吉なことを言わないの。」

 キムルが窘めるように言った。

「わしはただ、可能性を述べただけじゃわい。」

「まぁ、送り出しちまった以上は、俺たちゃぁもう、祈るしかねぇなぁ。」

 モニターに映る、メーメルク達の部隊を示す光点を見つめながら、バルベリーゴは呟いた。自身に言い聞かせているかのように。

 メーメルク達の岩塊群到着までの約5時間は、ユーシン達にとっては、お腹の中に鉛玉でも入れて過ごしているかのような気分だった。知り合って十日ほどの者達だが、「キグナス」の中で共に過ごし、戦闘も一緒に潜り抜けて来た仲間なのだ。その身を案じ無い事など出来ない。極めて危険な任務に向かう彼らに、何か手助けをしてあげたい気持ちもあるのだが、今の彼等にやれることなど、何も無い。バルベリーゴの言った通り、ただ祈るだけだ。

 一方で、臨時艦隊周辺に球状に拡散している無人偵察機には、全く敵影は捕えられなかった。相当遠方にまで足を延ばした偵察機もいくつかいたのだが、敵はこの宙域に皆無なのだ。ユーシンの読んだ通り、敵はほぼ全戦力を後方の岩塊経由での、「ソリアノ」攻撃に振り向けたようだ。

「奴等はソリアノに行ったとして、一体全体何をするつもりなのかのぉ?」

 ドーリーがふと思いついたように、そう言った。「掠奪を働くつもりなのかのう。しかし、奴等はオールトの海に築いた橋頭保を放棄して侵攻しているのじゃぞ。もはや帰り道は無いと言って良い状態じゃ。略奪などしても仕方なかろう。バリーがさっき言ったように、『ソリアノ』の民間人を人質に取って、何か要求するつもりかのぉ。」

「シャラナさんの身柄を要求するんじゃないか?」

 ユーシンはぼそりと言った。

「何じゃとぉ!? これだけ大掛かりな侵攻が、女1人を連れ去る為だけに行われたという事か?」

 ユーシンは、考える眼差しのまま返事をしない。

「つまり、今回の宙賊進攻の背後にいる勢力が、『コーリク国』の背後にいる勢力と同一だという考えだな、ガキィ。『コーリク国』の『キークト星団』征服が成功するか否かの鍵になっているのが、シャラナのねぇさんだからなぁ。ねぇさんに、『コーリク国』の野望阻止の行動を起こさせないという目的なら、今回の宙賊侵攻も説明が付くってもんだ。」

「シャラナさんに向けられた暗殺も、宙賊の侵攻が無かったら有り得なかった。宙賊の侵攻で、『ソリアノ』の中に機構軍兵が出入りするようになったことで、都市の中で銃を所持していても摘発されない状況が発生したんだ。」

「つまり、シャラナのねぇさんを狙った刺客の侵入と、宙賊の侵攻にも繋がりがあるって事か。刺客が侵入しやすい状況を作るために、宙賊の侵攻が開始されたのか。」

 ユーシンの言葉に、バルベリーゴが応じた。そしてふと思いついたように、

「逆に、宙賊が退路を断ってまで遮二無二『ソリアノ』を目指しているのはよぉ、刺客の仕事が失敗に終わったからかぁ?刺客の代わりに、宙賊がねぇさんの命を狙おうとしているのか、ガキィ?」

「どうかな。刺客の失敗を補う為と考えるには、刺客が失敗してから宙賊が進攻を始めるまでが、早すぎるような。いや、俺達が宙賊の侵攻の連絡を受けたのが、刺客の失敗が確定した直後だったことを考えると、宙賊の侵攻の方が、刺客の失敗よりは先になるはずだ。でも、刺客の失敗を見越して、侵攻の準備をしていたとも考えられるし、そこのところはよく分からないな。」

「いずれにせよ、シャラナ嬢の件が広範囲な領域に影響を与えているんじゃな。それだけ、嬢さんが大物って事になるのかのぉ。」

 少し冗談めかしたドーリーの発言に、ユーシンは深刻な表情で返した。

「というより、「コーリク国」やこの宙賊達の背後にいる勢力というのが、機構軍を揺るがせるほどの勢力を持ちつつあるって事なのじゃないかな。奴等の野望っていうのは、『キークト星団』だけに留まるものではないのかも。いずれは、地球連合の勢力範囲にも食い込んで来るつもりかもしれない。」

「まさか・・そんな。いくら何でも、それは無いんじゃない。」

 言葉とは裏腹に、憂慮の表情でそう言うのはキムルだ。「連合勢力に食い込むとなったら、機構軍とだって互角に渡り合わなきゃならなくなるのよ。今の銀河に、そんな戦力は無いはずよ。」

「今は、無いよ。でも、これからは、どうかな。銀河中の宙賊や、連合勢力に反発する勢力を糾合すれば・・・」

 ユーシンの発言に、キムルは絶句したように沈黙した。

「恐ろしい想像だが、絶対にねぇとも言えねぇなぁ。」

 バルベリーゴがそうこぼしたところで、「スターサウリー」から通信が入った。マンダンガスが報告を入れる。

「メーメルクの部隊が、岩塊群の制圧に成功したそうだ。」

今回の投稿はここまでです。次回の投稿は明日、'17/7/22 です。

宙賊の進撃からの防衛戦の第2ラウンドが始まろうとしているのですが、なかなか戦闘は開始されません。激しくドンパチを繰り広げるだけが戦争ではない、ということで、今回は敵が意表を突く作戦に打って出たのを、ユーシンが看破するといった内容にしました。ドンパチを期待した人には拍子抜けかもしれませんが、こんな闘いもあるのだということでご理解賜りたいです。ちょっとややこしい感じになったかもしれませんが、ドンパチを上手にこなすだけではないユーシンのポテンシャルを描く為には、避けては通れませんでした。というわけで、

次回 第50話 「1-1-1」の死闘 です。

少し前にブルーハルト大佐が説明していましたが、今回の防衛線には「1-1-1」も任務が与えられていますし、この作戦の前にも彼らは重要な任務をこなしています。ユーシン達の戦いもまだ終わっていない状態で、「1-1-1」の事も気にして頂かなければいけない状況です。頭がこんがらがるかもしれませんが、よろしくお願いします。

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